前向きな気持ちで飛び込んで、大きく成長を実感できた。
大西 裕子さん(ウェブディレクター、アプリ開発エンジニア)
プロボノでの役割:プロジェクトマネジャー
参加プロジェクト:ノーベル(2011年3月~2012年6月)
サービスグラントが関西で事業展開を始めた2011年。真っ先に志願して、チーム入りに名乗りをあげた大西裕子さん。プロジェクトにチームメンバーとして関わったのを皮切りに、1DAYプロボノ、サービスグラント関西をサポートする裏ボノ団(*1) のメンバーとして、また定例イベントのプロボノWednesday(*2)にも頻繁に顔を出している。それほどまでに、熱く活動するきっかけは何だったのか。
ソーシャルビジネスの本質に触れて、“ボランティア”意識も変化
―プロボノワーカーとして活動するようになったきっかけは?
もともと社会貢献には関心があって、「プロボノ」を知るずっと以前にボランティア活動にたずさわった経験があったんです。でも、その団体ではボランティア=自分の時間をとことん犠牲にして、ときにはしんどい思いをしても頑張らねばならない、自己犠牲の精神を崇高なものとする組織の考え方や閉塞感に違和感が沸いて、気持ちがさめてしまいました。
ボランティアでも楽しいことがしたい、自分自身もワクワクしたい。自分の得意なことを活かしながら、前向きな気持ちで取り組める活動はないの? そう思っていたときに偶然、サービスグラントの取り組みを紹介した新聞記事を目にして。自分の求めていたものはこれだ! と思い、さっそくプロボノワーカーの登録手続きをしました。残念ながら当時はまだ関西に事務局がなくて、「関西でプロジェクトをやる予定はないですか?」とアピールして東京で登録したんです。そしたら直後に関西でのプロジェクトが始動するから、とプロジェクトメンバー入りを要請されて。まさか本当にすぐ動き始めると思ってなかったものの、志願したからには断るワケにいかず(笑)。
―支援先となった、関西で病児保育サービスを提供している「NPO法人ノーベル」のことはご存じでしたか?
当時はちょっとした社会起業のブームのような状況で、ソーシャルビジネスの起業家が脚光を浴びていました。私自身、社会貢献に関心はあるもののサラリーマンとして何ら社会に貢献するすべもなく、かと言って仕事にものすごいやりがいがあるわけでもなく。もっと自分が燃えるように取り組める仕事をしたい、との思いがあったんです。ちょうどそのとき、病児保育に取り組んでらっしゃるNPO法人フローレンスの代表理事・駒崎弘樹さんの著書を読んで「ビビビッ!」ときまして(笑)。こいうところで働きたい!と思っていたところに 、同じ病児保育に取り組んでいるNPO法人、それも駒崎さんのところでスタッフを務められていた高亜希さんが代表でと、私としてはもう奇跡! というか、衝撃的と言うか、運命的なご縁だと思いました(笑)。
ノーベルさんはビジネスモデルもしっかりとしていて、私たちプロボノが担う「ホームページのリニューアル」というプロジェクトに対しても明確な目的を持っていらした。それは事業計画に関わる、非常に重要なミッションでした。だから求められるもの、クオリティも高かったです。プロジェクトのマネジャーとしては、ある意味、重圧もありました。でも遠慮なく要求をぶつけられることはむしろ、進捗管理をする私の立場からすればやりやすかったです、つねにモチベーションが上がって(笑)。
ただプロジェクトチームについては、会社のように決められた枠でのつながりではなかったので、チームをひとつにすることは簡単ではなかったです。プロジェクトマネジャーとしては、何よりプロジェクトを完遂させなければいけないと思う。一方でチームメンバーのみんなには楽しんで取り組んで欲しいという思いがあって。正直、苦労したことも少なくなかったですが、楽しかったことも多かったです。違う職場の、違う業界の人と一緒に仕事できる機会なんて、そうないですから。プロジェクト完了後もつきあいが続いたり、中には一緒に仕事をするようになったメンバーもいます。そういう意味では、良い仲間を得られたといえますね。
社会課題を他人事として置かず、積極的に行動するように。
―ほかにもプロジェクトに関わったことで得たことはありますか?
いつかどこかで関わりたいと思っていたソーシャルビジネスと関われたのは、やはりプロボノワーカーとしてプロジェクトに参画したから。社会を良くするためのビジネスをしっかりと展開して、人を幸せにする事業に取り組んでらっしゃる。同じビジネスを展開するという立場では、企業に属して結果を出すのとはちょっと違う。
いろんな意味で逆風にさらされながらも強い信念でどんどん前に進んで結果を出す。そんな社会起業家の理念に触れられて、NPOを起こして事業を展開する人のパワーの大きさを目の当たりにして、私自身も成長を実感できました。何よりNPOのみなさんと直接関わったことで、社会課題が他人ごとではなくなりました。自分ごとではないにしても、他人ごととして横に置いておいて良いのだろうか? と考えるようになりました。
―そこで得た気づきから活動の幅も広がったんですよね。
今はプロボノワーカーとしてではなく、私の専門分野であるIT技術を活かして社会課題を解決する「シビックテック」に参加しています。これもプロボノと同じく、自分が前向きな気持ちで社会課題に関わって行動していけることがある、との思いで取り組みはじめたことです。
―シビックテックではアプリのコンテストにもエントリーされたんですよね。
はい、グランプリをいただいて、いろんな方からも評価していただいて。私としてはプロボノの延長線上にある活動だったんですが、世界が広がりました。
―では最後に、プロボノに興味のある人へメッセージをお願いします。
特殊なスキルや経験がなくてもプロボノには参加できると思います。でもプロジェクトに関わるからには覚悟が必要だと思います。これは私自身にもいえることですが、経験が山盛りでないから自信もない。でも覚悟だけでとりあえず飛び込んでみて、それを受け入れてくれるのがプロボノ。自分から飛び込んだことで、私自身の世界が広がり、仲間や気づきを得られて大きく成長ができたのは確かですから。
振り返ればプロジェクトを完遂できたのは、決して私の技量だけでなかったと思っています。進行中は事務局のフォローも心強かったです。今度は自分がどこかプロジェクトチームをサポートする立場になりたいですね。
【参考】
*1 裏ボノ団:サービスグラント関西を裏から支えてくれている有志メンバー。
*2 プロボノWednesday:サービスグラント関西で毎月第三水曜日に開催しているイベントで、プロボノワーカーを中心に社会課題に関心がある社会人が集う場。
※掲載内容は2016年1月19日取材時点のものです。本記事は、関西の有志のプロボノワーカーからなる「プロボノワーカーの声プロジェクト」メンバーによって、インタビューから記事作成までご協力いただきました。