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【開催レポート】
町会・自治会NEXT
外にひらく、未来の町会・自治会活動

【目次】

開催概要|地域の課題解決プロボノプロジェクト2023年度 成果報告会

オープニングトーク「地域の未来に備えるために、町会・自治会に求められる視野と進化」
ゲスト:川北 秀人氏 IIHOE [人と組織と地球のための国際研究所]代表者兼 「ソシオ・マネジメント」編集発行人

事例紹介:各町会・自治会の課題解決に「実践講座」「個別支援」で取り組んだ団体による成果報告
鷺宮四丁目町会(中野区)「地域の情報発信応援プロジェクト・LINE活用
東元町一丁目自治会(国分寺市)「会長、役員の業務を棚卸&効率化。新たな担い手の入口を提案!
谷河内南町会(江戸川区)「地域の公園の在り方・活用策を考えるための住民意識調査

ゲストトーク・質疑応答:登壇者全員によるパネルトーク

 

【開催概要|地域の課題解決プロボノプロジェクト2023年度 成果報告会】

 

  • 日時:2024(令和6)年3月2日(土)14時00分~16時00分
  • 会場:新宿NSビル 30階スカイカンファレンス ホールA

 

コロナ禍での活動休止などを経て、新たな活動再開年となった2023年度。住民の意識を改めて知りたい、新しいことに挑戦する土台をつくりたいと課題感を持った町会・自治会の皆さんが、今年度のプロボノプロジェクトにご参加くださいました。本イベントは、この内容や成果について、他の町会・自治会の方々に向けて広く発表する「成果報告会」です。

オープニングトークでは「地域の未来に備えるために、町会・自治会に求められる視野と進化」と題して川北秀人氏をお招きしました。プロジェクトに参加した町会・自治会の皆さんとプロボノワーカーの皆さんからの事例紹介、登壇者全員でのゲストトーク・質疑応答での対談もまじえ、活動を外にひらくヒントや、新たな担い手も関われるヒントなど、次世代の町会・自治会の姿を考える場となりました。

当日は、町会・自治会所属の方々を中心に、まちづくりや町会・自治会の活動に関心を持つプロボノワーカーはじめ企業・団体・個人の方等、多様な背景を持った72名の方にご参加いただきました。

 

【オープニングトーク】
「地域の未来に備えるために、町会・自治会に求められる視野と進化」

 

ゲスト:川北 秀人氏 IIHOE [人と組織と地球のための国際研究所]代表者 兼 「ソシオ・マネジメント」編集発行人

 

町会・自治会の担い手がいないのはなぜか?

2006年頃から、人口増加の一途だった東京でもボランティアが集まらなくなりました。広報の講座をしても集まらない。何か起きているに違いないと調べてみることにしました。

過疎や高齢化は島根県や秋田県などで始まりました。過疎や高齢化の先進地域と言われる島根県の人口がピークだったのは昭和25年。1950年から人口減少が始まっています。

人口減少に適応する地域づくりを、70年以上東京よりも先駆けている地域でボランティアの人がいないのはわかります。では人口が増えている東京ではなぜなのか?

東京と島根で同時進行していることは小家族化です。NHKの「今日の料理」が始まって66年経ちますが、番組が始まった時、料理は5人分を目安に作っていました。それでも少ないという声が番組に寄せられたそうです。昭和30年代では、子供3人と祖父母を合わせた7人家族が標準でした。その後、核家族化が進み、ニュータウンでは子供2人の4人世帯が長く標準世帯と言われ、テレビも冷蔵庫もマンションのサイズも4人暮らしを標準においていました。しかしそれは2005年までです。

 

2020年の国勢調査では、38%が一人世帯です。東京はさらに率が高いので、町会・自治会の活動が大変なのです。町会・自治会の仕組みの完成度が高まったのは昭和10年代です。戦争に備えて体制づくりをしようと町内・自治会づくりが全国各地に広がりましたが、当時は個人単位ではなく世帯単位で加入していました。小家族化が進むと世帯人口が減り、おばあちゃんの一人暮らしが増える。若者が自治会に入らないという話は昔からありますが、一人暮らしの人が自治会を辞めるという話が広がっています。なぜか?一人暮らしだからです。会費、役割を一人で負担しなければいけない。暮らし方が変わったら地域の担い方も変えなければいけないのに、昭和モードのまま進めている感じです。

 

担い手の不足に、どう対応していけばいいのか?

去年の今頃、岐阜県中津川市の自治会連合会の会合にお呼びいただいた時のお話です。

中津川市では人口が増えています。リニアモーターカーの駅ができるからです。それなのに、役員のなり手がいないと自治会長が困っていました。地域の高齢化が進んで、引き受けてくれる人がいなくなったので子どもに関連する活動も難しいと。人口が増えていようが減っていようが、町会・自治会が困っていることは一緒でした。人口が減っているから、あるいは若者が減ったから地域づくりが難しくなったのではなく、暮らし方と地域づくりの担い方がずれてきて、地域づくりをアップデートしないといけない状況になっています。

秋田や島根の中でも地域づくりが進んでいる、力があるなと感じるところがあります。見ていて感じるのは、まちの力は人口密度ではなく、人の交わり密度=人「交」密度が支えていると思うのです。

 

「まちづくり」はなぜ平仮名かというと、町=区域を指しています。街は、商店街の建物。ひらがなの「まち」は人と人との関係の豊かさを示す言葉だそうです。この言葉の使い分けは江戸時代頃から行われているようで、平仮名でまちづくりを使う場合には、交流を活発にしていくため。交流こそが地域を支える基盤だからと昔から人は知っていました。

人が増え続けている間には、地域のお祭りや盆踊りのような行事や、地域清掃など交わる機会を作ってきましたが、一人暮らしが増えると、一人世帯の見守りやものを届けるような支えあいが大切になってきます。

東京も、活性化よりも支えあいに力点を置いた地域づくりを始めていく時期になってきているのです。自治は、自分たちで決めて自分たちで担うことですが、担うことはできても、決める力が弱い自治会がたくさんあります。

 

日本の自治会長は2つの方法で決まっています。1つは単純輪番制。今年1班、来年2班と各班の班長が順繰りに回るところは自治会長の女性比率が高くなります。世帯の比率に応じて班長が任命されて、自動的に自治会長になるからです。輪番制の場合の平均任期は1-2年で自動的に交代し、最大のメリットは平等性です。最大のデメリットは誰も新しいことをしようとしない、昭和のままであることです。

もう1つの方法は、自薦他薦問わない選任制です。選ばれた会長の平均任期は8年。都心部ではもっと長く、10年~12年というケースもよくあります。ブラックボックス化と呼んでいますが、その人が悪いわけではなく、周りが育つまでに時間が足りないか工夫が足りないかのどちらかで、結局長期政権になってしまって代わりがいない事態になります。日本の町会・自治会は、人を育てる仕組みがないことが最大の問題だということがわかりました。

静岡市の例では、自治会長の参謀役を育成する講座=地域デザインカレッジというものに取り組んでいます。自治会長の後継者養成講座をします、という伝え方でなく、自治会のお手伝いをどうするのかという講座をやっています。

 

なぜ、東京が地域を開いていかなければいけないか

今までとこれからは決定的に違います。東京も二つの高齢化が同時に進行しています。人とインフラ箱物の高齢化です。高齢化を定義したのは国連とWHOで1956年です。60歳以上の人口7%以上が高齢化社会、14%が高齢社会、21%は超高齢社会、ということは、28%は超超高齢社会となります。

日本が7%を超えて高齢社会になったのは1970年から。前回の大阪万博ですでに7%を超えていて、日本は高齢化社会に突入して50年が過ぎています。

今までの高齢化とこれからの高齢化の質が違うのは、横軸2005年から2030年、縦軸に65歳以上、5歳区切りでみていくと、2005年の740万人、820万、 960万人と2015年まで増えてきていますが、ここから先、800万、700万と高齢者が減り始める年齢層が出てきたんです。減ると何が問題かというと、2020年で0.9%、65-69歳のうち要介護3以上の方の比率を示します。70-74歳で1.9%。つまり、65-74歳までの前期高齢者の内、要介護3以上は70人に1人。この元気高齢者の層が民生委員や自治会長の主力です。ですが、2000年からその層が減り始めていて、困ったことに2025年から70歳定年延長制が始まります。前期高齢者の地域デビューが遅れるのです。

 

厚生労働省の調査では70-74歳で週3日以上、お金をもらえる仕事につきたい人の比率が5割を超えました。今年の1月時点で、65-69歳で働いている人がもう4割を超えました。つまり、町内会長、自治会長のなり手のボリュームゾーンが減っていく事態に直面しています。

 

町会・自治会は何のためにあるのか?

沖縄県那覇市の真地町では、400世帯が住む市営住宅で、駐車場が足りないため車両部を作って、自治会長の名前で車一台を購入し、みんなでカーシェアリングする取り組みを1990年代から行っています。

2011年当時は、第1次福祉計画に沿って、上の階の若者が下の階のおじいちゃんに月2回、元気ですか?と訪問確認してください、という見守りをしていたそうです。ところが見守りを担当してくれる若者は、「担当のおじいさんはいつも元気だとわかっているのに、ポストに新聞が溜まっているかを確認するのは、見守りではなく見張りをしているようで心苦しい」と。そこで、ふれあいデイサービスというサロンを集会場で開催するようになりました。その次に始めたのが百金食堂です。

団地の集会所を使って、100円を出し合ってみんなで食事をすることには行政が反対しましたが、自治会が強行して開催したのには理由がありました。団地には生活困窮者の一人暮らしが多く、昔から孤独死が出ていたからです。夏の暑い時期に買い物も億劫となってくると住民の方々の外出のきっかけを作ることが大事なので、リスクを取るのは自分たちということで始めたそうです。毎週木・金・土曜、お盆とお正月だけお休みで、年間150回も開いています。「年間150回も活動をして盆踊りはどうしているのか?」と会長に聞くと、「盆踊りはやりたい人が実行委員会を作ってやって貰えばいい。自治会は、命と暮らしを守る本分に戻るんだ」とおっしゃったのです。そうだよな、と納得しました。

町会・自治会は何のためにできたのか?命と暮らしを守るためです。その為に親睦を深めるという手段があったはずなのに、いつの間にか、手段に追われる活動になってしまったことに問題があります。まずは地域の現状をしっかり確認すること。そして次にするべきことは賑わいの創出などの前に、地域の人たち同士がお互いの命と暮らしを守れるような関係と環境を作っていくための取り組みです。

【事例紹介】登壇団体とプロボノワーカーによるパネルトーク

 

2024年度のプロボノプロジェクトは「実践講座」「個別支援」の2種を実施しました。

「実践講座」は、事務局が開催する複数回の集合型講座への参加を通じて、プロボノワーカーのサポートを得ながら、町会・自治会の方ご自身が手を動かして、成果物を作成しました。本年度の実践講座は、インターネットを通じた情報発信に取り組みたいという町会・自治会の方々を対象とし、ホームページ作成・LINE活用に取り組む講座に、12の町会・自治会が参加しました。

「個別支援」は、「実践講座」で取り扱う以外のテーマについて、支援先となる町会・自治会ごとに、プロボノワーカーが5名前後のチームを結成して支援に取り組むプログラムです。運営を改善したい、参加の輪を広げたい、活動を刷新したい、といった、それぞれの町会・自治会が持つ課題に対し、解決に向かうような具体的な成果物を作成していきました。本年度の個別支援には、6つの町会・自治会が参加しました。

今回の事例紹介では、実践講座・個別支援にて支援を受けた3つの町会・自治会と、成果物の作成をサポートしたプロボノワーカーにお話いただきました。

 

地域の情報発信応援プロジェクト・LINE活用(実践講座)

鷺宮四丁目町会(中野区) 塩原 香氏、斉藤 百合氏

プロボノワーカー 吉田 健太氏   

 

会長、役員の業務を棚卸&効率化。新たな担い手の入口を提案!(個別支援)

東元町一丁目自治会(国分寺市) 石井 一雄氏

プロボノワーカー 塚本 佐保子氏

 

地域の公園の在り方・活用策を考えるための住民意識調査(個別支援)

谷河内南町会(江戸川区) 石井 修一氏、原田 仁氏

プロボノワーカー 前田 崇行氏    

 


 

【トーク内容/地域の情報発信応援プロジェクト・LINE活用(実践講座)】

 

※以下、鷺宮=鷺宮四丁目町会 塩原氏、斉藤氏、プロボノ吉田氏=プロボノワーカー吉田氏、●=事務局(進行役)

 

  • 制作されたLINE公式アカウントのご紹介をお願いします。

鷺宮(塩原氏):こだわったのは、プロフィール画面を掲示板にいつも貼ってあるものと同じにして、ひと目で四丁目町会とわかるようにした点です。若い方から高齢の方まで見るので、リッチメニューを取り入れ、シンプルでわかりやすいことを心がけました。タップしてほしい、四丁目町会の情報に電気マークを入れて「見てね」とアピールするように作りました。会則は、なかなか皆さんの目がいかない所なので、常時、会則を誰でも確認できるようにしました。パソコンに不慣れで、パソコンに向き合う時間が一番苦労しました。スマホにアプリを入れて、スマホで作業できるようにしました。

 

  • 実践講座に参加しようと思った理由を教えてください。

鷺宮(塩原氏):町会長交代のタイミングで、町会員にアンケートを取りました。掲示板以外でも情報を発信してほしいという声があり、4人チームを作って、ゆっくり相談しながら進めましょうということになったのですが、どんな手順で何のツールを使って良いかわからずに調べていた時に、プロボノプロジェクトを知って、相談会に参加させてもらいました。何から始めて良いのかわからないのであれば、講座に参加して進める方がスマートにできるのではないかと思って参加しました。

 

プロボノ吉田氏:普段生活する中で、まちでの交流があまりないなと感じていました。自分は30代ですが、小さい頃は地域のおじさん、お兄さんお姉さんが面倒を見てくれた記憶があって、そういうまちのあり方はメンタル的にも健全だと感じていました。ヘルスケアのマーケティングやコミュニケーションの仕事をしているので、スキルや培ったもので、まちのコミュニケーションをもっと活発にできないかなと思い、参加しました。

 

  • 実践講座のどんなことが役立ちましたか?

鷺宮(塩原氏):いきなり作成に入るのではなく、目的や目標、町会員へのヒアリングを通じて状況を整理する時間を作っていただいて、それを踏まえて、公式LINEのアカウント作成に入り、手順を示してくださったので無駄なく進めることができました。プロボノワーカー吉田さんの助言をもらいながら、一つ一つ確認をして安心して進められました。普段はパソコンと向き合うことがなく不安でしたが、聞ける、相談できるという環境があり楽しい時間を過ごすことができました。

 

  • 町会の皆さんと一緒に取り組んでみていかがでしたか?

プロボノ吉田氏:楽しかったです。皆さんのお話を伺っていて痛感したのが、アンケートを取られていた中で、地域住民の方と町会との心理的距離感があると感じたことです。僕も町会に入っていますが、心理的に住民側としても距離を感じているところがあります。実践講座では、大きな課題感がある中でも町会の皆さんが前向きに取り組まれているのを見て、まずは、中の人が楽しむことが大事な気がしました。参加をして楽しむことが、距離感を埋めるヒントになるのではないかなと学びました。

 

  • LINE公式アカウントについて、町会内外からの反応があれば教えてください

鷺宮(斎藤氏):実際にLINE公式アカウントを立ち上げて、今は役員と班長だけの登録というところから始めています。町会の情報はこれまで回覧や掲示板しかなく、自分でメモを取らなければいけなかったのですが、出先からでもスマホで確認できるようになって助かりました。区民活動センターのURLも貼ってあるので、「すぐにリンクで確認できるようになってとても便利になった」というお声をもらって嬉しく思っているところです。

 

  • 今後のお取り組み予定を教えてください。

鷺宮(斎藤氏):今は練習を兼ねて班長と役員のみの登録になっていて、これから何の情報をどのようにアップしていくのかを試行錯誤しながら、しばらく続けていこうと思っています。ご高齢の方にとっても自宅で携帯電話を見ることで外に繋がれると思います。外出しにくい方にも便利なツールではありますが、操作が得意でない方も多いので、町会としてはスマホ相談会を定期的に開催していきたいと思っています。そして、若い方にも町会の情報が役に立つことを知ってもらえるように、月1回程度は更新していきたいと思っています。580世帯あるうち、200世帯の参加を目標に、もっともっと参加してもらえたらと思っています。

いかに顔の見える繋がりを作っていくかが町会の強みになると思います。ツールを使ってたくさんの方につながってもらって、見守り、支えあい、災害時のつながりを強くしていきたいです。何より活動している私たち4人も、楽しみながら取り組んでいきたいです。

 

 


 

【トーク内容/会長、役員の業務を棚卸&効率化。新たな担い手の入口を提案!(個別支援)】

 

※以下、東元町=東元町一丁目自治会 石井氏、プロボノ塚本氏=プロボノワーカー塚本氏、●=事務局(進行役)

 

  • プロボノ支援を受けようと思った理由/自治会のプロジェクトを選んだ理由を教えてください。

東元町:役員のなり手がいない、少ないということが理由の1つです。この3年間、コロナの影響で全ての行事が中止となり、人事の硬直化に陥ってしまいました。自治会としてなんとか次の世代を育てなければいけないと危機意識はあるものの、内側だけでやっていても対応策に限界があり、第三者的な観点から分析や棚卸しを行う方がいいのではと考えてプロボノにお願いすることになりました。

 

プロボノ塚本氏:もともと地域に興味がありました。大学時代は地域行政学科というところで学び、地域で活動している人の話を聞く機会もありました。また、市民オーケストラで楽器を演奏していて、地域活動も身近です。市役所の職員をしており、今は育休中のため、この期間に地域に行って、行政側として何ができるのか考える機会があったらいいなと思って参加しました。

 

  • プロジェクトはどんな風に進めていきましたか?

プロボノ塚本氏:2023年の10月に始まりました。初めに自治会とプロボノメンバーでZoomでミーティングを実施し、プロジェクトのゴールなどを話し合いました。そこで出たのが、組長から役員に上がってくださる方が少ないので、そのために業務の棚卸しをしようという話になりました。役員さんにヒアリングをさせていただいて、その結果をまとめて中間報告会で発表しました。ヒアリングでわかったことは、組長さんは女性だったりご家庭が忙しくて、なかなか役員に上がっていける感じではない。それであれば、組長さんからではなく、幅広く、自治会の会員の中から役員として関わってくれる人や、役員というハードルを感じないようまずはスタッフとして自治会の活動に関わってくれる方を募ろうとなり、募集するためのチラシを作成しました。12月中旬の最終報告会で自治会の方に見ていただいて、修正の後に納品しました。

 

  • 成果物の紹介をお願いします。

プロボノ塚本氏:プロボノチームでフォーマットと質問事項を予め用意して、Zoomでひとり1時間ずつくらい8名の役員さんと組長さんにヒアリングをさせていただき、その結果をまとめて中間報告会で共有しました。幅広く関わってくれる人を探すためのチラシを、プロボノチームで表面と裏面チームに分かれて作成しました。表面は参加するメリットや参加者の声を書いて、自治会に関わることでこういう風になれるんだよ、と、役員になった後の姿を想像しやすくしました。裏面は自治会の活動をひとめでわかるように作りました。Canvaというデザインツールを使って、デザインが得意なメンバーが作成してくれました。

 

  • 成果物やプロジェクトについてご感想をお聞かせください。

東元町: 6名の本部役員、10名の地区長がいますが、地区長のヒアリングをしてもらった時に「きちんとした指示が欠如しているのではないか」という意見が出ました。こちらにそのつもりがなくても、そのように受け取られていたのかという気づきがありました。また、プロジェクトはZoomによる会議が印象的で、慣れない人もいて、結局Zoomを使えずにLINEを使った時もあり、大変だったこともありました。それでも本部地区長、役員の業務量が改めて可視化できたことで、プロボノの皆さんには感謝しています。

 

  • プロボノワーカー/自治会の皆さんと一緒に取り組んでみていかがでしたか?

東元町:プロボノの皆さんとご一緒して、完成したチラシは統一感があって柔らかい感じで親しみやすいデザインになりました。私たちが作ると形式的なものになりますが、素晴らしいです。感謝しています。ヒアリングの成果などデータの取りまとめ、チラシの修正にも迅速に対応していただきました。

 

プロボノ塚本氏:自治会の皆さんは素敵な方ばかりで、Zoomでの会議も毎回楽しみでした。自治会活動は大変なこともあると思いますが、皆さんがとても生き生きとしておられたのが印象的です。自分もシニアになった時に皆さんのように地域活動に関わって、生き生きといられたらいいなと思いました。

 

  • 成果物やプロジェクトについて、自治会内外からの反応があれば教えてください

東元町:地区長のヒアリングの中で指示が足りないという意見を受けて、地区長の引き継ぎ書の中身が古くなっておりアップデートしなければという機運が盛り上がり、自発的に本部役員の方がマニュアルを作成してくれています。気運の盛り上がりが一つの大きなステップかと思います。チラシはお正月の餅つき大会や自治会だよりとして全戸に配布しました。まだ反応はありませんが、二度三度と配布して、目にしてもらう機会を増やそうと考えているところです。

 

  • 今後、成果物をどのように活用したいですか?

東元町:業務の棚卸しをしたところ、会長、副会長の仕事量が非常に多いことが可視化できました。地区長は大体2年で交代しますが、本部員が長く後釜が見つからない状況です。今までは地区長の半分が年度で交代、半分継続する形が必然的にとられていましたが、コロナがあり今年は3月で地区長全員が交代という状況に陥ってしまいました。これを逆手にとって、今まで会長、副会長が担っていても地区長にお願いできる業務については、最初から地区長に担当してもらうことで、これまでのしがらみを捨てるいいチャンスかなと捉えています。新体制の中で、棚卸しできていることをうまく使っていきたいなと思います。

 


 

【トーク内容/地域の公園の在り方・活用策を考えるための住民意識調査(個別支援)】

 

※以下、谷河内=谷河内南町会 石井氏、原田氏、プロボノ前田氏=プロボノワーカー前田氏、●=事務局(進行役)

 

  • プロボノ支援を受けようと思った理由/町会のプロジェクトを選んだ理由を教えてください。

谷河内(石井氏):コロナがあって行事が止まってしまったことをきっかけに、地区防災計画を作りました。その中で谷河内みなみ公園を一時(いっとき)集合場所と位置付けました。災害が起これば一時集合場所として公園を使って色々活動をします、と住民にも説明しましたが、どこまで浸透しているかが分かりませんでした。区のコミュニティ係に相談をしたら、プロボノを紹介いただき、お願いしました。

 

プロボノ前田氏:学生時代に建築を勉強していました。当時、阪神・淡路大震災があり、卒業制作にあたってはまちづくりと防災拠点について自分でも考えた時期がありました。公園をテーマに活用方法を考えておられるということで、このプロジェクトに参加してみようと思いました。

 

  • プロジェクトはどんな風に進めていきましたか?

プロボノ前田氏: 2023年10月から2024年2月にかけて、意識調査のアンケート作成、アンケートの配布集計、調査分析、最終提案の4段階を経て進めました。プロボノチームは4名おり、町会さんとプロボノチームで一緒に、協働的な感じで進めてきました。谷河内みなみ公園はそこまで大きくもなく、広場があるだけで遊具もありません。プロボノチームでは、住民6名へのヒアリングと、アンケート作成、結果集計、データ分析考察、活用方針、提案提示、最終提案の時のワークショップのファシリテーションを担当しました。町会の皆さんには、ヒアリング対象の住民選出、アンケート告知、配布回収などを担当いただきました。公園について、何もない、用途がよくわからない公園とのGoogleなどでの評価に対して、町会の皆さんとしては盆踊りや防災訓練など取り組みに活用しているという感触をお持ちで、そのギャップをアンケートで確認したということになります。

 

  • 成果物の紹介をお願いします。

プロボノ前田氏:アンケートの構成としては、公園の認知度、利用状態、現在の公園の評価、防災について、今後どうしたら良いかについて聞きました。全戸配布に対し回答率は32%で、多くの住民の方々の回答をいただけたと思います。評価はGoogleのクチコミとほぼ同じで、総合評価は5段階の内2.9。週1回来訪される方が16%。関心が多く寄せられたのは、公園の草木の手入れや公衆トイレの清潔度など、公園の整備状況へ高い関心をお持ちでした。一時集合場所になっていますが、町会員の3分の1は実はそのことを知らなかったことも判明しました。防災訓練を町会で定期的にされていますが、参加されている方ほど防災意識が高く備えている結果となりました。チームの提案としては、日常に使ってもらうために行きたくなる公園になるにはという整理と、防災訓練の参加率を上げて防災意識を高める2つの提案をしました。

最終提案では、どうしたら公園を日常的に使いたくなるか?どうしたら防災訓練に参加したくなるか?の2つのテーマでワークショップを実施し、アイデアを出しあいました。

 

  • 成果物やプロジェクトについてご感想をお聞かせください。

谷河内(原田氏):想像していた以上の結果が得られました。自分達の考えとは違うことを住民の方々が思っていることがわかりました。全戸に配布するようなアンケート調査は町会が始まって以来でした。驚いたのは、町会に入っていない人からの回答提出があったことです。やり方を考えれば色々と情報を掴めるんだと感じましたし、プロボノチームの方々が本当に一生懸命にやってくださって良いデータを得ることができました。

 

  • プロボノワーカー/町会の皆さんと一緒に取り組んでみていかがでしたか?

谷河内(原田氏):外部の方にお願いしたことで、町会の身内の役員が言うよりも説得力が出ると思いました。プロボノワーカーの皆さんのような専門的な知識をお持ちの方がチームで来てくださったので、ゴールに辿り着くのがすごく早いなと思いました。

 

プロボノ前田氏:私も自分の住んでいるまちで何年か前に自治会長をやったことがありましたが、谷河内南町会は規模も大きく、石井さん、原田さんの熱量も高いと感じていました。その熱い思いに負けないように我々も成果を出さなければいけない、いい意味でのプレッシャーを町会の皆さんからいただいたのが、やりがいのある所でした。

 

  • 成果物やプロジェクトについて、町会内外からの反応があれば教えてください

谷河内(原田氏):成果物自体はまだ役員に共有したところで、具体的にどうするかはこれからという段階ですが、町会に加入していない方からの回答があったことが驚きでした。公園に対する回答のほかに、町会の運営に対してのコメントもいただいたので、大切な宝物だなと思いました。

 

  • 今後、成果物をどのように活用したいですか?

谷河内(石井氏):アンケート結果は、町会員の方にそのまま見せて読んでもらおうと思います。住民の中にこういう意識があることを知ってもらって、町会への要望については今後の活動の中に取り入れたいです。アンケートで寄せられた声に公園でフリーマーケットをしたいという要望があったのですが、もともと町会役員の中でも検討していたことで、後押しをされたので積極的にやってみようかなと思っています。私たちの町会は会館が大きくないので、コロナがあってみんなが集まれないということで、谷河内みなみ公園で総会をやっていました。そうすると色々な人が来てくれます。ですので、私たちはまちの皆さんに情報が伝わっているものだと思っていましたが、このアンケートで違うことがわかったので真摯に受け止めたいなと思っています。

【ゲストトーク・質疑応答】

 

※以下、登壇の皆さん、●=事務局(進行役)

 

  • 3つの事例をここまでお聞きになっていかがですか。

川北氏:鷺宮4丁目町会でのLINE活用の取り組みについて、これから相談会をやっていこうとのことですが、サロンや他の行事を一緒にするとよいかもしれません。“重ねる”とも言いますが、その方が楽だと思います。例えば健康サロンなどを「いつでもLINE相談会」「いつでもスマホ相談会」などとしてよびかけているところもあります。

おすすめしているのは注意報や警報が出たら、LINEで安否確認訓練をしましょうとお伝えしています。この時問題になるのがLINEの名前です。LINE上のニックネームだと誰だか分かりません。安否確認LINEで班名と名前を書いてもらうことが大切です。誰なのかがわかるような自己紹介を訓練でしておけば、役員の皆さんが困らなくなりますね。

 

また、東元町一丁目自治会でチラシを作ったけれど反応がないというお話がありましたが、若い人には役員を引き受けると一生やらないといけないらしいという都市伝説のような、実質そんなイメージが強いのです。そこで「チームメンバー」という名前で役員になる一歩手前の設定をして、役割分担がありつつも忙しくなった時に事情を考慮しますよ、という設定にする案もあります。役員となると役所からずっと連絡が来るのではないかと思われがちですが、そこをもっとライトに見せていくというものです。

今日話題に上がった業務の棚卸しについては、メリットとしていつ忙しいかがわかると業務を一緒にできないかという話ができます。例えば4月5月は総会で忙しくなる時期です。交通安全、PTAなど様々な総会を開きますが、同じ日に同じ場所で時間を変えてできないでしょうか?関わる人の7割は同じ人です。であれば、重ねることができないでしょうか。これが検討できるのが、棚卸しの最大のメリットです。また、8月とても忙しいと思ったら7月と9月に分けて間引く、ということもやってみてください。

重ねる、間引くを体系的に行った結果、どんなことが起こると思いますか?静岡市の事例ですが、会長に仕事が一極集中しているので、年間カレンダーを作って班長でもできること、班長でなくてもできることを分けてみたところ、会長の仕事が4分の1に減りました。勘と経験が頭の中に入っていることを、紙に落として見ることで分担共有が可能になるということがポイントです。

 

谷河内南町会の事例で、公園で総会をやっておられるのはなるほどなと思いました。公園での活動を考える上での参考ですが、奈良県生駒市にはmeguru stationという取り組みがあります。資源ごみ回収を目的としていますが、歩行者天国にして子どもたちが遊べるイベントにしています。お菓子を焼いた人が販売に来たりもします。資源ゴミの回収をネガティブな活動ではなく月に一回楽しみにできる場所にする。例えば、わざと月に一回公園で集めるということにして、イベントと組み合わせると、公園がどういう場所になるかが来た人に伝わりやすくなります。

三重県尾鷲市では年に4回、雨天決行のバーベキュー大会があります。これは炊き出し訓練になっています。災害はいつどういう時間帯に起こるか分からないので、全ての季節に対応できるようにするために、年に4回、住民数の倍の量を調理するそうです。津波があれば沿岸部から逃げ込んでくる方がいるので、受け入れ訓練を兼ねて、毎回倍量のBBQを行う。自治会の会長さんは、「自分たちのことだけでなく、助け合いが地域の基礎」と仰っていました。

こうした取り組みを無理なくやろうとすると、重ねるということが大事になってきます。大阪市淀川区にある東三国という地域は、住んでいる人の95%が5階以上に住んでいるといわれるマンション集積地です。2021年10月、自治会の皆さんはどうしても地域の結束力向上のために避難訓練をやりたいと考えていましたが、まだコロナの影響があり、避難訓練ができないと会場の小学校側に言われたそうです。そこで学校と話し合った結果、選挙の投票日に、未使用の体育館の半分を使わせてもらって段ボールベッドの実装をしたところ、通常の避難訓練の3倍の人が参加したそうです。翌年も、選挙の投票日に訓練を実施。簡易トイレを展示して、数十人が入ってみてカーテンを閉める体験をしたそうです。アンケートを取ると、実際に使うとなると音や光が心配という感想が聞かれました。避難所を本当に開設するような事態になった時、簡易トイレでは心配という実感を住民に体験してもらい、備える意識を持ってもらえたということです。主催者の狙い通りでした。

この避難訓練では、訓練に来られない人がいることも同時に分かりました。東京も同じですが、大阪のような都市圏では三次産業に従事する人が多く、土日仕事で期日前投票をしている人は来られません。そこで若い世代のために、平日の授業参観の日を活用することにしました。空き教室にある備蓄倉庫から物を運んでもらう訓練をしました。これも重ねると言います。

 

今日3つの事例でご発表くださったことは、プロボノの方々が新しい知恵を持ち込んだというよりは、今まで町会・自治会の皆さんができなかったことに少し扉を開いていただいて、次にするべきことが明らかになったことがとても大事だなと思いました。

 

  • 重ねるにあたっては新しい企画を考えるワクワク感がありつつ、またやることが増える感覚もあります。どうしたらよいでしょうか?

川北氏:運動会をやっているところにおすすめしているのは種目を減らすことです。ただ

減らすだけではさみしいですから、毎年行う種目と2年ごとに行う種目を分けるような工夫がおすすめです。それから、お祭りも本当に毎年必要でしょうか?日本の各地では、地域のお祭りを残すためにわざと2年に1回開催にしたり、3年に1回にしたり、地域の負担軽減のためにお祭りの開催に反映しているところもあります。地域の人たちが負担に感じ始めれば、本来のイベントの目的の大半は失われてしまいます。またやりたいよね、という気持ちになれるペースに再設定していくことが間引くということではないでしょうか。

 

  • 間引く=中止ではないということですね。

川北氏:なぜか毎月集まることになっている会議なども、2か月に1回にするなど、まず棚卸しをしっかりやって、重ねられることは重ねて、重ねきれないものはどう間引けるのかを考えていただければと思います。

 

  • 本日、会場でご参加の皆さん、後日視聴でお申込みの皆さんからは沢山のご質問をいただいています。ゲストの皆さんへお伺いしていきます。

質問:住民の方にLINE利用をどうやって広げていったら良いのか?LINEが使えない方への配慮は?集合住宅の方にどうアプローチしていますか?

鷺宮(斎藤氏):私たちの町会ではLINE公式アカウントの運用なので、一方通行の情報発信となります。やり取りができないようにしているので、リスク管理の意味からは、今の私たちの体力にちょうど合っていると思います。毎月班長会があって、班ごとにお当番さんがいて、お当番が全部の世帯を把握しているピラミッドの形になっているので、順番に浸透させていくことは可能かなと思っています。同時に、掲示板でのQRコードや回覧でのお知らせなどを同時並行でしていくことが重要かと思っています。今はまだ練習段階で、私たち役員間の整理ができてから、次のステップに広げていくことを考えていきたいです。

 

  • 質問:役員募集に困っている町会からです。新しく地区長が決まってきているとのことですが募集状況はどうですか?

東元町:地区長は10地区全部変わることになり、現地区長が次の地区長にお願いすることになっていて本部はタッチはしないようにお任せしています。以前は、地区長を選ぶときに誰が選ぶかと揉めたことがあり、現在は、地区の中に10組くらいの中で輪番制で、1区目の人が2年やったら2区目の中からということになっています。ただ来年度、自分の区から地区長を出すということになったら、我々は組ごと脱退するようなこともあって、どこも苦労されていると思いますが、3-4月で地区長がうまく選出できるのかは内心心配しているところです。

 

  • 質問:住民の防災意識を高めるために、町会でどんなことをされましたか?ワークショップではどういうアイデアが出て、実際にやろうとされていることはありますか?

谷河内(石井氏):今、町会主催で公園でやっていることは総会、防災訓練、盆踊り、祭り、美化運動です。個別にはかまどベンチを使った炊き出しとして、区から支給されるアルファ米を使ってご飯を炊いて、カレーを作って食べるなど、あるものを使いながらやっています。かまどベンチで火が燃えているのを消防団交えて、子どもに火を消してもらうということも慣わしでやっています。

やっていないのは、住民参加のフリマなどです。町会主体でやることが多く、住民参加というものはなかなか難しかったです。子どもを主体にして、一つテントを持ってもらって中学生ボランティアに何かやってもらおうかなど、住民にまるまる預ける形で住民参加型をやってみようかという話を役員の中ではしています。資源回収については、公園の前にある拠点の中でやっています。公園の中でやるという声もありますが、業者さんとの折り合いをつけなければいけないので、今は公園外の拠点で月に一度やっています。

 

川北氏:総会に合わせて防災訓練をされていれば公園に来る理由が住民の皆さんにはありますね。資源回収を公園の前にある拠点でなさっているとのことですから、何か一緒にすれば資源回収が楽しくなるようなことがあるだろうと思います。先ほども事例にあった奈良県生駒市では、資源回収のために道路の上にテントを立てて、その前で好きなものを売ったり買ったりして、月に一回、催事として楽しみにするという感じです。

資源回収をするときにおじいちゃんおばあちゃん達に回収のポイントを説明するのを子ども達が手伝っている、地域ぐるみで資源回収を楽しみましょう、という仕組みづくりをしているところも結構あります。集めた生ゴミを花壇の液肥にする取り組みを連携させたりもしています。 

 

また、先ほどLINEのお話が出ました。やり取りをしたい場合には個人情報を気にされる方が多いと思います。今一度お考えいただきたいのは、個人情報保護法の目的は何でしょう?ということです。個人情報の適切な活用のための保護の手続きを決めた法律なので、どう活用するかが本来の目的です。横浜市では、自治会町内会のための名簿づくり、個人情報の取り扱いの手引きを作っていて、テンプレートを配れるようになっています。LINEはニックネームで登録できる気軽さがあり、町会として使うのはどうだろうと躊躇するかもしれませんが、間違えて送信しない限り、大きく個人情報が漏洩することはないですし、他のSNS に比べて個人に関することが見えにくい性質もあります。やり取りだけを目的にしている上では、個人情報の懸念はそこまでないのではないかと思います。

 

  • 質問:プロボノの支援を受けるにあたって、なぜ町会・自治会外の人に頼むのかと問われたり、町会内部の合意を得るのは難しくなかったですか?反対はありませんでしたか?

谷河内(原田氏):役員内部は問題ありませんでした。アンケート回答のコメント欄にも特に質問はなかったと思います。逆に外部の方に頼んだから格好がついたと思います。町会の役員がやっているのではなく、都の事業の支援を受けていると示せたことで、アンケートに回答してくれた人が増えたのではないかと思います。

鷺宮(斎藤氏):執行部も理解があり、特に問題になりませんでした。

東元町:役員の業務の棚卸し、チラシ作成でしたので、役員からも住民からも反対なく、問題はありませんでした。

 

  • 質問:プロボノワーカーの皆さんが支援に手をあげた決め手は何ですか。手を挙げてもらうための工夫が思い浮かべば教えてください。

プロボノ吉田氏:今回初めてプロボノに参加しました。参加するまでは不安があって、スキルや専門性を持つ人の中に入ったときに役に立てるか?活躍できるのか不安はありました。ただ、事前の説明を受ける中で、ライトに参加して良いということが分かり、それが大きなきっかけになりました。自分の中でもこういうプロジェクトがあったからというよりは、心理的なハードルを超えられたので参加できたなと思います。まずは、気軽にやってみることなのではないかと思っています。

 

プロボノ塚本氏:大きな理由は自分の興味・関心に近い団体だったこと、現地に行ける機会があったことです。それから、偶然ではありますが団体の活動エリアが夫の実家に近く、子どもを預けやすかったこともありました。

 

プロボノ前田氏:私たちのような子育て世代、子育てを卒業する世代の皆さんは、きっと地域のことを何かやらないといけないと感じているように思います。ただ、実際に町会・自治会に参加するとなると、行きにくい、面倒だと感じてしまいます。見える化、棚卸をして、こういうところに関われますよ、ということがわかると、参加しやすくなるかもしれません。

 

  • 質問:やる気のある人がいても町会・自治会内ではマイノリティになってしまいます。まず何をしたら乗り越えられるでしょうか。また、町会に入るメリットは、と聞かれた時のワンフレーズ回答はないでしょうか。

町会・自治会の皆さんの今後のご活動も見据えて、回答・メッセージをお願いします。

 

川北氏:町会・自治会のそもそもの活動目的が命と暮らしを守るということです。何のために地域で連携をしないといけないか。それは一緒に暮らしていくためと考えます。会費に見合うメリットがあるかと問われることもあるかもしれませんが、先ほどの沖縄県那覇市のような取り組みがあれば、自治会費を積極的に払ってくれる住民が出てきます。自治会の活動が、命と暮らしを守っている実感を持てるからだと思います。

 

東京において、命と暮らしを守ることがいかに大切になるでしょうか。先ほど、小家族化の話をしました。世帯人員の全国平均は2.26人ですが、東京は2人を切っています。新宿区では1世帯あたり1.5人で、6割が一人暮らしです。一人暮らしの集合体は、住民が若い時は良いでしょう。しかし東京の高齢化は全国平均の15年遅いだけです。島根や秋田が経験していることに、15年から20年で追いつきます。東京では世界でも有数の一人暮らしの比率の高さに高齢化が乗っかってきています。

だからこそ、自治会活動のリニューアルが不可欠です。個々の自治会では無理かもしれない。自治会同士で活動を共有するとか、公園が隣接しているのであれば、一緒に公園を使うとか。地域の役割や祭りを一緒に取り組むとか。昭和に作ったレガシーをそのまま続けるのではなく、令和とその次の世代、2030年代から40年代を考えると、地域づくりそのものをどのようにアップデートするか考えなければいけません。町会・自治会にメリットがありますか?と聞かれれば、命と暮らしを守るための仕組み、との回答になります。

 

若い世代にどう参加してもらうと良いかというお話もありますが、若い世代に意見を聞いてみたことはあるでしょうか。今日のお話の中で、一つの見える化が棚卸しでしたが、もう一つおすすめしているのが中学生以上の全住民調査です。世帯主に調査を取ると、わかりやすく言えば自治会の役員さんに意見を聞いているのと同じです。高校は通学エリアが広いので、高校生はなかなか地域にいなかったりしますが、中学生は授業の中でも地域課題の解決に取り組んでいたりしますね。中学校のテーマとして、地域にどう協力するかを取り組んでいる学校もあります。その流れと合わせるために中学生以上の全住民調査で、活動に対する重要度、満足度評価も取っていきます。各年齢で共通して指摘していることと、年齢層によって人気が違うものがわかります。例えば島根県で調査した際、婚活が大事と回答したのは70代でした。しかし20代に大事なことランキングを聞くと婚活は26位にとどまります。ニーズとニーズが合っていないので、それを重ねるためにどうしたらいいのか。アンケート結果をもとに、地域計画を作り直すと言うことになります。

棚卸しで活動の見える化、そして全住民調査で気持ちの見える化を行うと優先順位がつけやすくなると思います。

【クロージング】

これまでの支援事例は「東京都町会・自治会活動支援ポータルサイト」から閲覧可能なこと、2023年度の事例も6月以降に公開予定となることをお伝えし、2時間のイベントを締めくくりました。