本業も自分も、プロボノを通して社会から磨かれる経験を
野村 笑美さん(工務店勤務 渉外等担当)
プロボノでの役割:青森プロボノチャレンジ リーダー
参加プロジェクト:NPO法人ハッピーエンジェル(2021年)
野村 一平さん(教育関連会社勤務 コンサルティング等担当)
プロボノでの役割:青森プロボノチャレンジ リーダー
参加プロジェクト:青森市ふたご・みつごの会(2021年)
2021年の「青森プロボノチャレンジ」にて、プロボノに初挑戦したお二人。それぞれ「NPO法人ハッピーエンジェル」、「青森市ふたご・みつごの会」チームのリーダーとして、青森県内と首都圏のプロボノメンバーと共に取り組んだプロジェクトの経験について伺いました。
※「青森プロボノチャレンジ」は、主に青森県在住のプロボノワーカーが県内のNPO・地域団体を支援するプロボノプロジェクトです。
まずは自分が体験を、赴任間もない地域を知りたい
――普段のお仕事と、プロボノに参加したきっかけは?
野村 笑美さん:
建設業を主とする企業で、渉外を担当しています。各事業を広報する仕事柄、普段から様々なところにアンテナを張るようにしていました。青森県庁からの案内で「青森プロボノチャレンジ」は数年前から知っていました。
野村 一平さん:
教育関連企業で、現場の講師と一緒にコンサルティング業務をメインに従事しています。大阪、中四国など国内、海外ではブラジルといった各地の勤務を経て、2021年の7月に青森に赴任してきたタイミングで「青森プロボノチャレンジ」を知りました。
――参加の決め手になったことは何かありましたか?
野村 笑美さん:
会社にこんな活動があると提案したところ「まずは自分が経験してみては」と背中を押されて参加しました。まず自分がやります、ということで。
野村 一平さん:
初めて東北に来る機会でしたので、仕事以外に地域との繋がりを作りたいなと思った部分と、自分の仕事がどんなふうに社会貢献に繋がっていくのかを体感したくて参加しました。
――支援先と、参加したプロジェクトについてご紹介をお願いします
野村 笑美さん:
支援先は八戸市にあるNPO法人ハッピーエンジェルさん。ご本人の事情で働くことが難しい方のために、就労継続支援B型事業所「りんごっこ」を運営している団体です。理事の方々は「通所者の方達が働き続けるために、もっと良い施設に」と会うたびに伝えて下さるような、本当に熱い想いをお持ちでした。その想いや活動をアピールできるようホームページをリニューアルするプロジェクトでした。
野村 一平さん:
青森市ふたご・みつごの会さんを支援しました。子ども1人でも子育てはすごく大変なことですが、双子、三つ子と、さらに大変な状況の中で、親御さん同士が悩みを共有したり、相談しあったりする場を作っていく活動をしています。立ち上げから間もない時期で、よりスムーズな運営をするために、いかにサポートできるかという部分の体制作り、マニュアル作りに携わらせていただきました。
メンバーの多彩なバックグラウンドを踏まえたコミュニケーション&チームづくり
――異業種のメンバーとのプロジェクト進行、魅力や難しさはどんなことだと感じますか?
野村 笑美さん:
同じチームのメンバーは転職してすぐの方、子育て中の方、退職後のセカンドステージを歩んでいる方、など働き方からして多彩でした。
コロナ禍もあり、ミーティングのためのオンラインツールをどうするかという点から話し合いました。また、各自時間の都合も違うのでミーティングは1時間以内で済ませる、後の時間を有効に使えるよう土曜の午前にセッティングする、LINEで内容を事前共有する、など工夫していました。
メンバーの得意不得意も様々で、ヒアリングが得意な方はヒアリング、素材を集めるのが得意な方は素材集め、など、時には各分担をお互いに行ったり来たりもしつつ、得意なことで役割分担をするようにしていました。
野村 一平さん:
海外赴任をした時に、現地で働く日本人の方との異業種交流をしたことがありました。自分自身の視野が非常に広がった経験があり、そういった経験もプロボノで積めるのではと考えていましたが、その願いがさらに叶ったと思っています。
私がいたチームにも、教員の方、公務員の方、金融業界や製薬業界など様々な業界・職種の方がいました。自分自身は完全フレックス、リモート勤務が可能ですが、現場を抱えている方は参加できないタイミングがあるなど、個々人の色々な状況を実感する、知るきっかけにもなりました。
今まで一度も会ったことのないメンバーとオンラインでプロジェクトを進めていく点では、背景を知らない上での進行は難しそうだと当初は思いました。しかし、最初にコミュニケーションを取る会を設けたことによって、お互いがどうしてプロボノに参加しているのか、メンバーの背景を知ることができたので、それ以降はすごくプロジェクトを円滑に進めることができたと思います。
直接見えた、感じ取ったことの解決策を考える
――仕事の経験やスキルでプロボノに生かせていると思うものはありますか?
野村 笑美さん:
会社自体が異業種の集まりという面もあり、全社を横断する委員会制度があったり、そこで調整をしたりという経験は生かせたと思います。短い時間の中で動けるように、会議前に情報共有する点等は同じでした。また、できないところは誰かできる方にお願いする点も同じ。特にプロボノはボランティアですから、無理をしないということだけは一番念頭に置きました。
野村 一平さん:
普段は教育現場の先生や保護者・生徒へのコミュニケーションがメインで、プロボノチームのメンバーとの協働は新しい経験になりました。自分から機会を求めることで、今回のような経験が得られたと思います。
――逆に、プロボノの経験が仕事に生きたことはありますか?
野村 笑美さん:
就労支援というテーマに対し、関わる団体の方や当事者の方から直接話を聞けたことは大きかったです。会社でも一部関わりがあるのですが、本人は頑張ってるんだけれどやっぱり働けない事情であるとか、仕事をお願いする側はどういったところを工夫したら良いのかとか。
支援する側の団体の皆さんとしても、当事者の皆さんが実は社会に甘えてるんじゃないかとか思われているところを何とか払拭したい、だから自分たちで仕事を作って、支援がなくてもひとりで働いていけるように、生きていけるようにしたいっていう話をされていたのは、すごく印象に残っています。支援の意味がとても理解できましたし、じゃあどういうふうにしたらいいかとか、あまり求めちゃいけないところとか、どこで平等、バランスを取るかっていうところは何かちょっと感じ取れました。
野村 一平さん:
プロジェクトを通じて、ゴールと現状のギャップをどう交換できるか、できる範囲の中でこのギャップをどう生かしていくのかということに向かうことが多く、勉強になりました。具体的に言うと、ふたご・みつごの会の皆さんの集まりを市民センターなどで開催するには、紙で場所の申し込みをしないといけないんですね。子ども連れで手続きがままならず、なかなかこの申し込み自体ができない。例えば「インターネットで済ませれば良いのでは」と思ってしまうところもあるんですけど、システム的には現状ない。だったら今あるシステムの中で、どう改善できるかをマニュアル化することによって、ふたご・みつごの会の皆さんにとってラクな形、簡単になる方法がないかをすごく考えました。ここが特に仕事に活きる例だと思います。
自分が飛び込んでみたからこそ、次は誰かの背中をちょっとでも押したい
――プロボノに参加することを、会社にはあらかじめ伝えていましたか?
野村 笑美さん:
会社に背中を押されて参加しましたので、社内会議でも「こんな活動をしました」「団体さんが活動している就労支援の背景にはこんな想いがあるんです」と伝えて、共感してもらえるようにしていました。
社内会議の議事録にも残りますし、すぐには効果につながらなくても、うちの会社でこういうことをやってるんだよとか、何か思い出されて生きてくるんじゃないかなと思っています。
野村 一平さん:
一緒に働いている事務所のメンバーには、こういった活動するんだよっていうことは伝えていました。
――プロボノ活動が、ご自身の勤め先にもたらすメリットについてどのように感じていますか?
野村 笑美さん:
私自身もそうなんですが、定年に近づくにつれて、近い未来、再雇用はあったとしても、会社に勤めながら社会との関わりを持って、新たに会社だけじゃないところで自分の持ち場とか立場を段々に体験したいという気持ちがあります。仕事としか社会と関われなくて、仕事がなくなってしまうと社会との関わりもなくなってしまうとなるとちょっと大変じゃないかなと。
やったことがないのにチャレンジするってすごく敷居が高くて、人によっては抵抗感もあるかもしれませんが、自分の成長にもつながるので、もっと広めていきたいなと思います。
野村 一平さん:
団体の皆さんに最初にいろいろインタビューさせていただいて、改めて双子・三つ子がいる中での子育ての大変さというものを実感しました。コロナ禍でリモートが進んだことによって、もしかしたら自分の職場である教育現場に距離感を感じてしまってる自分がいたのかもしれません。保護者の方の悩みだったり、つまずきだったり、こうしていったらもっといいんじゃないかっていうことを肌で実感できたことは、生徒や保護者のためにどういうことが必要なのか、自分のマインドを改めて固める機会になりました。
今回パネリストの機会をいただいたことも、会社に報告する予定です。会社としても社会課題解決への貢献を理念として持っているので、自分の今回の経験をフィードバックできたらと。自ら飛び込んで体感したものを伝えていくことで、つながるものもあるのかなと思っています。
仕事を別の視点から見る、人が人で磨かれる
――改めて、プロボノの魅力はどう感じられていますか?
野村 笑美さん:
今回、就労支援に関わる団体の支援ということで、実際にそこに通ってる方とお話をしたんです。なぜ通うようになったのかをうかがった時、元々は普通に働いていたのになぜか働けなくなってしまって、ちょっと休んでしまって、病院に行って検査をしたら障害があったのがわかった、という方がいました。私自身は仕事で採用関係も携わりますが、例えば今後社員の働き方制度を考えるにしても、当事者の方と直接お話する経験ができたのは非常に大きかったです。
また、今回はホームページのリニューアルということで、誰に伝えたいか、団体の皆さんが普段の業務内でいかに無理なく更新を続けるか、何回も協議しました。誰に対して何をするかという問いかけを、普段の業務とは違った視点で見られる。でも、普段の業務とやっていることは同じ。仕事を別の視点で見ることができました。
野村 一平さん:
プロボノの学びは、やっぱりいろんな人との出会いです。人との出会いがプロボノ活動によって仕組み化されているというふうに思います。
社会貢献ってすごく大きな言葉のように見えるんですけど、実際やってみると身近なもので、ちょっとした部分のそれぞれの工夫をまとめたものなんだなと。「Think Globally, Act Locally」という言葉がありますが、それを肌で感じました。
一つの企業、一人の人では出来ないことが多い中、やはり人と人との出会い、成長がポイントになってくるのかなと思っています。「磨く」という言葉がすごく自分の中に残っています。人との交流とか切磋琢磨、そういった意味で貴重な経験ができましたし、より広がって行ったらいいなと思っています。
▼プロボノでのプロジェクト参加へご関心をお持ちになった方は、こちらのページも併せてご覧ください。
▼プロボノ参加者向け説明会を随時行っています。以下より日程をご確認ください。
※この記事は、2022年2月1日に開催された「本業に活きる社会貢献活動セミナー~SDGs時代の新たな企業価値の創出~(主催:青森県環境生活部 県民生活文化課)」のオンライントークセッションを編集したものです。