小栗山 雄司さん [グラフィックデザイナー]

「デザインを考えることは、仕事も趣味もプロボノも、変わらない」――そう話す小栗山さんは、本の装丁や雑誌の仕事を長年手がけてきたグラフィックデザイナーです。今回手がけたのは、NPO法人ファミリーハウスの会員向けニュースレター『ファミリーハウス通信』のリデザイン。会社組織ではない「NPO」という世界や、支援先NPOのファミリーハウスが取り組む、難病の子どもと家族の支援という分野で、どのようなデザインに挑戦していったのか伺いました。

ヒアリングを通じて、未知の世界に入っていく

支援先NPOのファミリーハウスが向き合っている、難病の子どもと家族の支援という社会課題については、そういった支援活動があるということ自体、プロジェクトに参加して初めて知りました。活動を具体的にイメージできたのは、現場のスタッフやボランティアの方にヒアリングをさせていただいたときです。ヒアリングは、すごく面白い経験でした。話を聞いて特に意外だったのは、ボランティアの方々が、それぞれ異なった考え方で活動に参加している、ということですね。

また、ヒアリングはニュースレターのあり方を考えることにも繋がりました。例えば、ファミリーハウスが運営している個々の「ハウス」は、横の繋がりがあまりなく、他のハウスのボランティアの方が何をしているのかをお互いに詳しいところまでは知らなかったようです。そこで、それまで「活動報告書」のような存在だったニュースレターからもう一歩踏み込んで、「ボランティアの方はこう考えている」とか、「それぞれのハウスでこんなことをやっている」など、スタッフやボランティアの方同士で情報を共有するツールになればいいよね、と考えました。

普段の仕事とは、いろいろな条件が違った

初めてNPOの編集会議に参加した時は、普段の仕事での「編集会議」のイメージとは真逆の、ゆったりとした雰囲気に驚きました。ただそれは、ファミリーハウス特有の「温かさ」の表れとも思うようになりました。他にも普段の仕事と異なるのは、依頼のされ方が漠としていることや、タイムスケジュールが大まかであること、同業界のプロジェクトメンバー内では通じる共通言語が、NPOの方には通じないこと――

それから、もう一つの大きな違いは、「自分で完成させて終わり」ではなく、納品後、NPOの方々自身で変えていけるようなものにしなくてはならない点ですね。今回のプロジェクトは、サービスグラントのプロジェクトの中でも異色で、年に何回か繰り返し発生する、ニュースレターの発行作業をNPO自身で行えるような、技術の引き継ぎが必須でした。そのために、ニュースレターの構成をシンプルにフォーマット化するなどの工夫をしましたし、NPOのスタッフ向けにデザインや編集の方法を教える部分にも時間を使いました。

仕事も、趣味も、プロボノも――

私は、本の装丁の仕事を17年くらいやっているんですが、飽きないんですよね。なぜかというと、同じ原稿というものはなくて、形はいくらでもあるし、いつも答えが違うからなんです。いつも頭の中でグニュグニュと、「どんなことが可能なのか」「今までやっていないこんなことをやってみようか」など、デザインのことを考えています。デザインのことを考えているときが、一番楽しいです。

とはいえ、「デザインを考える」ということについては、仕事も趣味もプロボノも、やっていることは変わりません。以前、趣味で町内会のポスターを作ったんですが、それも、まったく変わらないんですね。相手が欲しいものが必ずあって、それに対して自分ができる範囲のものを出すだけですから。ただそのときに、相手が欲しいものを100とすると、105でも110でもいいから、ちょっとでも足して返すという心がけ、サービス精神は、大事にしています。

【参加プロジェクト】

NPO法人ファミリーハウス
(ニュースレター制作/2009.10-2010.7)
印刷物サービスグラント
役割: グラフィックデザイナー

 

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