パンフレットをきっかけに団体内に変化が。寄付・会員数も大幅増加!
支援先団体:気候ネットワーク
プロジェクトの種類:印刷物(団体紹介パンフレット)
実施期間・エリア:2018年6月~2019年1月(大阪)
本記事は、当時のプロジェクトに参加したプロボノチームが支援先団体「気候ネットワーク」に向けて行ったオンラインインタビュー(2020年11月9日・Zoomにて実施)を元に作成しました。
プロジェクト当時の活動内容
社会全体を持続可能に「変える」ために
気候ネットワークは、地球温暖化防止のために市民の立場から「提案×発信×行動」するNGO/NPO。1997年に京都で行われたCOP3会議を契機に設立されており、京都議定書ともに育ってきた団体です。
ひとりひとりの行動だけでなく、産業・経済、エネルギー、暮らし、地域等をふくめて社会全体を持続可能に「変える」ために、地球温暖化防止に関わる専門的な政策提言、情報発信とあわせて地域単位での地球温暖化対策モデルづくり、人材の養成・教育等に取り組んでいます。また政策提言などを通して、日本のパリ協定批准の実現に向けて積極的に活動を推進しています。
理解されることが難しい環境問題への取組をどうわかりやすく伝えるか?
ネットワーク団体として、全国の市民・環境NGO/NPO、多くの組織・セクターと交流・連携しながら活動を続けていますが、団体のミッションや気候変動に関する課題は、環境問題に普段接していない人にとっては敬遠されがちで理解されることが難しいという一面も。
環境について、身近なこととしてまず知ってもらうための入り口のひとつがパンフレットですが、団体紹介のパンフレットは作成から10年以上経過し、現在の課題や取り組み内容を充分に伝えることが難しくなっていました。社会的な背景を踏まえて、団体のミッションや解決に向けて取り組んでいる活動をわかりやすく伝えるパンフレットを必要としていました。
専門家でなくても関心を持ってもらうためのパンフレットを制作
読み手が団体の活動のことを知って魅力を感じ、理解者、賛同者となり会員・寄付者となることをめざしたパンフレットを作成するため、気候ネットワークの会員(大学教授、新聞記者)、ボランティアスタッフなどステークホルダーへのヒアリングや、気候変動関連イベントでの参加者アンケートからステークホルダーのニーズを導き出しました。
パンフレットのメインターゲットは、気候問題の専門家ではなく「ちょっと関心のある層」に向けたものに決定。これまでのパンフレットの構成要素と比較しながら、メインターゲットに向けた新たなパンフレット案を提案しました。
団体とプロボノチームとの濃い議論の結果、今地球がどんな状態にあって(課題の共有)、その中で気候ネットワークが何をめざし(ミッション)、今までにどんな成果を出し(定量
訴求)、それを応援するために自分たちに何がで
きるのか(具体的行動)、を記載することになりました。
表紙デザイン、テキスト・図の配置や全体のテイストについても時間をかけて議論し、納得のパンフレットを作り上げることができました。
プロジェクトのその後(支援先団体からの声)
寄付や会員数が増え、多様な人・組織とのつながりが広がった
パンフレット制作のプロジェクト開始前、寄付金は年間100万円程度でしたが、2020年度は半年で既に約100万円の寄付をいただいています。コロナの影響で対面でのセミナーができない状況下でも以前より多くの寄付をいただくことができています。
会員数は100名以上増えて現在650人・団体を超えました。
また、スタッフ自身が「配りたい」「活用したい」と思うパンフレットになりました。
気候ネットワークの特色や活動がバランスよく配置されていてわかりやすくなったことで、活用しようというモチベーションが高く、セミナーなどの機会に積極的に配布していました。パンフレット制作後、約7,000部を配布しています。(現在はコロナ禍の影響で配る機会が減っています)
パンフレットを見た人からは、「色々な人が団体をサポートしていることがわかる」「関わっている団体とのネットワークがわかりやすい」「活動の特色や成果がわかりやすい」「電力会社を変えようと思った」「もっとできること考えてみようと思う」といった声をもらうこともあります。デザインがいいという反響もありました。
また、企業からのコラボの提案や寄付の問い合わせが増えてきているなど、以前に比べいろいろな人に支援してもらえるようになってきたように感じています。
パンフレットがきっかけになり、新しいアプローチの動きも
パンフレットの制作過程で、どういった人に配るのかを組織内で検討できたことは大きかったです。
以前は気候変動に関心の強い玄人を対象に、気候変動の政策や科学など専門的な評価に耐えられる活動が中心でしたが、最近は裾野を広げて一般の人にもアプローチしようという動きが団体内から出てきています。パンフレットの内容について、一般の方にもわかるようにという視点で議論したことが活きていると感じます。
事例として、小中高生対象の作文コンクールを実施し、全国から約300も応募作が集まりました。また、気候変動という言葉を使わないセミナーや、「環境と食べ物」といった一般の方がとっつきやすいテーマを取り上げることも始めています。こうした団体内の変化は、パンフレット制作過程で、裾野を広げてアプローチすることの必要性を実感した影響が大きいです。
今後、情報発信については、
・パンフレットを含めて、コロナ禍でどういう情報発信をしていくとよいか。
・ウェブサイトをリニューアル(マイナーチェンジ)していく必要性が出てきている。
・信頼性のある情報を出していればよいという時代ではなくなってきた中、インターネット空間上での情報発信をどうしていくかの戦略が必要。
といったことが課題と考えています。
インタビュー後記(プロボノチーム)
「パンフレットの内容について、一般の方にもわかるようにという視点で議論したことが活きている」とのコメントをはじめ、インタビューのあちこちで、団体の意識の変化とプロボノチームへの信頼感を感じることができました。
半年にわたるプロジェクトを通じて、チームが伝えたかった「一般の人に伝えるには、専門知識のない人が理解できる言葉で語ることが必要」を真摯に受け止め、プロジェクト終了後もそれを実行してくださっていることを感じました。
気候変動に関して素人集団であるプロボノチームが、専門知識の塊である団体に対して丁寧に議論したプロセスが、団体の変化を促すきっかけのひとつになったと感じます。インタビューを終え、プロジェクト終了から約2年後に嬉しいプレゼントをもらえたような気持ちになりました。