会社と社外の良い循環。新たなプロボノ活動の立ち上げのエネルギーに
山田 孝雄さん(電機メーカー プロジェクトマネジャー)
プロボノでの役割:アカウントディレクター
参加プロジェクト:クラブ123荻窪(2020年)、アフタースクール(2018年)、芸術家と子どもたち(2017年)ほか多数
電機メーカーで、ITサービスのプロジェクトマネジャーを担当しながら、約10年プロボノを継続している山田孝雄さんは、プロボノを通じて得た仲間とのつながりを活かし、小学生向けのプログラミング教室『雲のプログラミング教室』を起こしました。 今回のインタビューは、サービスグラント1000プロジェクト達成特別企画の一環として、津田塾大学 総合政策学科 伊藤(由)ゼミの学生たちが実施。プロボノ参加によって引き起こされる、キャリアや社会課題への関心の変化ついて、学生たちの視点から伺いました。
「社会に役に立つことをしたい」、プロボノが初めてのボランティア
プロボノを始めたきっかけは、長女が生まれたことでした。今までは自分の人生は自分ひとりのもののように感じていたんですが、子どもが生まれたことで、人生の時間軸と“自分の残りの人生”をはじめて意識しました。同時に「社会に持続的な何かを残さないといけない」と直感的に思い、社会に役立ちたいと考えるようになりました。
正直なところ、それまでボランティアに興味をもったことがなかったのですが、インターネットを検索していたときに、偶然サービスグラントのコラムを読み、自分が求めているのはまさにこれだなと思い、登録しました。
当時は、まだ「プロボノ」という言葉があまり知られておらず、2人目の子どもも生まれ、子育てで急激に忙しくなった時期もありました。正直、「社会貢献より家族貢献でしょ?」と言われたこともありましたが、プロボノの活動は刺激的で面白く、継続しました。家族にも理解を得るために、説明会に家族を連れて行ったところ、とてもスムーズに理解してもらえたのは良かったです。
本業とプロボノ、両方があってこそ磨かれてきたスキル
初参加から10年が経ち、これまでに10以上のプロジェクトに参加していますが、直近では、荻窪の地域のスポーツクラブのプロジェクトでアカウントディレクターとして参加しました。
サービスグラントではプロジェクトがスタートする前に、アカウントディレクターがスコープの設定を行います。団体のニーズや現状にあった支援を明確に設定するため、まず団体の方に話を伺いながら様々な質問や提案をさせて頂くのですが、そのときの私からの提案に、「目からうろこ落ちました」と団体代表の方が言ってくださったことが、とても嬉しく、印象に残っています。
スコープ設定では、団体の方がやりたい事にそのまま寄り添った提案をすることもできますが、対等に向かい合い、活動内容や運営の状況、その団体が持つ魅力を理解したうえで、何かアイデアが浮かんだ場合は、尻込みせず提案をしてみることも時には必要です。明確なビジョンに対してカウンタープランを提示するのは勇気のいることでもありましたが、これまでの経験を活かせた場面でした。
クライアントにとって長期的な視点で最適化されたプランを考え、納得してもらえるように説明するスキルは、本業とプロボノ両方での経験がリンクして高められてきたのだと思います。
そして、これにより、プロジェクト開始前から信頼関係を築くことができ、プロジェクト完了までスムーズにコミュニケーションがとれました。実際に、提案した内容も、既に具現化されているようです。
今の仕事の面白さをプロボノで改めて実感
私はアカウントディレクターになる前に幾度かプロジェクトマネジャーの経験もしましたが、プロボノに参加したことで、自分の仕事上のスキルはそのまま社会の役に立てられるということに手ごたえを感じられました。職場での仕事も面白いものですが、慣れてしまうと色々なことが当たり前のようになってしまい、大きな仕事であるほどに手ごたえは感じにくくもなってきます。転職という方向に考える人もいらっしゃると思いますが、私の場合は、プロボノというかたちで社外に出ることで、自分の経験が役立つものであること、そして、今の仕事も面白いということを再確認できる、よい循環ができています。
力を発揮できる“心地よい環境”をつくるための工夫
プロボノでは、初めて会う、様々な立場・職種の人と協働して成果を出します。普段の仕事のなかでは知らず知らずに染みついている「共通認識」や「阿吽の呼吸」のようなものは通用しません。仕事の進め方のペースや専門用語、それぞれの本業の状態なども全く違うので、まずはお互いを知り、理解する必要があります。
以前、クリエイティブ関係の仕事をしているメンバーに「ロケに入るので、3週間は家に帰れないんです」と言われてとても驚きました。自分の職場環境からは想像できないような働き方や考え方に、いい意味でのカルチャーショックを受けることもあります。
また、メンバーも団体もそれぞれプロボノに使える時間は限られます。一方で、プロジェクトの成果は、自分が心地いいと思えるような環境で仕事を出来るかによって決まってきます。
実際のところ、チームメンバーから途中で離脱してしまう人が出ることも稀にあります。限られた時間で密なコミュニケーションを可能にし、プロジェクトを効率化するには、互いの心地よい距離感などを理解しあう必要があり、その点ではやはりリアルで会えた方がスムーズでした。
今、オンラインでプロジェクトを進めることが多くなった分、手探りではありますが、チームビルディングのための時間を別で設けるという工夫もしています。あえて雑談を増やし、その人のことを理解し、それを伝える機会を増やすといったことも意識しています。プロボノでは、コミュニケーション方法をいかに整備するは本業以上に重要で、大変ですが、チームメンバーとの出会いも含めたコミュニケーションの時間こそが、プロボノの楽しいところだとも思っています。
プロボノの経験を生かして、ボランティア活動を新たに立ち上げ
サービスグラントには、失敗せずプロジェクトを進められるよう、体系化されたプロセスがあります。プロボノで身に着けたこの考え方は、さまざまなことに活かせそうだなと思い、プロボノで知り合った仲間などとともに、小学生向けのプログラミング教室を立ち上げました。自分の関心から、プロボノでも教育分野に関わる団体の支援をずっと行ってきました。子育てや教育における投資は、レバレッジが効くものであり、社会に対するインパクトも大きいと感じています。
プログラミング教室の活動としては、イベントの場に出向いたり、最近ではオンラインで指導したりしています。やはり立ち上げから軌道に乗るには数年かかりましたが、今ではボランティアも20人程まで増えました。
行動も大切ですが、まずは周囲に「やりたい」と言い続けるこことも重要ですね。
インタビュー後記(津田塾大学 学生のみなさんより)
- 本業以外に何かをしたいという気持ちを抱えている人が多くいるというお話が驚きでした。実際に、プロボノの活動を通じて新たに活動を始める人がいるということからも、プロボノは社会貢献活動の入り口のような存在であると感じました。
- プロボノでの活動の中で、同じマインドを持つ人々と繋がりを持てたり、自分や他の仕事の価値に気づくきっかけになったとおっしゃっていたことから、私も将来、仕事だけではなく他のコミュニティに参加したり、視野を広く持って色々なことに挑戦してみたいと思うきっかけになりました。
- 大企業でのお仕事にもかかわらずそれに満足せず、貪欲に自分の目指す目標に向けて向上し続ける意思や姿勢がまさに「プロ」のプロボノだと感じました。自分自身に能力の限界を定めていないからこそこうして精力的に外部での活動を進めているのだと、私自身も見習いたいと考えました。
- 印象に残っているのが、自分が直接やったことが社会に反映されていると感じにくい時もあるというお話しで、看板を背負っているという言葉に納得し、今後の自分の働き方や就活について考える際に役立てたいと思いました。
▼プロボノでのプロジェクト参加へご関心をお持ちになった方は、こちらのページも併せてご覧ください。
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※掲載内容は2021年3月時点の情報です。