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村瀬 匡範さん(アカウントディレクター)

未知の世界、魅力的な人との出会い、それがプロボノの面白さ

 

村瀬 匡範さん

プロボノでの役割:アカウントディレクター

参加プロジェクト:日常生活支援ネットワーク(2011)、児童虐待防止協会(2015年7月〜2016年12月)

 


 

ITサービス会社でシステムエンジニアとして働きながら、2つのプロボノプロジェクトを経験した村瀬 匡範さん。そんな村瀬さんに、プロボノを始めたきっかけやプロボノを通して得た知識やスキルについて、またこれからプロボノに参加しようとしている人に向けたメッセージなどを伺いました。

自分のできることで社会の役に立ちたい。

 

——プロボノを始めたきっかけは?

学生時代にボランティア活動へ関わっていました。ちょうど「NPO」とか「NGO」という言葉がよく取り上げられていた時代で、企業とは違って「非営利」で活動している団体があるというところに関心を持っていました。仕事では企業向けのシステム開発を担当していたのですが、働き始めて10年程経った頃、なんとなくやりがいを感じにくくなっていました。仕事以外に、自分にできることでなにか社会に役立つことができたらと思い、「NPO」や「ボランティア」というキーワードでネット検索しているなかで、サービスグラントのプロボノという仕組みが面白そうだなと思い、説明会に参加したのがきっかけです。

 

——過去に2つのプロジェクトに参加されたということですが、どんなプロジェクトでしたか?

2012年にプロボノワーカーとしての登録を行い、2013年に1つ目のプロジェクト、2015年に2つ目のプロジェクトに参加しました。実はそれぞれのプロジェクトの間は、ワンデイプロボノにチャレンジしたり、裏ボノ団(※1)にも参加したりしていて、ずっとサービスグラントとは関わっています。

 

はじめてのプロジェクトは、障がい者の日常生活を支援するためにヘルパー派遣等をしているNPO法人のウェブサイト制作でした。その団体は様々な取り組みを行っている団体でしたが、その活動をもっと知ってもらうことと、より障がい者支援の活動を広げるためにそこでヘルパーとして働きたいと思ってくれる人を増やすことがウェブサイトの目的でした。そのため、実際に働く人のストーリーを盛り込み、より具体的に関わり方や働き方を理解してもらうようなウェブサイトにしました。

 

2つ目のプロジェクトは、児童虐待の防止に取り組むNPO法人のウェブサイト制作でした。基本的には、児童虐待防止のための電話相談事業と啓発活動を行っている団体だったので、サポートが必要な人に知ってもらって、相談してみようと思えるように敷居を下げることと、同じような活動をしている関係者に広く有益な情報を発信することがウェブサイトの目的でした。扱う内容がかなりデリケートな問題を含んでいるので、いつも以上にサイトのコンテンツには気をつかいましたし、サイトが信頼を得られるような構成になっているかにこだわる必要がありました。

 

知らない世界に気づき、視野が広がる経験

 

——プロジェクトに参加して良かったのはどんなところですか?

 

自分の知らない世界がこんなにもあるのかということに気づかされることですね。
支援先となるNPOの方や活動を通じて出会う方のお話は、自分の普段の仕事や生活の中ではなかなか聞くことのできない話が多く、とても興味深いですし、すごく視野が広がった感じがします。

 

1つ目の障がい者を支援する団体のプロジェクトでは、「どのような障がいがあっても、自分の街・自分の家で暮らす」ことを大切にしているとお聞きしました。
障がい者に便利な施設で障がい者だけが集まって生活するのではなく、障がいがあっても他の人と同じように自宅で生活することを当たり前のことだと考えるということです。そのために、ヘルパー(この団体ではサポーターと呼びますが)が、障がいを持つ人の家に行き、その人のできること・できないことに合わせて柔軟な生活支援をされていました。具体的な内容やエピソードを聞くと、自分の仕事では考えられないような悩みや苦労があり、逆にやりがいがある仕事なんだなと感じました。

 

一方、2つ目の児童虐待の防止に取り組む団体は、事務所の住所を公開していないんです。相談用の電話番号は公開しているけれど、事務所の電話番号も公開していないんです。相談する方のことも、相談を受けるスタッフのことも、お互い名前も連絡先も明かさないということが基本的なルールになっているとお聞きしました。そうすることで必ず匿名で相談できるということを担保し、相談しやすい環境を作っているということでした。行政にも相談窓口はありますが、虐待をしている親の立場では、行政に相談すると指導されるという印象から相談できず、匿名だからこそ相談できるという場合もあるようでした。

 

Webサイトのコンテンツで事例を載せる際にもその事例から個人が特定されないように注意していましたし、活動に関わるスタッフに関しても、写真や内容から決してその人がどういう人かわからないようにしてほしいと言われました。1つ目のプロジェクトの時と全く逆で、びっくりしました。
知っているつもりのことはありましたが、実はまだまだ知らない世界があった。そんな世界に出会えるというのが面白みだと思います。

 

——逆に、難しかったことはどんなことですか?

プロジェクトマネジャーという役割上、知らない人たちが集まったチームでいかにうまく進めていくかが難しかったですね。ウェブサイトのプロジェクトだと6〜7人くらいで1つのチームになるのですが、ミーティングの日程調整なんかは簡単なようで案外難しかったです。平日は仕事で中々時間が読めないし、土日に調整しようかと思っていても誰か予定が合わないとできなくて。そうすると打合せが1週間単位で再調整となり延びてしまうことがあったりして、あっという間に1週間が消えてしまったと感じました。
打合せは対面で話し合うだけでなく、メールなども使いながらやっていますが、お互いの意見がうまく合わないときや、大きな提案の前は、メールだけではうまく議論ができず、やっぱり会って話したいと思うことも多かったです。特に初めてのプロジェクトの時はそんなところで悩んだ記憶があります。

 

2つ目のプロジェクト、実は1年位かかっているんですが、そのプロジェクトでは1人がプロジェクトを離脱、2人が東京に転勤するということがありました。そういうこともあるとは思っていたのですが、実際そうなると結構焦りました。でも、そのときはチームのメンバーそれぞれが役割の枠を超えて抜けたパートを補完し合ってくれたので、プロジェクトが延長したことは苦労したことのひとつにはなりましたが、納得のいく成果物が出来上がったように思います。あと、なかなか対面での会議はできなかったので、毎週日曜午前9時〜10時にSkypeでの打合せをするようになりました。定例的な打合せをすることでリズムができたと思います。
チームで集まる機会はプロジェクトの進み具合やフェーズによって異なりますが、本当は週1回位できたらありがたいと思います。でも実際は2週間に1回くらいで、みんなの予定を考えるとそれくらいがちょうどよい感じだったと思います。

 

興味があるなら、まずやってみる。

 

——スキル登録するとき、悩みませんでしたか? 自分の本業とぴったり合うポジションがないという声もよく聞くのですか村瀬さんはどうでしたか?

 

自分も悩みました。本業でもプロジェクトマネジャーをやっているので、ぴったり当てはまるポジションとして「プロジェクトマネジャー」があるんですが、それでも、本当に自分ができるのかな、普段の仕事と違う内容が務まるのかなと思ったりして、登録するのには勇気がいりました。
でも実際にプロジェクトが始まったら、基本の役割はありますが、役割ごとの隙間みたいなものがあるので、結局、それぞれがいま自分のできることをやって、前に進むようにしていました。この役割だからこれしかしないという考え方もあるとは思うけど、役割にこだわり過ぎず、集まっているメンバーでできるものをやるということもあると思います。自発的にできることをしようと思ってくれる人がチームにいるとすごく助かります。だから、そういう気持ちがあれば、本業がポジションに当てはまるかはそれほど気にしなくても大丈夫だと思います。
でもデザインのような専門的なものは、やっぱりその人しかできないということがありますけれど。

 

——一定期間参加すると思うと、仕事や家族のことでちゃんと最後まで続けられるのか不安に思う人もいるようなのですが、どうですか?

 

できるだけプロジェクトの前半の段階でなるべく会う機会を作っておいて、お互いの状況がわかるようになっていると、途中で一時的に参加が難しい時があっても、そういった状況も共有してうまく進められると思いました。
あと、プロジェクトに参加する前にはいろんな不安があり、悩まれると思いますが、プロボノに興味を持った人なら、悩むよりまずは思いきってやってみる! に尽きると思います。

 

——支援先の方と、その後どんな風に関係になりましたか?

1つ目の団体の窓口になった方は、プロボノワーカーとして登録されています。サービスグラントのイベントで、参加者として顔を合わすことがありました。あと、データが壊れたというSOSをもらって、当時のデータを集めてお渡ししたこともありました。これは、おまけですけどね。
2つ目の団体はウェブサイトのデザインを、子どもに配るカードやポスター等にも使ってくれています。先日、現物を受け取ったのですが、やはり、すごくうれしかったです。
プロジェクトは一応成果物が出来上がれば終りを迎えますが、形を変えてつながっています。

これからプロボノする人に向けたメッセ―ジをお願いします。
プロボノをする時には、どうしてもメール中心のコミュニケ―ションになりますが、なるべく直接会って話すこと、そしてポジションにこだわらず積極的に活動することが大切だと思います。それと、進行ガイドをよく読むとヒントが書かれているのでぜひ活用してほしいですね。

サービスグラントは、何かやってみよう!って思っている人たちが集まる場だと思うんですよね。そういう人たちはとても魅力的でおもしろい人が多いですし、自分自身、いろんな人からエネルギーをもらっているなと感じます。

 

※1 裏ボノ団
サービスグラント関西を裏から支えてくれている有志メンバー。

 

※このインタビューは、イベント「プロボノWednesdayは”経験者徹底インタビュー企画”」(2017年6月21日開催)の内容をもとにお届けしました。