自分のスキルをいつもと違う世界で
深田真実さん(グラフィックデザイナー)
食品パッケージメーカーのインハウスデザイナーとして勤務
プロボノでの役割:グラフィックデザイナー
参加プロジェクト:社会福祉法人北摂杉の子会(2015年)、
インハウスデザイナー(企業内勤務デザイナー)として勤めながら、3つのプロジェクトを経験した深田さん。
これまでに仕事以外の時間に、ご自身が関心のある動物保護のボランティアやスポーツ競技のコミュニティなどにも参加しておられましたが、プロボノでは支援先団体の活動を通じて、これまで深く知る機会のなかった障がい者やこども、高齢者の課題に触れることができたと語ります。3つのプロジェクトを全うした深田さんに、プロボノでの経験やその後の気持ちや捉え方の変化についてお話を伺いました。
「自分にしかできないものって何だろう?」 プロボノとの出会いはそんなところから
プロボノに出会う前にもボランティアはしていました。動物保護団体で活動していたのですが、街頭に立っての啓発など「誰にでもできる」という参加のしやすさの反面、「自分しかできないことではないな」と思うこともありました。
もっとほかにできるボランティア活動はないかと、「ボランティア」/「大阪」というキーワードで検索するなかで、サービスグラントに出会いました。
そして、出会った「仕事のスキルを活かせる」プロジェクト
いろいろなプロジェクトの中で、自分のスキルを活かせそうなものを探していたところ、社会福祉法人が運営する洋菓子店のパッケージリニューアルプロジェクトに出会いました。
(2015年参加:社会福祉法人 北摂杉の子会)
有名なパティシエにレシピを提供してもらい、障がいのある方々でお菓子を作り、販売するという活動をされていました。
味は良いと評判にはなるものの、製造数に対して販売数が伸び悩んでいたことや、販路の拡大などに課題を感じていること、施設での販売だけではなく駅前に店舗を構えることも考えているがその分野に強い人材が内部にはいないなど、いくつかの課題がありました。
当時、自身が仕事で洋菓子のパッケージデザインを関わっていたこともあり、自分のやってきたことが活きるなと思って立候補し、これが初めてのプロボノプロジェクト参加となりました。
パッケージデザインが成果物となると思っていましたが、課題についてのヒアリングや検討を進めていくうちに「お店ができたら、ショップカードも必要」などと、話が拡がっていって、どこまでできるだろうか…とびっくりしたことも思い出深いです。
プロジェクトメンバーとの打合せ
デザインの経験が役に立つならばやってみたいとは思ったのですが、仕事として自信があった訳ではなくて…。当初は「デザイナー」とは言われたくはなかったんです。
会社勤めのデザイナーだったこともあり、自分がデザインしたものが商品にはなりますが、デザインすることそのものが自分の収入に直接影響しているというイメージはなかったので、1対1でお客さんと仕事をしているフリーランスのデザイナーの方とは少し違う感覚かなと思います。
プロボノでは、会社の製品としてではなく、自分のデザインしたものとして外に出したいという気持ちを強く持っていたように思います。
これまで3度にわたる参加 その背景にある思いとは…
自分としては、1回目のプロジェクトでやりきれなかったと感じていたところもあり、その想いと募集のタイミングが合ったのかな。時間もちょうどあった時に募集を見かけ、2回目のプロボノに参加し、こどもの生活を支えるNPOのパンフレットを作りました。
(2017年参加:こどもの里)
成果物納品時のひとコマ
この団体は、代表がとてもパワフルな方で、打ち合わせでお会いした時の緊張感が印象に残っています。こどもたちもとても元気いっぱいでした。予想以上に、自分にとって新しい価値観や世界観を知ることができ、それが良かったなと思いました。
3回目のプロボノ参加では、地域で高齢者を支える社会づくりのため、高齢者が抱える様々な問題に対して、より早い段階で気軽に相談してもらえるようなシステム作りに取り組んでいる団体を応援しました。(2019年参加:こもれび相談室)
自分の親の年齢が高齢者と言われるところに近づいているなと思ったこともありましたが、「参加することで、また知らない世界を知られるのかも」と、自分の将来にも役に立つ知識が得られるんじゃないかというシタゴコロ的な期待も、参加の動機でした。
中間提案の様子 朝日新聞の記者の取材も入りました
このプロジェクトでは「老いていく」ということが、どういう現状なのかをリアルに知ることができました。ひきこもっている高齢者のことや、高齢者になってからも、入れる施設と状況によって入れない施設がある、そんな事を知れたのは大きかったです。
立派な活動をしている団体の皆さんがどういうところで悩んでいるのかなども、入り込んで聞くからこそ、のかなとも思いました。
世の中には「若い人向けの終活講座」などもあり、プロボノに参加するという方法以外でも、知る手立ては他にもあるのだろうけれど、それだとなかなか<自分事>としては受け入れられず、入ってこなかったと思います。
活動者の方の話や、そこに参加している人の話を直接聞くことで、自分に入ってくるものがちがうなと感じます。
成果物のリーフレット
ヒアリングを経て、文言一つ一つをチーム内で検討し、デザインは団体名にもある「こもれび」(葉からこぼれる光)を象徴するやさしいトーンのグリーンと黄色をイメージカラーに。「相談」以前の「お話しに来てください」という団体さんのスタンスが伝わるように仕上げました。
「周りの人」と共に生み出す! 自分自身の学びになる!
プロボノは、人のためだけでなく自分のためにもなる面白さに惹かれました
ボランティアはもともとしていたこともあり、プロボノもその延長線上にありました。
プロボノに参加する人たちは、仕事の進め方がとても上手で、参考になります。打ち合わせのやり方1つでも違う、学びになるなと思う場面がよくありました。
2019年 同時期の他プロジェクト参加者と交流する「中間レビュー」の様子
初めてのプロジェクトの時、打ち合わせの中で、アカウントディレクターとマーケッターの意見が異なり、どちらも正論でしたが、次のステップに向けてなかなかその調整できない時があったんです。
突然「どっちがいいと思う?」と私に話がふられました。この時に、私はどう答えたらいいんだろう?と。こんなシチュエーション初めてだな、とフリーズしてしまって。
仕事では判断の基準ってある程度明確だと思うので、こういう場面ってなかなかないですよね。仕事以外、という場面での印象深い経験でした。
3つ目のプロジェクトでは、プロジェクトマネジャーの進め方が印象に残っています。
支援先さんとの打合せの時も、緊張のない空間を作って話を聞き出していたのがすごいなと思いました。和やかな空気の中で進める、というのはこれまでに経験したことのないものでした。
プロジェクトは基本的に5~6人のメンバーと一緒に活動するので、自分が提案している後ろにはチームメンバーがいて、支えてくれるみたいに感じることがあります。「心理的安全性」があるのかも。
そして、普段の自分の環境では手に入らないような知識や経験が手に入るのが、プロボノをほかの人にも勧めたいポイントのひとつです。
複数人のチームでプロジェクトを進めることで、他の企業で働く社会人の方や組織の仕事のやり方を知ることができると思います。
打合せが終わった後に、チームメンバーへ今の仕事について相談したこともありましたが、プロジェクトでの様子から私のことを分かった上で、率直にアドバイスをしてもらえました。
特に、3回目のプロジェクトでは「完全燃焼したい!」と思って参加したこともあり、これまで以上にヒアリングや現場見学などの場面に参加したのも、よかったと感じています。
あるプロジェクトの途中には、意見がまとまらず停滞し、最後の判断は団体さんに委ねることもありますが、そこにたどりつくまでにチームメンバー全員がなんのリアクションも示せない瞬間に出くわしたこともありました。
思い返すと、それまでは、自分の出番がくるまでマーケッターに任せきっていたところもあったのかも。
自分自身がもうちょっと能動的に「楽しんでやる」という意識を持っていたら、状況は違ったかなと思います。ほかのメンバーからも「楽しんでやったらいいんだよ」と言われたことがあり、印象に残っています。
「しっかりやらないと!」という意識が強くありましたが、肩の力を抜いて「プロジェクトを楽しむ」っていうことも大切なのだと思います。
―これからプロボノに参加しようと思っている方へ― 楽しんでやるのが一番!
自分のスキルがどうこう、というより、自分のスキルを違う世界で発揮するとどうなるだろうか、くらいでよいと思います。フットワーク軽く、最初の一歩を踏み出したら、見えてくる世界もちがうのかな、と思います。
特に、インハウスでやっているデザイナーさんに挑戦してもらいたいです。
会社とはまた違った仕事のやり方を身に着けることができるし、打ち合わせの持ち方や進め方も勉強できると思います。
登録するときに「私でいいの?」と思うこともあるかもしれません。また一方で、「自分の力を貸す」という気持ちで、相手ができないことを助けてあげて喜んでもらえることが、私も最初の頃の強い動機でした。今思うと、上から目線だったところかも…。
ですが、プロボノの参加経験を重ねていくと、自分が与えてるものよりもらうものの方が大きいというのをとても強く感じています。それは自分が知らない世界ともいえる、団体さんが対峙する社会課題や業界の実態だったり、チームメンバーから学ぶ仕事の仕方だったり…。
経験するたびに、新しい知識や学びに触れたい!という思いも強く、プロボノでそれが叶う期待もありました。
プロボノに参加することで、最初は自信がなくても、楽しい世界を広げるきっかけになってもらえたらいいなと思います。
▼プロボノでのプロジェクト参加へご関心をお持ちになった方は、こちらのページも併せてご覧ください。
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※掲載内容は2020年11月時点の情報です。