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伊藤 理絵さん(広告ディレクター)

世界が広がることがプロボノ参加のモチベーション

-プロボノのモチベーションやリワードのあり方が仕事にも活きる-

 

伊藤 理絵さん(広告ディレクター)

 

参加プロジェクト(チーム型):Piece of Syria(活動運営マニュアル)キャンサーネットジャパン(映像制作)、コクレオの森(マーケティング基礎調査)

 

参加プロジェクト(GARNT):原宿外苑中学校「原外カフェ」虎の巻の作成

 

プロボノに関心を持ったきっかけは?

 

ボランティアはしたいけれど、瓦礫を片付けるとか、寄付以外に仕事の能力を使って貢献できることはないだろうか?とモヤモヤした時がありました。その時に、マーケティングのボランティアもある、と知ったのがプロボノ参加のきっかけです。プロボノなら私にもできることがあるかもしれない。 ちょうど、コロナ禍でオンライン打合せに慣れたことも大きかったです。以前プロボノメンバーに「リモートワークで通勤にかけていた往復4時間を充てられるからプロボノはじめた」と言う人がいました。空いた時間を有意義なことに使いたいというニーズは高まっていると思います。新しい経験をするときの選択肢はたくさんありますが、本を読むなどのインプットを増やすのではなく、本業以外の場でアウトプットして、誰かの役に立つ豊かさもあると思い、サービスグラントのプロボノに登録しました。

 

これまでのプロジェクトの経験とは?

 

シリア難民支援・がんとセクシュアリティ・フリースクールと、領域はまちまちで、マニュアル制作・啓発動画・スローガン検討と支援内容もバラバラです。チーム型のプロジェクト(立候補者のなかから5人前後で編成されたチームで取り組むもの)に参加したのですが、初めてのプロボノから、プロジェクトマネジャーを担当しました。サービスグラントのプロジェクトマネジャーはリーダーではなく1つの役割で、支援先のNPOとの調整は責任もって行いますが、リサーチや提案をリードするのは主にマーケターです。インタビューは役割関係なく全員で行いますし、ゆるやかに分担はありながらも、全体の進め方にも、支援先にも疑問に思ったら担当領域は気にせずに素直に意見をいう。私が経験した3つのプロジェクトいずれも共通して、支援先とプロボノ、そしてプロボノメンバー同士もフラットな関係で進められました。 普段接しない職業や年代の方がいて、さらにNPOの方もいる。みんなそれぞれの考え方の違いを楽しんでいたと思います。

 

プロジェクト経験の中で自分の強みが発見できたなと思うことはありましたか?

 

本業もプロジェクトベースの仕事で、進行管理や調整力はそのまま生かせています。会社名・役職名を外した個人として信頼してもらい、プロジェクトを回せるかという漠然とした不安はありましたが、意外とできました。とはいえ、業界によってマーケティングのやり方も違います。例えば、製薬会社の方は情報利用のパーミッションに慎重で、コンサル会社の方は情報がMECEになっているのかを気にします。その上、支援先のNPOは「マーケティングのアドバイス自体が初めて」というところが多く、用語の説明から必要です。ロジカルな説明に慣れたメンバーと、長年阿吽の呼吸でやってきたNPOとのギャップが大きい。NPO代表の方は、直感を大切にされていることが多く、ロジカル過ぎると気持ちがついていけない。でも、たとえ話をすると、なるほど!と腹落ちしてくれることもあります。スローガンを作り変えたいというNPOで、「内部で通じる概念をそのまま外部に伝えても理解されにくい」という説明はピンとこない様子でしたが「犬の散歩で会う相手が、それを聞いてどんな団体か理解できるか」という例えで「ああ、今のスローガンは通じないですね」と納得していただけました。伝える相手に合わせるという広告の経験も役に立ちますね。

 

プロボノは普段とは異なる環境での越境体験とも言えますが、その中で得られたことは?

 

「NPO団体を知ること・話すこと」自体が越境体験だと思います。またプロボノ経験者から「支援先からお金をいただくわけではないので受発注の関係ではない。また、プロボノメンバーのリワードは経験だけ」というお話を伺いました。チームで行うプロボノの場合、ひとりの優秀な人が全部やって支援先が満足したとしても、それではプロボノワーカー全員のリワードにならない。仕事では、顧客の要望を叶えるために、自分の思いや疑問は脇において取り組まなければいけない場面もありますが、プロボノではみんなが疑問に思うことをぶつけて、全員が役に立ったと実感できるよう進行しますので、普段の仕事とは優先順位が違います。メンバーによって、わいわいやりたい人もいれば、サクサク片付けたい人もいますので、「このメンバーは何が満たされると満足なのか」で分担するのも、面白い経験です。

動画を作るプロジェクトのときに、シナリオができてからアニメーターが加わったのですが、「この表現は誰かを傷つけないか?」に敏感な方で、大変勉強になりました。性的嗜好の多様性だけでなく、年代や体形の多様性にも目配せして、「メインキャラクターがスレンダーで、太った人はアクの強いキャラクターとして描かれています。メインキャラクターの1人はふくよかにしませんか」といわれたとき、無意識にステレオタイプな表現に慣れていたと感じてハッとしました。「コミカルに描いて、シリアスなテーマをうけいれやすくする」という制作意図は理解しながらも、20代のアニメーターが50代のベテラン監督に意見し、決めつけと感じるセリフやシーンを次々に改訂していく。今もその時のやりとりは、私の血肉になっています。

 

普段の仕事との両立はどうしていますか?

 

仕事との両立よりも、家庭との両立の方が課題ですね。活動時間が平日夜や休日なので。だからチームメンバーには、家庭のことも含めて、無理な時は無理というし、いってもらいます。プロボノワーカーは責任感が強い人が多いので、仕事も家事育児も抱えがちですが、「プロボノでは、やれることをやり、できない期間はみんなでカバーする」というスタンスです。半年に近いプロジェクトだと、途中でメンバーの転勤や異動、体調不良など想定していなかったことが起こりますが、「欠席するのでこのページだけやっておきます!あとは任せます」みたいな感じで一人でやるところと議論するところをわければいいので。支援先さんも完璧は求めていなくて、一人一人の迷いや隙も見える方が伝わるし、あまりストイックになりすぎないのが、うまくいくコツかもしれないです。

 

お一人で取り組んだ「GRANT」では、チーム型支援と比較してどう感じましたか?

 

GRANTは、短期間でサクッとやりたくて。チームだと夜遅くに何度も打合せしますが、1人なので、現場見学とヒアリングした後は、好きな時に資料を作って送るだけで気楽でした。
担当した「原外カフェ」(原宿外苑前中学校・民生委員・NPOと協業の「放課後の居場所づくり」)は、中学校でお茶しながらヒアリングでき、自分の居場所も作ってもらえました。無理に話しかけず、ただお菓子とお茶を渡して、中学生が思い思いに過ごすのを見守る。いつ誰が来てもいいし、誰も緊張していない。言葉にしなくても中学生や当日参加のボランティアにも温かさが伝わる得難い体験でした。自分で聞いて撮影し、感じたままを資料にし、直接赤入れしてもらうスピード感もありました。半年かけて距離を詰めるチーム型とは違い、個人で責任を持つスリルも含め、職業スキルを使う実力試しになるので、またやりたいです。

 

今後もプロボノを続けたいですか?

 

プロボノを始めて4年ですが、半年プロジェクトに取り組んで、半年休んで、そろそろまたやろう、くらいのゆるいスタンスです。あと、会社名よりも、個人の名前でつながるのは豊かで居心地がいいと思いますし、本来、その方が自然な関係性なのではとも思います。寄付管理マニュアル制作で、寄付者の方にヒアリングをさせてもらった時、「忙しくて団体のイベントには参加できないけれど、いいお金の使い方をさせてもらっている」とお答えになった方がいて。それまで私は、寄付は相手のためにするもので「自分を豊かにするお金の使い方」と考えたことはありませんでした。プロジェクトのたびに、知識とは違う深いレベルでこんな世界があるんだと、そこに身を置く人を近くに感じます。私にとってプロボノは大変なこともあるけれども楽しい時間を過ごせる活動で、自分の世界が広がることがプロジェクト参加のモチベーションになっています。

 

▼プロボノでのプロジェクト参加へご関心をお持ちになった方は、こちらのページも併せてご覧ください。

プロボノ参加者向け説明会について

▼社会参加プラットフォーム「GRANT」は、こちらからいつでもご登録・ご参加いただけます。

 

※本レポートは、2023年12月12日開催、サービスグラントでのプロボノ経験を持つ有志メンバーが社会課題へのリテラシーを高めたり、プロボノの経験の共有を目的に企画運営に関わる大人の社会科見学 onlineの内容を編集し掲載しています。