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波岡さん・田畑さん・森下さん

50代からそれぞれの可能性を。プロボノは新たなチャレンジのきっかけに

 

 

波岡 一郎さん(製造業)、田畑 喜啓さん(コンサルティング業)、森下 晃治さん(製造業)

プロボノでの役割:マーケッター
参加プロジェクト:プロボノ価値共創プログラム(2017年)

 


 

社会人歴30年超のベテランの浪岡さん、田畑さん、森下さんは、企業の人材育成プログラムを通じてプロボノに参加しました。支援をしたのは、定年後のシニアがNPOのバックオフィスで活躍できるための活動を行う「NPO法人ジービーパートナーズ」。50代から自分の可能性を探り、新たなことにチャレンジするきっかけを持つことができたという皆さんのエピソードについて、お伺いしました。

NPO? プロボノ? 0からはじめた人材育成プログラム

 

波岡さん、田畑さん、森下さんは、サービスグラントとJOIN(人財オープンイノベーションネットワーク)が主催をしている 「プロボノ価値共創プログラム」を通じてプロボノプロジェクトに参加をしました。当プログラムは、社会課題に対峙する団体の組織運営上の課題解決を通じ、社会感度や課題解決力の向上、セカンドキャリアの検討などを行うことを目的とした企業の人材育成プログラムで、プロボノの仕組みを活用しています。複数の企業から参加した社員が4〜5人程度で異業種チームを作り、ひとつの支援先に対して複数チームが支援を行います。各チームは支援先のヒアリング等を通じて課題の真因を探り、支援先のニーズに沿った具体的な成果物を作り上げ、それをNPOに提案します。1ヶ月の期間に3〜4日の集合プログラムと、チーム活動を実施します。

 

−人事部からプログラム参加の声がかかり、研修初日を迎えた時の印象について教えてください。

 

波岡さん:人事部から声をかけられた時は、具体的な研修内容について、どんなことをやるのか全然わかりませんでした。プロボノという言葉を知らなかったので、インターネットで調べ、アメリカで弁護士がNPO等を支援するプロボノ活動が義務付けられているということを知りました。日本でこうしたシステムがうまく作動するのかなと疑心暗鬼になりながらも、やってみる価値はあるなと思い、まずはやってみようという気持ちで参加しました。

 

田畑さん:研修初日は、NPOとは何か、どういった人達が携わっているのかという内容のレクチャーを受けました。レクチャーを受けて、参加してよかったのかなと不安になりました

 

森下さん:研修が始まって数時間は、いったいどんなことをするのかわからない状態で、内容を理解するのに時間がかかりました。

 

 

「NPOの庶務・経理等の人材不足を解消したい」
「シニアの活躍の場を広げたい」という支援先の熱意に共感

 

右も左もわからない状態でプログラムに飛び込んだ3名でしたが、いざ支援先と交流を深めていくと、支援先の活動に対する熱意に共感し、本気で課題解決に取り組もうという姿勢に。支援先であるジービーパートナーズは、シニアがNPOのバックオフィスで活躍するために、NPOとシニアのマッチングを行う中間支援NPOです。活躍の場を求めるシニアがジービーパートナーズに辿り着くためには、どのように活動内容を広報したらよいかという課題に対して、異業種チームは動画制作を提案しました。支援先のヒアリングから、動画制作に至るまでのプロセスについてお話を伺いました。

 

−支援先の活動や課題について把握し、支援内容を決定するまでのプロセスについて、ヒアリングの時の様子なども踏まえて詳しく教えて下さい。

 

波岡さん:NPOは社会課題に一生懸命取り組んでいるが、庶務・経理などのバックオフィスの人材を集めるのが大変。一方、サラリーマンを経験していたシニア達にはそういった分野が得意な人がたくさんいる。こうした人達をNPOにマッチングさせるのがジービーパートナーズの活動内容です。リタイア後のシニアが自分のスキルを活用することで自分の価値を認めてもらえて、NPOからも感謝される、シニアとNPOがWIN-WINの関係になれるいい仕組みを提供していると思います。

 

田畑さん:支援先の代表の方やスタッフ、実際にNPOのバックオフィスで活動している方など、色々な方の話を聞きました。その中で、NPOの共通課題として庶務・経理等の支援を求めていること、その課題を解決する上でシニアの力が大きいということ、この二点について確信を持つことができました。

 

森下さん:支援先の課題は、スキルを持った人材がジービーパートナーズになかなかたどり着かないということでした。どういう手段で彼らにアプローチをしたらよいかという課題に対して、これまで取り組んだことのない、プロモーション動画の制作を提案しました。ヒアリングでは、支援先の事務所に出向き2〜3時間ほど話を聞きました。活動への熱い想いや苦労話を語ってくださったので、本気で課題解決に取り組もうという気持ちになりました。

 

−動画制作を行うことになり、シナリオ作りの際の苦労や支援先の反応はどうでしたか。

 

波岡さん:動画制作は、費用も安価だったので挑戦して“しまった”のですが、動画を撮ることが大事なのではなくて、何をアピールするか、どんなメッセージを伝えるかが難しいと感じました。子ども食堂の運営などは活動内容がわかりやすいですが、ジービーパートナーズは中間支援NPOなので活動内容が伝わりにくい。文字で理解してもらうことは難しいと感じ、動画でいかに表現して理解してもらうかを考えてシナリオを考えました。

 

森下さん:波岡さんがたたき台を作ってくれました。苦労されたと思いますが、チームのメンバーにも、シニア世代にもわかりやすい内容でした。

 

波岡さん:私自身、来年定年退職を迎えますが、第2の人生について全く考えてもいませんでした。そうした人が多くいると思います。『シニアはまだいろいろなことができる』『活用できる場があるということをアピールするにはどうしたらいいか』『社会の役に立ちながら充実した人生を過ごせるということはどういうことか』ということを、数値等を用いて表現したいと思い、シナリオを考えました。

 

田畑さん:プログラム最終日のプレゼン発表の際には、デモ動画を準備し、支援先に見ていただきました。

 

森下さん:チームメンバーの中で男性陣がシニア役、女性の方がインタビュアー役でデモ動画を作りました。動画を見ていただいている最中に、代表の方がだんだん笑顔になっていくのが見えて、うまくいっている手ごたえを感じました。

 

波岡さん:動画の力はすごいということをおっしゃってくれました。もっとこういうものを作りたいと触発されました。

 

異業種チームでの活発な議論は、前向きな取り組みに

 

−他の企業の方とチームを組んで課題に取り組むという経験を振り返ってどう感じましたか。

 

田畑さん:チームに入った瞬間から周囲が受けれてくれるし、皆が前向きな発言ばかりで効率的にプログラムが進んだことが驚きでした。

 

波岡さん:本当は会社でも前向きに発言するべきだけれど、部下から上がってきた情報を受け入れてばかりになって、日本の社会全体が受け身になっている気がします。年齢を重ねても自分の意見をぶつけて議論をした方がいいのではないかと感じました。

 

森下さん:このチームは昨日今日会った仲間と思えないほど活発な議論ができたと思います。支援先にもいわれましたが、シニア層は若い世代と比較して周囲とすぐに打ち解けやすいのだと思います。シニアがこれまで培った経験やスキルがこうした活動の取り組みやすさに繋がっているのではないでしょうか。

 

−チームで取り組んでいて、この人すごいな、こういうところを学びたいなと感じたことはありますか。

 

森下さん:波岡さんはチームの枠を超えて素晴らしいリーダーシップを発揮してくれました。他の方も積極的に参加したり、田畑さんがミーティングの会場を提供してくれたりと、皆で協力し合えたことが嬉しかったです。

 

田畑さん:波岡さんはすごい。誰かが半歩先を行かないといけない中、シナリオのたたき台を出してくれました。たたき台を叩くと、『ありがとう』といってくれるんです(笑)他の人も、どんどん自分の意見を出していました。森下さんはアメリカ出張もある中、詳細にシナリオにコメントを出してくれていました。

 

波岡さん:チームワークがよく、とてもやりやすかったです。会社の中では、話し合いをしていると怒りだす人がいますが、そういったことはありませんでした。3カ月前に出会ったとは思えない、30年来一緒に働いているように話しやすく、壁がないメンバーでした。

 

−プログラムを通じて何かご自身に変化はありましたか。

 

田畑さん:物事への取り組み方が前向きになりました。新しいことに少しでも関心があればやってみようという挑戦するような考え方になりました。小さな挑戦でも数多く行動するようになったと思います。会社でも、『定年前より忙しいんじゃない?』とか『幸せそうだね』といわれるようになりました。自分自身も楽しいし、周囲にもいい影響があるかなと思います。

 

森下さん:漠然としか知らなかったNPOについて知ることができた上に、異業種で仕事をする楽しさも知ることができました。利益追求ではない、こうした活動も自分の将来のためには素晴らしいことだと感じました。

 

波岡さん:NPOと関わったことで社会を直接見られるという経験ができて、わくわくしました。実際に問題に取り組んでいる人の話を聞くことで新聞やテレビじゃ捉えきれない社会の歪みを知ることができました。動画作家から、次はジャーナリストにもチャレンジしてみようかな(笑)。

 

 

動画制作や書籍の出版にもチャレンジ!
可能性を広げたプロボノ経験

 

−プログラム終了後に皆さんがチャレンジしていることについても教えて下さい。

 

波岡さん:プログラムは無事終わりましたが、その後支援先にあいさつに伺った際に『デモ動画よかったね』という話になり、今も引き続き動画制作に取り組んでいます。シナリオも詳細に作り上げ、動画を撮影するところまできています。

 

田畑さん:定年を記念してアマゾンの電子書籍で『定年を駆け抜けろ〜40歳からの人生戦略〜』という書籍を出版しました。

 

森下さん:新たな活動は特にないですが、もともと周囲からライフ・ワークバランスがよいといわれていました。プライベートではアウトドアが好きでよく活動していましたが、プログラム参加をきっかけにプロボノのように頭を使う活動も大事だなと思い始めました。

 

−最後に、新しいことにチャレンジしようとしている同世代の方々に一言お願いします。

 

田畑さん:プロボノは、自分の可能性を発見する場だと思います。50代は仕事をしている世代だが、仕事をしているうちに可能性を探りいろんなことにチャレンジしてほしいです。

 

森下さん:私はNPOのこともよく知らず、プロボノなんてもっと知らなかった訳ですが、企業の研修を通じて知ることができました。研修をもっと活用したり、サービスグラントのプロジェクトに参加することでプロボノって何だろうというところから始めてもいいと思います。

 

波岡さん:新しい取り組みに飛び込むことも大事だと思いますが、そこで一度物事を俯瞰的にみるためには教育を受けることも必要だと思います。また、プログラム参加を通じて、正解にたどり着くことより支援先に感謝されることの方が大事だということも知りました。そのためにも寛容の精神、他者への配慮をしながらも主体的に動くことが必要だと思います。

 

※この記事は、「渋谷のラジオ」で放送されている「渋谷のプロボノ部」(毎週火曜日8:00-8:55放送)の第72回放送分(2017年8月22日)のインタビュー内容をもとに編集しています。渋谷のラジオにご出演頂いた際の音源はコチラです。