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「プロボノ」とは、「公共善のために」を意味するラテン語「Pro Bono Publico」を語源とする言葉で、【社会的・公共的な目的のために、職業上のスキルや経験を活かして取り組む社会貢献活動】を意味します。

 

2010年頃から、企業が、企業の強みを活かす取り組みとしてのプロボノの活動が広がりを見せる中、ボランティアマインドをベースとした主体的な取り組みだからこその
”個の自律”

“セクターの立場を超えたオープンなコミュニケーション” 

“社会セクターの強い価値観や思いへの共感” 

“支援先の課題解決を通して社員が成長する機会”

など、普段の仕事にも繋がる多様な経験機会が内包されていることが明らかになってきました。

昨今では、プロボノによって引き起こされる社員への多様な変化から、社員の社会貢献活動の文脈に留まらず、SDGsへの取り組み、ESG経営の推進、越境経験を通じた人材育成、働き方改革の推進など、多面的な可能性や効果に関心が高まっています。

 

2021年度・2022年度に、津田塾大学・神戸大学と協働で、企業内プロボノに取組む国内大手企業8社への国内初の企業内プロボノに関するアンケート調査を実施し、240名超のアンケートデータ、50名以上のインタビューの結果から、98%の参加者が「本業ではない体験を通して成長できると思う」、94%が「企業が社会貢献をすることの重要性を意識できた」と回答し、「会社の企業価値へ好影響があると思った」という割合が93%にも及ぶことも確認できました。


【参考】 企業が取組むプロボノ最前線 ー国内初 8社横断意識調査報告と導入事例ー
             レポート前編 / レポート後編 


こうしたプロボノが持つ特性を、各企業はどのように捉え、また、企業戦略の中でどう位置づけて導入しているのか、
先駆的に企業プロボノの展開に取り組まれている事例をお話いただきながら、導入におけるチャレンジや手応えなどを伺いました。

事例紹介① 人材研修としてのプロボノ

恒吉 剛様 
富国生命保険相互会社 人材開発本部 部長

2011年に社長を本部長として創設された人材開発本部にて、自社の価値観とする「お客さま基点」を実践できる人づくりを推進。自らも参加経験を持つプロボノについては、自社、自業界からのみ学ぶという発想を超えた成長の場であることを重視。職員のキャリアアップの節目における「越境学習」としてその可能性を活かしている。


 

生命保険会社の人材開発本部に所属し人材育成に特化した部署にいます。富国生命は2023年11月22日に100歳を迎える会社で、お客様アドバイザーである営業職員が約9,500名、バックオフィス系の内務職員が約2,800名、合わせて約12,000名の従業員規模の会社です。本社が東京と千葉の2箇所、支社は北海道から沖縄まで62カ所、その配下に営業所拠点が471カ所あります。営業所は、責任者である営業所長が一人、その配下にマネージャーと班に分かれ営業職員がいます。

 

この組織に、従業員の企業内研修の一つとしてプロボノを導入したのがきっかけです。Off-JT (Off-the-Job Training) と言われる研修として、異業種交流やコラボ研修、越境学習の位置づけになっています。研修導入の契機は、12年前に教育、育成の組織として人材開発本部を新たに創設し、人づくりに力を入れたことがあります。生命保険会社として人が原点であることに立ち返って、自発・独創・利他という三つのキーワードに求める人材像を設定、集約し、従来行っていた少し型にはまった様な研修を改めて見直しました。内務職員の教育体系の中で、特に若手、入社から5-6年の若手に手厚く、さらに管理職に至るまでの年次研修、役職研修について、これからの社会に求められるスキルやマインドを新しく見直して5年ほど経過した2016年度にプロボノがスタートしました。弊社の従業員は、俯瞰的に見ると強みは真面目でコツコツやる、周りの人間もよく見れる一方、社外の方との関わりが薄い、議論慣れしてない、指示待ち人間が多いなど、総じて現状維持の風土、変化に消極的な文化が当時の課題として挙げられていました。そこで研修として手をつけたのが中堅層とシニア層に対するプロボノ導入でした。中堅層は小利口でオペレーションはできるが、意外と内向きで社内に引きこもりがちな傾向があり、この層には、できればイノベーションを起こしてほしい、また、シニア層には、会社へぶら下がらず、キャリアに対して備えをするためにも、ビジネス以外のキャリアも視野に入れてスキルアップもしてほしい、という期待がありました。


(出典:当日投影資料より)

 

プロボノの導入から8年ほど経過する間にも変遷があり、今は中堅層にターゲットを絞って、営業所長を経験した社員などが異業種交流型のプロボノリーグに参加しています。原則は公募型としながら、選抜指名制も併用して8年間で延べ48名が参加しています。また、プロボノの進化という点では、営業所長になるための勉強期間として、2013年に経営塾の名称で立ち上がった取り組みがあります。将来の経営幹部となるリーダーシップを発揮できる人材を育てるため、ビジネスの基本的なところを学ぶのですが、10年を経て新たに新経営塾とうプログラムを加えて刷新し、カリキュラムの一つにプロボノを新たに取り入れています。新経営塾は、いわゆるMBAのようなビジネスの基礎要素、ロジカルシンキング、経営戦略、マーケティング、財務会計、組織開発などを網羅的に行いますが、プラスしてプロボノ活動を、実践学習、越境学習に位置づけて行っています。


(出典:当日投影資料より)

 

事例紹介② サステナビリティ戦略としてのプロボノ

古路 祐子様

株式会社三井住友フィナンシャルグループ サステナビリティ企画部

兼 SMBC日興証券株式会社 経営企画部サステナビリティ推進室

2011年よりCSR推進を担当。

SMBC日興証券では2020年度より社員が業務時間の一部(上限20%、週7.5時間以内)を用いて社会課題解決に貢献できる「日興プロボノワーク」をスタート。2023年度より「日興プロボノワーク」の枠組みをグループ各社に広げ、「SMBCグループ プロボノワークプロジェクト」として展開。古路様は2021年10月より「日興プロボノワーク」の事務局を務め、2023年度からは上記プロジェクトの事務局を担当。


 

グループ傘下のSMBC日興証券に所属し、グループ内のプロボノプロジェクトの事務局を務めています。SMBCグループは三井住友銀行、SMBC日興証券、三井住友カードの他、アセットマネジメント、シンクタンクなど、それぞれの業界においてトップクラスに位置づけけられる企業で構成されています。従業員数は海外を含め110,000人以上おり、多様性に富んだ社員が働く複合金融グループです。

 

プロボノワークは、2011年に三井住友銀行が自己啓発を兼ねた社会貢献活動という形で、サービスグラントのサポートも得ながら、当時、国内金融機関として初めて活動開始しました。 その後、グループに広げて活動を継続しています。

2020年には、社会課題が非常に多様化していく中で課題解決の加速に、より貢献していきたいと、SMBC日興証券において、業務時間の一部も使う形でプロボノワークに取り組みを始めました。今年度からはそれをグループに広げてプロボノワークに業務時間が使える体制を整え、グループ内でのプロボノワークの意義のお墨付きを、どんどん頂いているという状況です。


(出典:当日投影資料より)

当社グループでは、今年度から新しい中期経営計画がスタートしており、計画の名前は「Plan for Fulfilled Growth」です。直訳すると ”幸せな成長“ です。昨今、経済的価値の追求に加えて社会的価値の創造がより一層重要になる中、社会的価値を創造できない企業は経済的価値を追求する資格すらなくなる、社会的価値を生み出す企業こそが、世界の幸せな成長に貢献する企業だ、という考えが当社グループとしてあります。社会的価値の創造を経営戦略の柱の一つに据え、時代の変化を先取りし、短期的にはなかなか経済的価値に直結しづらい領域にも積極的に取り組んでいこうというのが、今期よりグループ方針として決定しています。特に当社グループが課題解決を目指していくべき社会課題として、5つの重点課題=マテリアリティを選定し、その解決に向けたゴールを事業戦略に落とし込んでいきながら進めています。5つの重点課題 (マテリアリティ) のうち、プロボノワークは「DE&I・人権」の社員の多様な働き方を実現する取組みであり、NPOの支援を通じて「貧困・格差」の解決にもつながる取組みです。当社グループのプロボノは、10年以上前から行っていた取り組みではあるものの、新たな中期経営計画のテーマである「幸せな成長」「社会的価値創出」に合致する代表的な施策となっています。

 

プロボノワークでは、プロジェクト、社員、企業、とそれぞれにビジョンを掲げ、プロジェクトとしては、NPOの運営基盤強化に資するサポートを行います。グループ社員においては、社会課題に対する認知向上、やりがいや達成感、ライフスキルやネットワークの拡大など、人材育成という面にもつながると考えています。これが、ひいては企業ブランドの向上にもつながっていく、と考えています。


(出典:当日投影資料より)

プロボノワークは、サービスグラントに伴走いただきながら、年1回6ヶ月間の活動を行っています。 希望する従業員が手を挙げて参加し、支援団体毎にチームを組んで活動します。参加形態は当社グループの参加社員自身の状況に応じて業務時間も使える ”ワーカー”、または、プライベートの時間で活動する “サポーター” の、いずれかを選んで活動いただいています。ワーカーが使える業務時間の割合は、グループ各社で多少の違いはありますが、最大2割、週7.5時間です。今年度は当社グループ全体から約50名の従業員が参加し、5団体へ支援を実施しました。オンラインでの活動も行い、全国各地、さらには海外からも参加社員がおり、国内外どこからでも幅広く制約なく参加できる活動になっています。今年度は、三井住友銀行から始まりSMBC日興証券からグループ全体に広がった初年度、今の体制が完成形ではなく、来年以降、さらに高度化を図っていきたいと考えています。

トークセッション 各社への質問

Q:富国生命様への質問です。中堅層やシニア層などターゲットを絞りながらプロボノに取り組まれてきた中で、現在、営業所長経験者を対象へとたどりつかれた背景や理由はありますか?

A:弊社ではプロボノは、研修・学びの場として導入していますが、プロボノ自体はボランティア・社会貢献であるので、ご支援先となる団体さんに対してアウトプットをすることになります。私達の中堅層社員の中で、社外の方と接点がある人間となると、営業所長という職層が、個人や、法人のお客様に向き合っており、一番何か貢献できるスキルがあるのではないかと考え、この職層に焦点を絞りました。営業所長経験者は、一場所か二場所ぐらい営業所の経験をした後に本社にきて、色々な部署に配属されます。その中でも、企画系の部署にて、外との交わりという点で力を発揮してもらっています。

Q:SMFG様への質問です。2020年にプロボノに業務時間を使えるようになったという、大きな転換点があったとのことですが、業務時間の2割をプロボノ活動に充てる上で、社内の各階層の理解や浸透はどのような状況だったのでしょうか?

A:SMBC日興証券のプロボノワークでは、2020年から業務時間も使えるようになりました。これは、実際に参加した社員から、業務時間外では参加者それぞれのプライベート、ご家庭、お仕事の都合で、なかなか集う時間を見つけるのが難しいという課題感があがったこと、また、SMBC日興証券としてSDGsなど、社会課題解決により貢献していきたいという姿勢が業務計画にもしっかりと落とし込まれるようになってきて、参加者の課題感と会社のこれからの課題解決促進がマッチした流れになります。人事部に相談した所、その頃は、副業解禁のタイミングでもあり、割合すんなりと社内で話は通りました。色々な社内事情がうまくマッチして、週一日、業務時間の2割くらいは割いても良いということになった次第です。実務的には、セキュリティ対策などの諸々の手当は大変ではありましたが、大きな考え方としては異論なく進みました。

その他、企業としてのプロボノ導入において「よくある質問」は、以下のページにてご紹介しています。ぜひ、参考になさってくだい。

                                

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