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「社会貢献×越境経験」だからこそ得られる本業に活きる学び

 

サービスグラントのプロボノの現場から得たノウハウを基に開発した「社会課題解決型人材育成プログラム プロボノリーグ」。2019年度のプログラムに参加された、株式会社エル・ティー・エスにお勤めの池田愛子さん、上田和輝さんは、業務改善のコンサルタントとして活躍されています。実際に参加されたお二人に「社会貢献×越境経験」だからこそ得られる本業に活きる学びについて、お話をお伺いしました。また、組織人財開発部執行役員の山本行道さんには、企業として社会貢献活動を大切にされる想いや率先して活動することで得られる企業へのベネフィットをお話しいただきました。

 

目次

プロボノリーグの魅力(1)異業種でチャレンジするリアルな社会課題の解決
プロボノリーグの魅力(2)ソーシャルセクターへの越境から得られる学び
プロボノリーグの魅力(3)ビジネスの現場で生かせる異業種プロジェクトの実践経験
人事担当執行役員が語る「社会貢献が本業にもたらすベネフィット」とは

 

 

 

プロボノリーグの魅力(1)異業種でチャレンジするリアルな社会課題の解決

 

――エル・ティー・エスでは、プロボノリーグは公募制だったとお聞きしました。お二人がプロボノリーグに手を挙げてくださった背景を教えてください。

 

池田(以下敬称略):学生時代に海外ボランティアを行う団体で活動していたこともあり、元々、プロボノにはとても興味がありましたが、少しハードルを高く感じてなかなか参加出来ませんでした。会社からプロボノリーグの案内があったとき、会社が後押ししてくれるプログラムだったらチャレンジしやすそう、と思いました。また、プロボノリーグは、目の前にNPOの方がいらっしゃるので、直接的に何か働き掛けができるリアルさに魅力を感じました。あと個人的な関心として、今後弊社のCSVとしてもう少し何かできることはないのかと思っていたので、プログラムの参加を通してCSVについて深く考えるきっかけにしたいとも思っていました。

 

上田(以下敬称略):私もプロボノ自体に元々興味がありました。自立してビジネスができる若手を増やすことを目的とした活動を毎週末個人的に行っていたことが背景にあります。その活動をする中で、せっかく仕事以外の時間を使って何かしようとするのであれば、もっと人の役に立っていると思えることをやりたいと思い、探しているときにプロボノという言葉を知りました。プロボノリーグには、社会問題に対して直接的に関わって、しっかりプロジェクトが出来るという点に期待がありました。

 

――しっかりプロジェクトが出来る点にどのような期待があったのでしょうか?

 

上田:本業ではずっとプロジェクトワークをしていますが、ちょうど自分のキャリアとして、プロジェクトのメンバーとして手を動かすところから、プロジェクトのマネジメントをしていきたい、していかないといけない時期でした。プロジェクトを前に進めていくノウハウや考え方、知識はある程度勉強させて貰っていますが、やはり経験が必要だと今はすごく感じています。プロボノリーグでの、自分から前に出てプロジェクトを進めることができる機会は、貴重ないい経験になると思いました。

また、プロボノリーグは異業種チームで取り組むという点も魅力的でした。週末に参加している自主的な活動は、社外活動であるものの、同じ興味関心がある人が集まるため同質の人達が多く、自分とは異なる考え方の人たちと何か取り組んでみたいと思っていたんです。

 

池田:私も異業種プログラムである点には魅力を感じていました。これまで社内での部署異動や業種の異なるお客様のプロジェクトを経験しましたが、あくまでも同じ会社のメンバーでチームを組成するため、今の自分のスキルが一般社会では、どのように通用するのか気になっていました。これまでの経験を汎用的なスキルとして向上させていく上で、社外の異業種の方々と一緒に活動出来るのはとても貴重な機会だと考え応募しました。

 

 

プロボノリーグの魅力(2)ソーシャルセクターへの越境から得られる学び

 

――実際にプログラムに参加した1カ月を振り返って、どんな学びがありましたか?

 

上田:出会った人たちと自分とのギャップからの学びが大きかったです。特に支援先のNPOには、あんなに人当たりのいい人たちがいるんだということに驚かされました。チームで仕事を進める上で、一緒に仕事がしやすいかというのはとても重要で、支援先のNPOの話やすさやコミュニケーションの取り方には大きな学びがありました。なので、プロボノリーグで学んだ人との接し方や仕事の進め方を、少しずつ仕事に取り入れようと思っています。これまではカチカチにプロジェクトを進めていましたが、もう少しざっくばらんに、まずはみんなで喋ってみてから決めよう、というようなスタイルにチャレンジしようと思っています。道のりは長くいつまでにできるのかは、まだ分からないですが、自分もそこを目指していきたいなと思っています。

 

池田:これまで企業に対するコンサルタントとして仕事をしてきましたが、NPOに対する提案となった時に何が違うのか、感覚的にですが、分かってきたと思います。企業に対するコンサルティングでは、時間をかけて課題を深堀し、施策の提案を求められることが多いですが、NPOは問題が山積みでリソースも限られているので、短時間で、本質的、かつ、即効性のある提案が求められていると感じました。お金などリソースを掛けられず、出来ることも限られている、そのような現場で成果が求められる改善提案は、本当に手腕が問われると感じ、企業と社会課題に直面しているNPOとでは、求められている質にすごく大きな違いがあると学びました。

 

また、これまで表面的な受け止め方しかできていなかった社会課題に対して、プロボノリーグに参加したことで、「この課題だったらこんなサポート方法があるかもしれない、こんな連携ができるかもしれない」と、もう一歩踏み込んで具体的に考えるようになったことが大きな変化だったなと思います。

 

上田:もう1つ、NPOの方と直接関わりながら支援させていただいたことで、社会感度という点ではもう圧倒的に変わったなと思います。支援先のNPOの活動に関連する内容がニュースで取り上げられていると、やっぱり手が止まって見てしまいます。やっぱりそういうことがあるんだ、とか、こういう団体がこんな活動してるんだ、とか、意識が向くようになり、ここはもう間違いなく大きく変わったなと思いますね。

 

 

プロボノリーグの魅力(3)ビジネスの現場で生かせる異業種プロジェクトの実践経験

 

――プロボノリーグへの期待として、異業種研修である点も挙げられていました。他社のメンバーとのプロジェクト経験はいかがでしたか?

 

池田:異業種のメンバーなのでコミュニケーションのスタイルの違いもありますし、最初のチームを作っていくところは本当に混沌としていました。そこから少しずつタスクとかに落ちてくると、メンバーがそれぞれバリューを発揮しながらできることをやって、誰かがタスクを振らなくてもほとんど機能するようなチームになっていきました。正直、最初は大丈夫かな?と思っていたんですが、チームが本当に1カ月で機能することを体感できたことは、凄くいい経験だったと思います。

 

――これが決定的に何かを変えたと、1つ挙げるというのは難しいと思いますが、チームビルディングをしていくにあたって、何が良かったと思いますか?

 

池田:お互いにちょっと褒めたり、「ありがとう」といった言葉がけを意識することによって、自分も何かできるんだとメンバーそれぞれが思えた、自分はこういう貢献の仕方だったらできそう、というメンバーそれぞれの前向きな気持ちに結びついて、行動が変わっていったのかなと思います。本業ではプロジェクトに参加する際に新しいメンバーと一緒になることも多いのですが、自分の得意なこと、苦手なことを自分自身でどう思っているのか、ざっくばらんにお互いに話をした上でプロジェクトを進めるとお互いに仕事を振りやすいことを学んだので、このアプローチを本業でも最初のチームを作っていく過程で実践したいと思っています。

 

――上田さんは、異業種メンバーとのプロジェクトワークを経験してみて、いかがでしたか?

 

上田:他社の方々とプロジェクトチームを組むことによって、自分の得意なこととあまりできていないことの新しい発見があったと思います。社内には同質のスキルセットを持つ人が多いので、今まで気付いてなかったことを知りました。チームの中に営業の方がいらしたんですが、本業では、営業の人と普段一緒に仕事をすることがなかったんです。プロジェクトを進めていく中で、その営業の方の推進力に圧倒されました。自分としては、仕事でいつも使っている型やフレームみたいなものを使いながら進めようとしたんですが、その方は全く違う進め方やコミュニケーションの取り方をしていました。結果、曖昧な状況の中でも、周りのチームメンバーやNPOの方たちを引き込んでちゃんと前に進められるこういうスタイルって存在するんだという驚きと学びがありました。

 

――何かプロジェクトを進める上で難しかった点はありましたか?

 

池田:チームの中で二回ぐらい衝突がありました。プロジェクトがスタートして少し動いたころ、やろうとしていたアプローチでは効果が低いのではないかかという話になった際に、スコープをもう少し広げる可能性について提案をしたんですね。しかし、メンバーによっては、提案したスコープを無理に広げた結果、施策をやり切れなかったという結果は避けたい、と話すメンバーもいました。私としては、できることならスコープを広げたいけれど、今この話をしても平行線になってしまい折り合いも付かないので、実際に動いてみた結果、うまくいきそうという確証が得られた段階で再度提案をし、同意を得るようにしました。相手は何を懸念していて、どうすれば前に進められるのか、異業種プログラムだからこそ、特に相手の立場に立って行動で示す重要性も感じました。

 

――普段からそのような仕事の仕方をされているんですか?

 

池田:いえ、そういう風に考えることはありますが、やはり本業ですと明確に上下関係が決まっていたり、マネージャーがいて、最終的には決断する人がいるので、そのような決断をすることは稀です。そういう意味でも、プロボノリーグはチームメンバーの関係性がフラットだからこそ、プロジェクトの方針設定やスコープの設定、成果物イメージの提案など、通常マネージャーが担う役割を誰かが担う必要があり、自分は思い切ってそれを挑戦できたことで、本業でも視座を高めることが出来ました。

 

 

 

 

――エル・ティー・エスでは、社内報告会を開催したとお聞きしましたが、どのような報告会でしたか?

 

上田:業務時間外に2時間程度の報告会を開催しました。プロボノリーグで自分たちが経験したことを共有したり、プロボノってこういう活動で、今後会社として、社会貢献のためにどんな活動に取り組んでいきたいかといった話をしました。弊社のミッションは「人の持っている可能性を信じ、その可能性を十分に発揮できるように支援することで自由で生き生きとした人間社会を実現する」です。その言葉からも分かるとおり、NPOやボランティアの精神に満ちている、そういうマインドがある人が多くいるので、報告会の中でもディスカッションが盛り上がりました。

 

池田:私は、プロボノリーグ参加前プロボノにチャレンジすることに二の足を踏んでいた経験から、普段の業務経験がどのようにプロボノに生かせるのか、アドバンテージになるのかといった話をして、ぜひ挑戦してくださいというエールを送りました。プロボノリーグに参加してみて、企業として社会課題に取り組むNPOやNGOなどの団体への支援を行うことに意義を感じ、社会感度の高い人材を輩出することはこれからの企業責任とも感じたので、こういった社内報告会で共有できてよかったなと思います。

 

 

人事担当執行役員が語る「社会貢献が本業にもたらすベネフィット」とは

 

 

――ここからは、組織人財開発部執行役員の山本さんにもお話をお伺いします。社会貢献に関心が高い社員が多くいらっしゃるようですが、社会貢献に関心が高い方が集まるというのは、貴社のビジネスにとってどのようなベネフィットがあるのでしょうか。

山本(以下敬称略):社会貢献意欲の高い社員が集まることによるベネフィットは、主に3つあると考えています。

 

一つ目は、弊社のビジネスの中心であるコンサルティングのサービス・コンセプトは、「チェンジ・エージェント」です。クライアント企業の中長期での成長の伴走者として、多くの人の意識や行動の変化を促します。そのために必要な地道な作業やコミュニケーションを厭わない、弊社の特徴的なワークスタイルを根底で支えているのは、社員の社会貢献意識ではないかと考えています。

 

二つ目は、弊社はコンサルティング以外にも、社会課題や業界課題を解決するビジネスを自分たちで創って運営していく、という事業を展開しています。B2Bの世界では、今までクライアント企業のとらえる社会課題が事業のシーズだったのですが、企業活動と社会活動の境目が溶けていっている現在、新規事業のシーズは、むしろ弊社がとらえる社会課題側にあることが増えてきています。社員がひろく社会課題に興味関心を持ち、情報に触れたり、一時的にせよ社会課題の現場に身を置く、こうした機会を与えることは、これらの新しい事業を創っていくうえで、会社として大切な投資であると考えています。

 

そして三つ目は、社会貢献意欲の高さは、利他性と共感性を伴うので、社員間で基本的な価値観とコミュニケーションスタイルを共有できているため、自然とチームワークがうまくいきます。これはほぼカルチャーと言っていいので、組織運営に効率も効果ももたらしてくれています。

 

――プロボノリーグが、貴社社員がミッションをより深く理解する、エンゲージメントが高まるといった機会になったでしょうか。また、貴社にとって、プロボノリーグはどのような価値があったと思われますか。

山本:弊社としては、先ほど申し上げた新規事業を推進するにあたり「Social Enterpriseへの進化」ということをテーマとして掲げ、今回プロボノリーグに参加させていただいたのは、まさにこの文脈によります。

 

プロボノリーグに参加した3名には社内で成果報告会を開いてもらったのですが、多くの社員が話を聞きに集まりました。3名とも、「LTSのミッションのために、社会課題に取り組むNPOやNGOなどへの支援を行うことに意義がある」と話していました。さらには、「社会感度の高い人財を輩出することはこれからの企業責任である」とまで踏み込んで提言していたので、社会における企業の存在意義とその企業の中で自分たちが働く意味、この両者をとらえ直すよい機会になったのではないかと感じています。

 

弊社のミッションには、自分の周囲の人が幸福であるという社会の共通善の実現に向けて、社員やお客様など大切な人々の、将来に向けた変化と成長の“可能性を解き放ちたい”という決意が込められています。プロボノリーグを通じて、支援先のNPOの方々、ひいてはその先のステークホルダーの方々のhappyに少しでも関わることができる、そしてそれが、社会人としての自分の喜びであると実感する。これだけでも十分にステキな体験だと思います。そのうえで、自社や自分の仕事を再発見するところまでできたら、それは望外の喜びです。

 

 


 

インタビューにご協力いただいた方

  • 池田 愛子さん

大学卒業後、新卒で株式会社エル・ティー・エスに入社。ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)の導入やシェアードサービス化の推進等、業務改善・ビジネスプロセス変革案件を中心に担当。

  • 上田 和輝さん

大学卒業後、新卒で株式会社エル・ティー・エスに入社。業務分析、システム導入などの案件にシニアコンサルタントやPMOとして参画。多角的に業務を分析、評価してシステム化やBPOセンターへの切り出し等のソリューションの提案、実装支援をしている。

  • 山本 行道さん

大学卒業後、IT企業を経て株式会社エル・ティー・エスに入社。各種コンサルティング案件や海外事業に携わる傍ら、執行役員として自社の人材マネジメントプロセスを担当。社外ではキャリアカウンセラーや大学非常勤講師も務め、2018年よりはプロボノワーカーとしての活動も開始。