「ふるさとプロボノ」をきっかけに、地域の方と友達+αの関係に。
鈴木 敦夫さん(投資及びコンサルティング事業運営)
プロボノでの役割:プロジェクトマネジャー
参加プロジェクト:有限会社真砂(2020年)
兵庫県姫路市出身。海運会社でのアジア駐在経験や社内ベンチャー立ち上げを経て、現在、アジアの人たち向けのインバウンド観光事業を準備中。ふるさとプロボノを知ったときは「普通の旅行では体験できないことが、体験できるのでは」という期待で参加した鈴木さんに、都心から離れた地域活動をプロボノで応援する「ふるさとプロボノ」の経験について伺いました。
ボランティアだからこそできる経験が魅力
―どんなプロジェクトに参加しましたか?
島根県益田市真砂地区にある地域商社「有限会社真砂」のプロボノプロジェクトに参加しました。真砂地区の人口は300名ほどの集落で、有限会社真砂は設立して20年くらいです。20数年前に婦人会の方々がもっと地域を栄えさせるためにどんなことができるだろうか、と商材を色々と試して行き着いた先が豆腐でした。現在は豆腐をメイン商材として地域の経済循環活動のために活動をされています。
有限会社真砂の看板商品は、おばあちゃんの豆腐。おばあちゃんの元気の源はお子さんの笑顔。お子さんと触れ合うことが元気を与え、豆腐作りに生きているということで、村全体で有機的につながっている特徴ある地域商社です。
代表の岩井さんは、被り物をして「豆腐マン」としてイベントに出るような面白い方です。
元々は東京でロックバンドをやられたりしていたそうですが、とにかくユニークで、真砂の豆腐もインディーズのように売り出していきたいと仰っていました。
この真砂の課題として、地域の魅力を自分たちでもわかっているものの、内輪同士の認識に留まっていて、外に向けて語ることがなかなか難しいという点がありました。観光客がたくさん来るわけではない土地や人など、地域の魅力を外から改めて見てもらって言語化して欲しい、というお話でした。
そこで、「真砂のとうふ」のネット販売に同梱をして、真砂のことを知ってもらい訪問してもらえる広報ツールの作成をゴールに2ヶ月のプロジェクトに取り組みました。
完成したチラシの冒頭には「おばあちゃんの味」をキャッチフレーズとして持ってきました。なんか懐かしい、こんな豆腐はなかなか食べられないなと思ってもらうのと同時に、この豆腐の背景にあるストーリーをもう少し言語化できないかなと考えました。豆腐を作るのに不可欠な日晩山(ひぐらしやま)のお水と、おばあちゃんと小さい子供たちとの交流、そこから生まれる笑顔に溢れていることが美味しさの源になっていることを表現しました。
―参加のきっかけは
知ったきっかけは妻でした。ボランティア活動に積極的な人で、「こういうのがあるよ」と言われたことで知りました。自分一人だったら、プロボノを知らずに過ごしていたと思うので、教えてくれる人が近くにいたので、ありがたかったです。
「現地に行けます」「交通費の補助もある」と言うことが最初の引っ掛かりではありましたが、「ふるさとプロボノ」の説明を聞いて、単なる観光ではないところに惹きつけられました。
旅行に行って美味しいものを食べて綺麗な景色を見るのは楽しいですし、帰ってきて楽しい思い出は残るものの、それ以上でもそれ以下でもない。ボランティアで関わることで、旅行では体験できないことが体験できるのではないかという期待や、ボランティアと言うことで色々な方が参加されているところが魅力に感じました。
当時、会社に関連する付き合いばかりで、他業界や他地域の方々との交流機会がなかったことや、それまで海外にいて日本に戻ってきたこともあって、ネットワークを広げたいという思いはありました。
スキルについてはこれ、と言う自信を持って言えるものは無かったですが、少しでも何か役に立てたらそれに越したことはないと思っていて、自分にとっては良い所づくしのプロジェクトだと思って参加しました。
プロボノチームが「地域を知らない初心者」となって、初めて聞けた話もありました。
―大変だったこと、工夫したことは?
チームメンバー同士も「初めまして」からプロジェクトが始まる中で、どうやったら打ち解けられるかなぁと言うことはすごくポイントでした。コロナもあって、メンバー同士が初めて顔を合わしたのも現地で、関係をいかに近くできるかが大事でした。
打ち解け方が上手くいくと、それだけでお互いの良さが積み重なっていき、いい成果物ができる素地になっていくと思います。
また真砂の地域の方は「東京から人が来て、何を聞かれるのだろう?」と、どこか警戒心や緊張を感じておられました。インタビューをしていても「本音で話を聞けているのかなぁ、これはなかなか難しいな」と思いました。
滞在期間の3日間の中で、どうやったらもっと色々話してくれるのだろうか?プロボノって言うと専門家集団と思われているのではないか、と思ったので、「あくまでもプロボノチームは、真砂のことを知らない初心者、地域のことを学びたいと思っているので教えてください。何も分からないのでで・・・」という入り方で、まっさらな状態で話を聞いていくと、色々な言葉や思いが引き出されて話してもらえました。
どうやって関係性を近づけて本音をたくさん言ってもらえるかが重要なんだなと思います。対話からの共感は大事ですね。
―特に印象に残っていることは
プロジェクトが始まる頃は、真砂にたくさんの人が来るように真砂の豆腐を宣伝すればいいのではないか、と勝手に思っていました。
でも、真砂は観光客が来るような場所ではなく、300名ほどの集落です。岩井さんが「インディーズ」という言葉で表現されていたように、たくさんの人に知ってもらうことがゴールではなく、知っている人が知っている所。豆腐を通じて地域のサステナビリティを支えられる存在であれば、それが一番なんだと仰っていたのがすごく印象に残っています。
その地域ごとで、地域の人たちが「これが一番いい」というものがあると思うので、それを尊重していく大切さについて、メンバー一人ひとりが実感する機会になったと思います。
プロジェクトが終わった後も、団体の皆さんとは、友達プラスアルファのような関係が続いている感じで、無理のないお付き合いができることも、参加して良かったことの一つです。
※この記事は、2022年5月28日に開催された「コミュニティ・ミッションの新たな可能性~プロボノの先進事例を学ぼう~(主催:ひょうご関係人口案内所さま)」のトークセッションを編集したものです。
▼プロボノでのプロジェクト参加へご関心をお持ちになった方は、こちらのページも併せてご覧ください。
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