地域の課題解決プロボノプロジェクトは、一般の社会人が仕事の経験やスキルを活かす「プロボノ」で、東京都内の町会・自治会を支援するプロジェクトです。 2021年度も、地域の情報発信に取り組みたい町会・自治会の皆さんや、組織や運営の課題を解決したい町会・自治会の皆さんと、プロボノワーカーの皆さんが、一緒にプロジェクトに取り組んできました。その成果と、町会・自治会活動に起きた変化を振り返り、広く共有する「成果報告会」を開催しました。コロナ禍という環境が続く中、通常の町会自治会活動が滞る状態が続きながらも、プロボノ支援を活用して前進した事例をご紹介しました。
当日は、町会・自治会所属の方々を中心に、区市町村の町会・自治会担当部門の方、まちづくりや町会・自治会の活動に関心を持つプロボノワーカーはじめ企業・団体・個人の方等、多様な背景を持った約116名の方にご参加・ご視聴いただきました。
【開催概要】
- 日時: 2022(令和4)年3月12日(土)13時30分~16時30分
- 参加方法:
- オンライン(ご自宅等でのインターネット視聴)Zoomウェビナー、YouTubeでの視聴いずれかを選択
- 新宿の生中継会場への来場(パブリックビューイング)
【当日プログラム(レポート目次)】
第1部:地域の情報発信強化
「実践講座」を通じてホームページ等を作成し、情報発信に取り組んだ団体による成果報告
【Facebookページ立ち上げ|南常盤台二丁目町会(板橋区)、小日向台町町会(文京区)】
【ホームページ作成|緑町第四町会(小金井市)、八丁堀三丁目西町会(中央区)】
第2部: 地域の個別課題解決
活動の後継や活性化など各地域の課題解決に「個別支援」で取り組んだ団体による成果報告
第1部:地域の情報発信強化
「実践講座」を通じてホームページ等を作成し、情報発信に取り組んだ団体による成果報告
「実践講座」とは、事務局が開催する複数回の集合型講座への参加を通じて、プロボノワーカーのサポートを得ながら、町会・自治会の方ご自身が手を動かして、成果物を作成するものです。本年度の実践講座は、インターネットを通じた情報発信に取り組みたいという町会自治会の方々を対象とした内容でした。それぞれの町会自治会のFacebookページを立ち上げる講座、または、ホームページを作成する講座に、全部で14の町会自治会が参加しました。その中から、支援を受けた4つの町会・自治会と、成果物の作成をサポートした2人のプロボノワーカーにお話いただきました。
町会・自治会/登壇者名 | 支援内容 |
南常盤台二丁目町会(板橋区) 野口 孝子氏 | Facebookページ立ち上げ |
小日向台町町会(文京区) 酒井 美津子氏 | |
プロボノワーカー 太田 蒔子氏 | |
緑町第四町会(小金井市) 八木 尚子氏 | ホームページ作成 |
八丁堀三丁目西町会(中央区) 下野 裕一氏、北見 丈亜氏 | |
プロボノワーカー 小宮 崇央氏 |
※以下、南常盤台=南常盤台二丁目町会 野口氏、小日向台=小日向台町町会 酒井氏、プロボノ太田=プロボノワーカー太田氏、●=事務局(進行役)
- Facebookページ立ち上げの背景と、実践講座への参加理由について教えてください。
南常盤台: 1960年に発足し、約670世帯が加入する町会。30人ほどの役員で運営し、毎月報告会を開催。町内にある神社を中心としたお祭りなどの活動が多い。
長く世代交代がされておらず、少しでも町内の若い人たちに、町会に興味を持ってもらいたい。そのためにはインターネットを使うのが一番早いのではと考えた。将来的にはホームページも作成し、書類もデジタルデータとして持ちたいと考えている。ホームページよりも敷居が低いということで、今回はFacebook立上げに挑戦した。
小日向台: 1950年頃に活動開始し、1,000世帯弱が加入する町会。活動は活発だが、町内に若い世代も増え、世代交代が求められている。
様々な連絡を紙ベースで全戸に配布するなどしていたが、共働きで在宅していない人も多くなってきている。メールやインターネットで、いろいろな情報を届けたほうがいいのではないかという意向があった。同じく、ホームページより敷居の低いFacebookで始めてみようと思った。
- Facebookページで工夫したところを教えてください。
南常盤台:町会メンバーの利益になるような情報を発信したい。掲示板や回覧板で情報を回しているが、見てる人は少ない。電柱やゴミの収集場所に行かなくても情報が伝わるよう、Facebookに掲載できるようにした。こだわったところは町会のロゴマーク。Facebookのプロフィール写真として活用した。
小日向台:写真が豊富な町会だよりと、掲示板で様々なお知らせをしてきた。ただし年4回発行の町会だよりでは、3~4ヶ月前のニュースが載るというペースになる。また、掲示板は通勤ルートなど日常の動線上にない人は、目にする機会がない。オンタイムで多くの人に知らせることができるツールとして、Facebookを立ち上げた。
- プロボノワーカーと一緒に取り組んでみてどうでしたか?
南常盤台: 町会1団体に1人がついてくれた。小さなことでも聞きやすいし、町会の実情もゆっくり話をして、的確なコメントをもらった。町会役員は限られた範囲を見て、客観的ではないところで動いているが、プロボノワーカーが広い視野で意見、アドバイスをくれたのが非常に大きかった。
小日向台: 「どんな世代のどのような人に向かって、何の情報を伝えたいのか」という考え方など、プロボノワーカーが具体的な問題意識を整理してくれた。方向を示していただいて、とても役に立った。
- 今後、どのようにFacebookページを活用していきたいですか?
南常盤台: 若い世代に、これを機会に役員として参加してもらいたい。現在の役員の年齢層が高いので、デジタルツールの使い方を説明するような会もしていきたい。書類をデータとして持ったり、ホームページを作成したりということにも挑戦したいと思っている。
小日向台: Facebookを立ち上げるにあたって、少数だが近所の方にアンケートを取ってみた。情報を得る先はFacebook、Instagram、Twitter、など様々だということが分かった。Facebookだけで誰のところにも情報がすぐに届くということはないので、発信の仕方はこれからの課題だと思っている。
Facebookを立ち上げたので見てください、という告知は、掲示板など様々な所でお知らせしているが、個人情報など用心深い声もあり、まだ広がりが十分ではない。皆さんの合意を得ながら、公開してよい情報を展開していかなければと思っている。
- ご参加の皆さんへお伝えされたいことがありましたら教えてください。
南常盤台: 他の町会さんの情報が参考になる。どんな行事をして、どのように盛り上がっているかなど、Facebookで見て参考になる。どんどん取り入れたら良いのではないか。
小日向台: お手本として、先行している町会のFacebook事例を見せていただいた。その時感じたのは、Facebookに魅力があるということは、町会活動に魅力があるということ。Facebookは伝達ツールで、その前のコミュニケーションを盛り上げて初めて、伝えたいことを見てもらえるという感想を持っている。
- 実践講座に参加しようと思ったきっかけを教えてください。
プロボノ太田: 仕事の経験を、別の機会でも生かしたいと思った。他のプロボノワーカーや町会・自治会の皆さんといった、仕事で得られる繋がり以外の出会いにも期待して参加した。
- 団体と一緒に取り組んでみてどうでしたか?
プロボノ太田:最初は緊張したが、始めてみると町会の皆さんとじっくりコミュニケーションを取れた。
実践講座は、「町会の課題を洗い出して、どういうふうにFacebookを通して解決するか」と「実際にFacebookをどう立ち上げるか」の2段階構成になっていた。前半の課題を洗い出すところでは、町会の皆さんが沢山の課題意識を持って講座に参加されていたので、自分はお話の交通整理をしたり、新たな視点を取り入れたり、タイムキープをしたり、といった役割をしていた。
プロボノに参加した後も、仕事でたまたま似たような活動をする機会があり、プロボノの経験を仕事でも活かすことができた。
- 実践講座に参加しての感想を教えてください。
プロボノ太田: 町会の皆さんが抱えるリアルな課題などをお聞きすることができ、良い経験だった。担当させていただいた町会の方々とは、活動が終わった後もFacebookを通じて繋がりができ、たまに連絡を取りあったりしている。そういった、仕事以外から得られる出会いも期待していたので、参加してよかった。
南常盤台二丁目町会Facebookページ https://www.facebook.com/minamitokiwadai2/
小日向台町町会Facebookページ https://www.facebook.com/kobidaichokai
※以下、緑町 =緑町第四町会 八木氏、八丁堀 下野=八丁堀三丁目西町会 下野氏、八丁堀 北見=八丁堀三丁目西町会 北見氏、プロボノ小宮=プロボノワーカー小宮氏、●=事務局(進行役)
- ホームページ作成の背景と、実践講座への参加理由について教えてください。
緑町: 都会と田舎のちょうど中間点くらい、緑豊かな街の町会で、1960年に発足した記録がある。会員は約500世帯、役員は30代から80代まで幅広く、女性も約半数を占める。新しいアイデアや意見など活発に出し合いながら、様々な行事を実施することで、住民同士のつながりづくりを目指している。
イベントを多く実施する中で、雨の日の中止連絡などをメールなどで流せないかと考えることがあった。また、コロナ禍で回覧板を回すことが難しくなり、紙ベースではないツールで何とかできないかという声も聞いていたが、具体的な行動に移せていなかった。
ホームページ作りはプロに頼むこともできると思うが、どこをどう頼んでいいかが分からない。実践講座では自分達で作成することができるし、プロボノワーカーのサポートがあるということで、参加してみようと思った。
八丁堀 下野: 中央区のちょうど中心に位置し、企業やマンション、オフィスビルが混在する地域。盆踊り大会や日枝神社の祭礼といった恒例行事に加え、大人の羽根つき大会や町内清掃活動など、地域に住む人が中心になって様々な活動を行っている。
新しいマンションが増え、新住民の方へ今まで通りの回覧板や掲示板で情報を届けるのは非常に難しいと考えた。まずはFacebookを先に立ち上げ、既に運用している。一方で、あまり更新頻度が高くないが重要なデータについては、ホームページで公開するのが適していると思い、実践講座の存在を知って参加した。
- ホームページで工夫したところを教えてください。
緑町: 地域には、子育て世代の若い世帯が少しずつ流入しているが、町会への入会には繋がっていない。比較的若い役員もいるが、人数が増えていかない。若い世帯に訴える手立ては何かないかと考え、入会促進事業を行うことになった。ホームページは、新しく会員になる方をターゲットに、行事の紹介など掲載しようと考えて作った。掲示板で見たイベントはどこでやっているんだろう、参加してみたい、などというきっかけから、町会活動に加入してくれる方が増えるようにと考えている。
他のホームページの見本を見ると目移りしてしまい、掲載内容や見せ方など色々なことを考えてしまった。初心の課題解決に立ち戻るのに苦労した。
八丁堀 北見: 防災についての情報をわかりやすく伝えることに注力した。町内には、住んでいる方とオフィスで働いている方が混在しているが、有事の際には避難先も異なるという部分を、よりわかりやすく伝えられるようなホームページ作りを心掛けた。また、江戸時代からの長い町の歴史も、住んでいる方にうまく伝えられるよう工夫した。
- プロボノワーカーと一緒に取り組んでみてどうでしたか?
緑町: 担当いただいたプロボノワーカーは若い世代の方。技術的なことよりも、若い方の立場で考えることや、ツールの使い方や発信方法などにちょっとした気付きが沢山あった。その気付きが自分達のアイデアになって、ホームページにこの内容を足してみよう、などと検討できた。次の一歩を考えるきっかけをいただいた。
八丁堀 北見: プロボノワーカーの方からは、町会活動に参加していない方がどういう情報が欲しいか、どういう内容だと興味を持ってもらえるか、といったポイント、生の声をいただけて、制作に生かすことができた。
- 今後、どのようにホームページを活用していきたいですか?
緑町: 町会加入のツールとして使うところ、加えて、会員の方への便利機能なども充実させていきたい。町会主催の勉強会や関係機関が行う講習会の発信、町会内のサークルやボランティアグループの紹介などもできたらと考えている。
また、ホームページからFacebookなどにも繋げて、連携していけたらとも考えている。まだまだやりたいことが沢山あり、今後の広がりにワクワクしている。
八丁堀 下野: 町内の企業向けに、帰宅困難者向けの一時避難場所をお知らせするほか、防災意識を高めるための避難訓練実施を検討したいと思っており、ホームページがあることによって、企業の方にも見ていただけると考えている。
また、ゴミ出しの情報や地域行事なども掲載しているので、新しい住民の方には、ホームページを見ることで地域のことも知っていただきたい。
- ご参加の皆さんへお伝えされたいことがありましたら教えてください。
緑町: ホームページは新しい会員の勧誘ツールという目的があったが、あれも載せたい、これも載せたいとなかなか具体的にならなかった。全3回の実践講座のうち、1回目はほとんどパソコンに触らないで、どういう情報発信をしたいか、誰が対象かを考えた。アンケートを取ったりヒアリングしたりした内容が、後からジャブのように効いてきて元の目的に戻ることができた。私達がホームページをつくる目的はここだ、と考えるところから講座が始まったのがとても良かった。
八丁堀 下野: ホームページを作る前の段階で、そもそも町会とは何なのか、町会として発信したいことは何か、誰に向かって何を伝えるかを話し合う機会になった。実践講座に参加していた私と北見さん以外の町内会メンバーの皆さんと、お話がしっかりとできた。原点の確認ができたことが非常によかったと思っている。
- 実践講座に参加しようと思ったきっかけを教えてください。
プロボノ小宮: 自分の仕事の経験やスキルが他所でも通用するかという課題感から、定期的にプロボノに参加している。副業や社外での活動を認める会社が増えてきて、企業人が社会で活躍するのは当たり前という雰囲気にもなってきた。プロボノでは、普段の仕事では向き合えない課題と向き合えるのが魅力的と感じている。
- 団体と一緒に取り組んでみてどうでしたか?
プロボノ小宮: インターネットのサービスを作る仕事をしているので、自分の経験が生きるプロジェクトだったと思っている。ホームページは手段で、誰のどんな困りごとをホームページで解決するかが一番大事だと思っている。
一番大事な目的のところを皆で議論して、言語化する仕組みが用意されていたので、他の町会・自治会さんのやりたいこともすごく整理されていたと感じた。
- 実践講座に参加しての感想を教えてください。
プロボノ小宮:私がサポートした町会の方々は、御年90歳、80歳の方。不慣れなはずのパソコンを駆使しながら、ホームページ作成を楽しみながらも地域のために奮闘している姿に、とても感銘を受けた。いくつになっても、誰かのために自らも成長し続けるような生き方をしたいと考えるきっかけになった。
八丁堀三丁目西町会ホームページ https://hatchobori3west.wixsite.com/chuoku-tokyo
緑町第四町会ホームページ 公開準備中
※以下、第1部登壇の皆さん
質問: SNSによる発信を検討していますが上手い対応方法が見つかっていません。具体的な展開方法、運用体制をご教示ください。
南常盤台: Facebookでは、何か質問があった時のためにメッセンジャーやメールが設定できる。新たに町会のメールアドレスを作り、問い合わせの宛先にした。
Facebookの更新は現在3人で担当している。Facebookが使えない役員にも、掲載内容はLINEで予めお知らせした上で掲載するようにしている。
小日向台: 今のところ町会役員6人がFacebookの担当者。それ以外の人から提供された情報は、更新権限のある人に掲載を依頼している。お問い合わせや質問については、Facebookの「いいね」機能やコメント機能が使える。
質問: ホームページをどのように拡散していますか。
緑町: これまで新しく町内に引越してきた方にはチラシのポスティングから始めていたが、中々効果が上がらず、リーフレットを作ってポスティングすることにした。今回のホームページアドレスもこのリーフレットに載せ、さらにリーフレット表紙とホームページの最初のページに同じデザインを持ってきた。町会のお知らせと認識してもらい、そこから掲載内容に興味を持っていただくのが目的。
会員の方への拡散は、隔月で出している会報誌で繰り返しお知らせしたいと考えている。
八丁堀 下野: QRコードを掲示板に貼った。コロナ禍で中止になってしまったが、2月にはホームページのお披露目会も予定していた。また、お祭りの案内で企業を回る時に、ホームページも周知していきたい。
南常盤台: Facebookでも、掲示板や回覧で周知を図った。これから役員の名刺を作ろうとしているので、そこにQRコードを入れることも考えている。
小日向台: 紙ベースの町会だよりにQRコードを載せ、覗いてみてくださいと周知している。
質問: 町会の中にデジタルに抵抗がある方がいた場合、どのように説明をしましたか。インターネットやパソコンに無縁の方に、どのように情報を届けたらよいですか。
小日向台:紙媒体で届くものと、インターネットで届くもの、同じ情報でも、届きやすさや時間、情報量、質、それぞれ違う。同じインターネットでも世代ごとに見るツールが違うというお話もあり、複数のツールを使っていかないと中々伝わらないと思う。
緑町:情報を取りやすいところから取っていくという考え方が良いのではないかと思う。紙ベースの情報も引き続き届けて、紙で受け取りたい方達を取り残さないことを説明した。皆さんの現状を見ながら、少しずつ情報発信を多様化させていきたい。
第2部: 地域の個別課題解決
活動の後継や活性化など各地域の課題解決に「個別支援」で取り組んだ団体による成果報告
「個別支援」は、第1部でご紹介した「実践講座」で取り扱う以外のテーマについて、支援先となる町会・自治会ごとに、プロボノが5名前後のチームを結成して支援に取り組むプログラムです。運営を改善したい、参加の輪を広げたい、活動を刷新したい、といった、それぞれの町会・自治会がお持ちの課題に対し、解決に向かうような具体的な成果物を作成していきました。本年度の個別支援は、全部で5つの町会・自治会が参加しました。その中から、支援を受けた3つの町会・自治会と、成果物の作成をサポートした2人のプロボノワーカーにお話しいただきました。
町会・自治会/登壇者名 | 支援内容 |
築地町自治会(中央区) 唐木 重典氏 ※事前収録映像出演 |
業務の棚卸し・運営体制改善 |
公団住宅むつみ台団地自治会(練馬区) 市川 久雄氏 | 防災体制の課題整理・見える化 |
プロボノワーカー 長谷川 直美氏 | |
春日町町会(練馬区) 早川 潤氏 | 住民の意識調査・改善提案 |
プロボノワーカー 小山 佳奈子氏 |
※以下、築地町=築地町自治会 唐木氏(事前収録映像出演)
- プロボノ支援を活用しようと思った理由/プロジェクトに参加した理由について教えてください。
築地町:町自体に400年余りの歴史があり、伝統も人情もあるコミュニティ豊かな町。自営の方、オフィスに勤めている方、マンションに移り住んできた方など様々な人がいる。
自治会運営においても、伝統に基づく方法を尊重しながら、新住民との価値観のギャップを埋められないかと考えた。また、そもそも自治会はどのようなことをしているか、どんな人が運営しているかを分かりやすくすることも必要ではと考えた。
自治会の運営体制や活動を可視化するとともに、皆が参加できる活動推進のきっかけづくりをしたいと思った。
- プロボノプロジェクトの成果物や提案について教えてください。
築地町:大きく見える化、活性化の2つのポイントで自治会活動の見える化に取り組んだ。
見える化については、活動を皆が理解できるように改めること。頭の中で何となくわかっていることを形にしたことで整理ができたことと、プロセスがはっきりしたことで改善点など分析できたことが良かったと思う。
もう一つ、活性化については参加者を増やすために「ここはこうした方が良いのではないか」という新しいアイデアをいくつか提案してもらった。その中の1つはプロジェクト期間中に早速実行に移し、すぐに成果が出た。何かやってみることの中から得られることは多い。
- すぐに成果が出たこととは、具体的にどのようなことでしたか?
築地町:地域の防火啓発パトロールとして実施している夜警を、モデルケースとして実行してみた。告知と申込みをFacebook投稿やLINEの活用、地元企業のPRサイトに掲載してもらうなど試したところ、通常の4~5倍の参加者数となった。今まで自治会活動に参加したことのない方にたくさん来ていただき、賑やかになった。これからはデジタルツールとの連携も上手く使いながら盛り立てていくことも大事だと思った。
- プロジェクトを実施してよかったこと、参加してよかったことについて教えてください。
築地町:良かったと思うのは、プロボノワーカーの客観的な視点。自治会メンバーだけでは気づきにくい、外からどう見えているか、一般の人たちにとってどうか、という視点が冷静だった。また、それをフレームワークに落として分析いただいた。
そして、地域活動に大事なことは、理屈だけではないということ。やはり最後は一緒にやるぞ、という気合や熱意も大事で、論理的な部分と情熱的な部分、二つが相まって活動することの大切さを気づかせてくれた。
- 今後、成果物をどのように活用していく予定ですか?
築地町:プロジェクトと通じ沢山の成果と気づきを得ることができた。大事なことはここからがスタートだということ。これをきっかけに、自治会活動をどう進めていくかが大切だと思う。そのために自治会幹部の皆さんの理解や、多くの賛同者を得たい。良い意味での危機感と希望と勇気を持って行動していきたい。
【トーク内容/公団住宅むつみ台団地自治会 防災体制の課題整理・見える化】
※以下、むつみ台=公団住宅むつみ台団地自治会 市川氏、プロボノ長谷川=プロボノワーカー長谷川氏、●=事務局(進行役)
- プロボノ支援を活用しようと思った理由/プロジェクトに参加した理由を教えてください。
むつみ台: 昭和43年に練馬区・光ヶ丘団地の中で、一番早く入居が始まった公団住宅の自治会。全3棟・1261世帯が居住し、65歳以上の住民が40%以上を占める。自治会はこの3月で第50期を迎え、団地の世帯の約3分の1が自治会に入会している。役員は現時点で6名、この他に選出されている自治委員が58名。誰もが安心して住み続けられる、人と人との繋がりを大切にする、防災意識、を大切に運営している。季節ごとに夏まつりや盆踊り、敬老行事、餅つき大会などの行事があるが、コロナ禍では縮小や中止を余儀なくされているものもある。
昨年団地内で出火があり、一室が全焼、下の階が放水被害に遭った。集会場を避難所として開放し、また被害にあった方の仮住まいをUR都市機構に交渉した。しかし、一連の手配は組織立ったものではなく、立ち会った役員が行ったもの。これをきっかけに、しっかりした防災組織の必要性を肌で感じるようになった。スローガンに防災を掲げていたが、平成24年に防災マニュアルを作成し、全戸配布したきりで具体的な活動は止まっていた。
そこで今回、プロボノワーカーの力を借りて自主防災のマニュアルを作成し、平常時から災害に備えて、いざというときに安心できる体制を作りたいと考えた。
プロボノ長谷川: コロナ禍で自宅勤務への変化があり、日中、自宅周辺の環境に目が向くようになった。今まで全く関わることができなかった自治会に関われたら、という思いもあった。また地震や災害のニュースを目にする中で、自分がどのような行動をとっていくべきなのか考えるようになった。
今回の募集プロジェクトには自治会・防災という二つのキーワードがあり、自治会の皆さんと一緒に考えながら課題を解決して、希望に添えるものを作りたいと思い、参加させていただいた。
- プロボノプロジェクトでは、どのような手順で防災体制の課題整理・見える化を進めていきましたか?
プロボノ長谷川: 自治会の課題が明確になるようお話を伺った上で、資料以外の情報を入手するため、自治会からお声掛けいただいた住民の方にヒアリングを実施した。具体的なお話を伺った上で再度、課題整理をして、提案内容をまとめていった。
中間発表で提案したところ、既に実施した内容も含まれていたことが判明。また、自治会で出来ることから始めたいという要望もいただいた。そこに重きを置いた解決策に修正しようと、他の自治体の事例や都の防災対策で実施可能なものなどを調べ、成果物を作り上げていった。
- プロボノプロジェクトの成果物についてご紹介をお願いします。
プロボノ長谷川: 防災に対する自治委員の温度差の解消策と役割の明確化、ならびに災害発生時の情報収集・発信方法について提案した。
温度差の解消策については、以前に作成された「むつみ台団地防災マニュアル」は自助に対するものとして引き続き利用いただくこと、さらに防災意識を高めるため「区の防災の手引き」を取り寄せて各戸に配布すること、内容をより良く理解してもらうため団地内の広報誌に防災記事を掲載することを提案した。また、防災訓練を実施されるとうかがったので、その際には消防署から防災についての説明もしてもらうことを提案した。
情報収集については、役員の方がすぐに取り掛かれるような内容にし、具体的な体制作りはこれから自治会の皆さんが検討される前提で提案した。
具体的な情報発信については、今後SNSの利用も検討したいと伺ったので、区の防災関連で使用しているSNS、自治会で取り入れられそうなSNSについて、検討表を含めて紹介した。
むつみ台: 高齢者の多い団地に最も適した防災マニュアルがどのようなものかを模索していった。その中で、情報発信は日頃発行している広報が適していると気づいた。印刷発行の手段も確立しており、スムーズにできる。防災の記事を掲載し、居住者にも訴えていきたい。
また、電源は既にある発電機を活用できることや、自治会側から働きかければ行政機関とも様々に連携・協働できることにも気づいた。早速2月には光が丘消防署との防災体験訓練を実施。今後も定期的に、関係機関との連携を密にして、協働できることを実施していきたい。
これらはこれまで中々実行できなかったことで、プロボノチームとの意見交換から出てきた大きな変化だと思う。
- プロボノワーカー/自治会と一緒に取り組んでみてお互いにどうでしたか?
むつみ台: オンラインがメインで、対面とは違ってなかなか意思疎通が難しいと感じたが、Zoom会議のためにWi-Fi設備を取り入れるなど良いこともあった。
今まで手付かずだった防災マニュアル作成の背中を押してもらい、良いきっかけになった。色々調べていただいたことや提案していただいたことに感謝している。
プロボノ長谷川: 役員の皆さんが、自分達の自治会をより良くしたいという思いに感銘を受けた。プロボノチームとしても何とかその想いに応えたいとプロジェクトを進めた。とてもいい経験ができ、感謝している。
- 今後、成果物をどのように活用していく予定ですか?
むつみ台: 防災組織を作らなければと肩の力が入っていたところだが、今までの活動を見直しながら、無理せずできることを探すというのは良い指摘だった。できることから一つずつ継続したい。
50年近い自治会活動で培われた行事などの様々なノウハウと、プロボノチームからの提案とを活かして、むつみ台団地にふさわしい防災組織を、実践を踏まえながら少しずつ作り上げていきたい。
※以下、春日町=春日町町会 早川氏、プロボノ小山=プロボノワーカー小山氏、●=事務局(進行役)
- プロボノ支援を活用しようと思った理由/プロジェクトに参加した理由について教えてください。
春日町: 春日町1~6丁目で構成される、練馬春日町駅を中心にした地域。コロナ禍で中止になっているが、春日神社での盆踊りは毎年賑わいの中心になっている。また、小学校の子供達の見守り隊も有志で実施している。
一昨年に町会事業を見直す中で事業検討委員会が立ち上がり、その中の意見出しから仲間が集まって、組織部という形になった。若手メンバーで町会を盛り上げていきたいと考え、様々な活動を進めている。
町会構成員のメンバーが高齢化したことで、活動も比較的高齢者向けにシフトしていた。一方で住みやすい街にするには子育て世代の声も重要。特に近年は新しいマンションに若い人たちも住んでおり、町会がそのような人たちのための組織にもなるようにと考えた。
子育て世代をターゲットに、町会に入っていない住民のニーズを調査したいと思い、プロボノの力を借りたいと考えた。
プロボノ小山: 自身が子育てをする中で、地域のありがたさを感じることが多くなった。これまでの町会のイメージはお年寄りのための活動で、今の自分には遠いことだと感じていた。住んでいる地域の町会活動について知る機会がなかったことも原因だと思う。
そんな中、春日町町会では若い世代のための活動を開始したと聞いて興味を持った。
- プロボノプロジェクトでは、どのような手順で住民の意識調査・改善提案を進めていきましたか?
プロボノ小山: 活動の多くはZoomでのオンライン会議やSlack(チャットツール)でのやり取りを主に進めたが、感染状況が落ち着いたタイミングでは春日町を訪問し、町会会館でお話を伺ったり、春日町にお住まいの方からお話を聞いたりできた。
プロジェクト内容と最終成果物イメージの確認からスタートし、メインのアンケートの準備と依頼、結果分析、分析に基づいた施策提案という流れで、町会へのニーズや参加条件の声を集めていった。特にアンケート調査に力を入れ、幼稚園や保育園、小学校、その他公共施設・民間施設、NPO法人の活動場所といった約25施設、およそ2,000部の依頼を出し、回収・分析を行った。アンケート自体はWeb回答だったが、依頼文は紙で印刷し、各施設へ約1週間のうちに配布。町会の皆さんの沢山のご協力があった。
施策の策定では、他の自治体の類似活動など情報収集し、報告書に盛り込んだ。
- 成果物内容のご紹介と、成果物のご感想をお願いします。
プロボノ小山: アンケート調査の結果と考察をまとめた最終報告書、アンケート結果をWeb掲載したり配布したりするための報告書、活動の際に必要となる記録表や役割一覧表の雛形を一緒に納品した。
アンケート結果の考察では、子どもの居場所・イベントに対するニーズが大変高いことがわかり、また地域活動に協力したい方も115名と多数いることがわかった。実際に、具体的な連絡先を記載してくださった方もいた。
そこで、町内会の課題と施策の関係を整理し、従来のアプローチでは、イベント参加者が増えても町会への入会には繋がりにくいため、より主体的な参加をターゲットにした施策を提案した。ポイントは「春日町協力隊」の設立で、町会への加入に関わらず地域活動へ協力の意志がある方々に、イベント企画などに協力してもらうための仕組み。事前に協力しやすい機会や時間の希望を聞いて参加してもらうことで、具体的な活動になる狙いがある。
春日町: アンケートの回答項目は、プロボノチームと一緒に丁寧に検討を進めた。報告書は、役員向けの内容と、一般の町会役員以外の住民に伝えるもの、2パターン作っていただき、相手を見ながら説明できたところがとても助かった。
アンケートを25施設、約2000枚配った際には、足で稼ぐしかないので大変だった。また、そもそもアンケートを取る必要性を、役員の皆さんに説明するところも苦労した。
- プロボノワーカー/自治会と一緒に取り組んでみてお互いにどうでしたか?
春日町: コロナ禍で直接お会いできない状況はあったが、Zoom会議は何度も実施し、Slackというチャットツールも使ってお互い都合の良い時間に連絡を取り合いながら、スムーズに信頼関係が構築できた。プロボノチームが春日町を訪問した時には、色々なところをご案内したりもした。
プロボノ小山: 町会の皆さんの地元愛あふれる姿勢、どうにかして地域を盛り上げたいと、プロジェクトの前から様々な構想を練っていらっしゃった部分に、プロボノチーム一同刺激を受けた。地域活性化のために自分たちに何ができるか考えて実行に移されているところ、家庭・仕事・町会活動を両立されている姿に心から力になりたいと感じ、プロジェクトを進めるモチベーションに繋がった。
自分自身も、地域活動に加わるのはまだまだ先という意識も変わっていった。
- 今後、成果物をどのように活用されたいですか?
春日町: アンケート結果がとても役に立っている。町会活動に参加したいという声が多かったことは勇気づけられた。「春日町協力隊」の提案から、実際に「春日町サポーター」を立ち上げた。町会活動への参加意向があった方にお声がけし、連絡の取り合えるSlackグループを作り始めた。近々、これからどんなことをしていこうか話し合う、サポーター会議の場を設けようと調整している。
アンケートでニーズが高かったフリーマーケットは2月23日に実施。町会会員になれば出店料を無料にするインセンティブをつけたことで、新たに数人が会員になってくださった。
アンケート結果をきっかけに町会のメンバーで企画が実現でき、新たな町会会員も見つけることができ、一歩ずつ成果が出てきたのがありがたい。
※以下、第2部登壇の皆さん
質問: コロナ禍における防災訓練をどのように実施しましたか。
むつみ台: 居住者の防災意識を盛り上げようと、練馬区とも相談し、コロナ禍だったが実施を決めた。実施に当たっては、検温と消毒など感染防止対策を徹底した。会話を控えてもらうため、役員が分担してスピーカーでの呼びかけも行った。起震車や煙体験などは人が密集しないよう、棟ごとに分かれて訓練。万が一の場合に備え、受付で名前と住所を記入してもらった。
質問: 町会活動には若い世代の協力が不可欠ですが、コロナ禍で学校行事がなくなり、PTAとの関係が希薄になっています。若い世代との関係性を持続させる事例を教えてください。
春日町: PTAや町会組織ごとの対話の機会、協働している企画もなくなっているのが現状かと思う。
その中で2021年の秋に「やきいも防災訓練」を実施。防災訓練だけだとなかなか参加いただけないので、焼き芋を一緒にすれば良いのではないかと考え、小学校の「親父の会」の皆さんをお誘いした。協力できるイベントをコロナ禍でも少しずつでも実施して、信頼関係をつくっていくのが大事かと思う。
数年前に事業検討委員会が立ち上がり、そもそも恒例の町会イベントが必要なのかということを検討した。おかげで、役員の皆さんと、他の町会員との信頼関係ができた。検討委員会の結果として、他のこともやってみようという機運ができて組織部が立ち上がり、自分もそのメンバーに参加することになった経緯がある。その中でも、町会に入りたいと思ってもらう広報の仕方など、検討が始まった。
質問: 役員の熱意やモチベーションを向上させる方法はありますか。
むつみ台: 地域に住む以上は仲良くやっていきたい。特に団地というのは人との距離がとても近いので、仲良くできるに越したことはない。事務局長になり、自治会活動全体が見えることによって、生きがいにもなってきている。人間関係をしっかりと結べば、若い人が入ってこないといったところも緩和できるのではないかと思う。
また、団地の中で課題解決をしようという意識があったが、プロボノチームは違った視点から色々な意見を出してくれた。団地だけの問題というより、地域を挙げて色々な人の意識も受け入れて、活動を推進するのは大事だと思った。
質問: 住民の方、役員の方へ提案するとき、ご理解いただくための工夫・仕組みがあれば教えてください。
プロボノ長谷川: 提示する時、イメージしやすいものを第一に考えた。他の町会で実施している内容で参考にできるものはないか、というところから考え始めた。また、むつみ台団地のある練馬区で今何をしているのか、何が使えるのかといったところをうまく利用する提案も念頭に置いた。
プロボノ小山: 今回の提案では、どれだけ町会が求められているかという裏付けが必要だと思い、いかに地元の声を集めるかに重きを置いてプロジェクトを進めた。数は膨大になってしまうが、約25施設分2000部の依頼文を用意した。町会の皆さんが配布する際にはプロボノメンバーも加わって施設に事前依頼の電話をし、お約束してから持って行くなど、活動に対しても真摯に丁寧にすることを心がけた。
春日町: 町会に寄せられる実際の声はどのようなことなのか確認していかないと思い違いもあるかもしれない。直接地元に住んでいる方の声を聞く過程がエンゲージメントになるというプロセスが良かった。数字データが出てきたことも、今後町会の中で様々な提案をするにあたり、役に立つものになっていると思う。
【クロージング】
次年度の本事業における支援については、町会・自治会の皆さんに2022年4月以降のご案内となることをお伝えし、3時間のイベントを締めくくりました。