日米プロボノサミット2010
ダイジェストレポート
2005年、日本におけるサービスグラントの試みが産声を上げて以来、5年の時を経て、いよいよ2010年4月、海の向こうのサンフランシスコから、サービスグラントの生みの親、タップルートファウンデーションが初来日。
当初は、タップルートからゲスト講師一名を想定していたところが、スタッフが3名になり、さらに、アメリカで実際にサービスグラントに参加しているボランティア2名がなんと自費で合流するという発展を見せ、総勢5人のメンバーが来日するという幸運に恵まれました。このせっかくの機会を生かそうということで、「日米プロボノサミット2010」が企画され、4月24日(土)の午後、虎ノ門にある日本財団1Fの会場に、60名を超えるプロボノワーカーが集まりました。
文字通り、日米のプロボノワーカーが交流する場となった「日米プロボノサミット」の一部始終をダイジェストでお伝えします。
あなたの“プロボノ・エクスペリエンス”
日米のサービスグラント経験者、五人の皆さまにご自身のプロボノの経験について共有していただきました。
日米のプロボノワーカーから、ご自身がかかわったプロジェクトについてのショートプレゼンテーション。NPOに直接関わることで初めて見えてきた社会問題の姿、目から鱗の真実の数々、チームからの提案と成果物、さらには、その人に起きた“プロボノ後”の出来事。プロボノとはどんな経験だったか、をシェアするセッションです。
渡邉 文隆さん
「知ろう!小児医療 守ろう!子ども達」の会のプロジェクトマネジャーとしてWEBサイトリニューアルのプロジェクトに参加。
「プロジェクト経験を通じて多くの刺激がありました。子どもが出来たら自分も必ずは直面する問題ながら全く知らなかった“小児医療”という問題に触れられたことや時間を“作る”スキルがあがったこと。そして色々な企業に勤める他のチームメンバーや、仕事を持ち、子育てもしながら会の活動を進めるお母さん方と関わることがことなどです。」
寺嶋 直子さん
「監獄人権センター」のマーケッターとしてWEBサイトリニューアルのプロジェクトに参加。
「プロジェクト中は刑務所関連のニュースに敏感になりました。また、実際のNPOの財政は非常に苦しいという現状が分かり、だからこそ改めてホームページの重要性を感じ、それを提供するサービスグラントの活動に意義があるのだと思いました。」
益田 健太郎さん・中根 佳菜子さん
「荒川クリーンエイドフォーラム」チームのお二人。益田さんはプロジェクトマネジャー、中根さんはデザイナーとしてWEBサイトリニューアルのプロジェクトに参加。
「メンバーからの感想をまとめると、サービスグラントをきっかけに、これまで興味がなかった領域に触れ、新しい世界を見る事が出来て視野が広がったという意見や、NPOという団体の現状、目指しているところ、それを実現するためにどう考えているのかを知る機会を持ててよかったという声がありました。
形としては“ボランティア”でNPOをサポートしたということですが、色々なことを考え直すきっかけになったり、気づきがあったりと自分たちにとっても得るものがあり、お互いにメリットのある有意義な活動だったと思います。」
ブルース・リチャードさん
Bruce Richard
ブルースさんは、NPOや中小企業を対象に、環境に関わるプロジェクトマネジメントのコンサルタントをする傍ら、プロジェクトマネジャーとして三件のサービスグラントを経験しています。今回はその中から最もお気に入りのプロジェクトについて紹介いただきました。
「SEI(Strategic energy Innovation)は、地域が持続可能性を維持しエネルギー効率の高い社会になるために活動を行う団体です。
具体的には、学校などの教育機関や公共組織をターゲットに、グリーンなスキルを身につけエネルギー効率を高める知見を与える啓蒙や、エネルギー監査プログラムACE(Awareness for community about the energy)の開発を行っています。このACEプログラムは学校や企業などで取り入れられ、既に15年以上運営されていましたが、プロジェクト毎にカスタム化が必要で、以前の経験を応用することが少ないという状況がありました。そこで、プロジェクトで共通して使える財務モデルの構築、がサービスグラントへの要望として寄せられました。
サービスグラントのチームは、財務アナリスト三人、経理の専門一人、プロジェクトマネジャーの私とアカウントディレクター一人の計五人で取り組みました。このプログラムでよかったことは、素晴らしい経験を持った三人のアナリストの得意分野が異なり、それぞれの強みが最大限発揮されたという点です。
また、自分自身がこれまで関わることがなかったスペシャリストと一緒のプロジェクトを遂行でき、非常に勉強になりました。この財務モデルを提供した結果、SEIは各事業のコスト詳細を把握することが可能になり、これまでは財団がメインであった資金調達に加え、新たに連邦政府への助成金申請が可能になったという成果が得られました。」
ジョニー・スギムラさん
Joni Sugimura
30年以上の仕事経験の中でプロダクトマネジャーやWEBマネジャーとして活躍してきたジョニーさんは、2007年から、タップルートファウンデーションの「アカウントディレクター」(※1)としてサービスグラントに1年に1プロジェクトの頻度で関わっています。
※1 アカウントディレクター
プロジェクトマネジャーと同じくプロジェクト管理を行うポジションですが、プロジェクトマネジャーより俯瞰的な立場から納品までをリードします。具体的には、NPOのニーズにあったチームメンバーのリクルーティングを担い、チームの立上げ、NPOとチームの調整、進捗のモニタリング、各メンバーへのフィードバックを行います。ジョニーさんが紹介してくださったのは、サンフランシスコ・ベイエリアに住むアジア出身の移民に対してヘルスケアサービスを提供するAHS(Asian Health Service)のWEBサイトリニューアルです。
「医療サービスに対するニーズは非常に高く、より多くのアジアからの移民に適切なヘルスケアのサービスを届けるための新たな資金調達がNPOの課題にありました。
アカウントディレクターである私と、プロジェクトマネジャー、マーケッター、コピーライター、グラフィックデザイナーの五人で編成したチームのミッションは、人々の関心を集め、AHSを支援したいと思わせるようなWEBサイトの制作、そして、提供後もNPOが簡単に操作・更新できるようにすることでした。その実現に向けて、患者個人の話をより多く紹介するコンテンツにし、また、実際の対象者となる中国、韓国、カンボジア、フィリピン、ベトナムからの移民にもリーチするため、多言語での情報掲載に力を入れました。
プロジェクトの中でアカウントディレクターとしての役割はとてもユニークです。
私の仕事はいくつかあり、一つ目はチームメンバーのリクルーティングを行うことです。リクルートするにあたって一番心がけたことは、チームの総合力をいいものにすること、それが成功のカギだと考えています。そして、二つ目は「NPO」と「サービスグラントのチーム」、この二つの参加者がきちんと共有したひとつのゴールに向かって互いにコミットできるように調整することです。
また、三つ目に重要なことはタップルートのプロセスをきちんと踏襲すること。“ブループリント”と呼ばれる進行ガイドに沿った進捗を心がけることで時間を節減することが可能です。最後は、フィードバックを継続してチームメンバーに提供することです。プロジェクトマネジャーだけでなくメンバー一人ひとりにフィードバックを行い、サービスグラントというボランティアを通じてみんながよい思いをできるようにサポートしています。
私も、次のプロジェクトのアサインを楽しみにしています。」
Q&Aセッション
参加者の皆さまから、プロボノの先進であるアメリカでの取り組みについて、次から次へと質問が飛び出し、実に白熱したQ&Aセッションとなりました。
質問1 プロジェクトがうまく進んでいないときに、例えばデザイナーの作業が遅れているときに、アカウントディレクターはそのデザイナーに直接声をかけるのか、プロジェクトマネジャーを通して言ってもらうのか、どちらですか?
ジョニーさんの回答
「時間管理はプロジェクトマネジャーの担当業務になっています。“やさしくちょっと押す”というのが、私の仕事です(笑)。私自身と、プロジェクトマネジャー二人の異なる役割の立場から背中を押すということですね。」
質問2 ブルースさん、ジョニーさん二人に質問です。
(1)なぜプロボノ活動をしようと思ったのでしょうか。
(2)実際、参加してみて自分自身にとってよかったことは何ですか?
ブルースさんの回答
(1)なぜプロボノ活動をしようと思ったのでしょうか。
「“ボランティア”という単語はラテン語が語源で、もともとの意味はChoose=選ぶ、選択するということです。だから、やるかやらないかということは自分の意思で選ぶというのが“ボランティア”という意味で、そのアクションに関わること自体が意志から始まっているわけです。また、もう一つの語源は、“差をつける”、“自分を変える、自分を違うものにする”という意味もありまして、一定の自分の時間をさいて、色々なものを変えていく、違いをもたらしていく、それによって地域社会に何らかのプラスの効果をもたらすための作業に関与できるということは、私にとって非常に重要なこと、自分の生活に欠かせないものだと思っており、その意味で、プロボノ活動をやってみたいと思いました。
(2)実際、参加してみて自分自身にとってよかったことは何ですか?
「参加してよかった点といえば、通常の自分がやっている仕事では経験できないようなことに関わるチャンスを与えてくれている点だと思います。例えば、財務分析、ブランディング戦略など、色々な領域を垣間見ることができることが大きな魅力です。」
<ジョニーさんの回答>
(1)なぜプロボノ活動をしようと思ったのでしょうか。
「私にとってプロボノというのはあくまでもボランティア活動です。言葉を変えていうと地域社会に何かをお返しする、還元することだと考えています。自分を取り巻く社会問題に、自分を関与させるということはとても重要だと個人的に思っています。自分の家族、自分のキャリア、仕事のみに視点が集中してしまうのではなく広く社会に目を向けることは重要だと思っています。」
(2)実際、参加してみて自分自身にとってよかったことは何ですか?
参加してよかった点は、人生が豊かになることだと思います。1年間に1回のペースでプロジェクトに関わっていますが、その結果、人生や生活が豊かになったと思います。
質問3 一番ストレスフルだったことや大変だったこと、それをどうやって切り抜けたのかを教えて下さい。
<ブルースさんの回答>
「プロジェクトマネジャーとして経験した大変なことは、やはりNPOの方々といかにうまく仕事をしていくかです。NPOの方々は、時にフルタイムで仕事をしていたり、別の仕事を持ってNPOも行っているダブルワークというように、二束のわらじを履いている人もいらして、時間的な制約が多い人もいらっしゃいます。
自分たちのチームが出したミッションを、同じようなレベルで共有してもらうことや、NPOの側が必要な時にその場にいてもらうようにすることに苦労したりしました。」
<ジョニーさんの回答>
「アカウントディレクターとして一番難しいのがリクルートメントです。
それぞれのプロジェクトのミッションに一番ぴったりな人、スキルを持った人をいかに探し出すかが難しい。必ずしも全てのボランティアがプロジェクトのミッションにぴったりのスキルを持っているかどうかは分かりません。その辺りが一番難しいですね。
また、ブルースと同じように、クライアント(NPO)の方々にプロジェクトに集中していただく、プライオリティを共有していただくところに難しさを感じることがあります。」
質問4 長期プロジェクト(半年以上1年レベル)の場合、プロボノの側もNPOの側も当初の熱意が薄れて、息切れや中だるみなどがあると思います。そういうご経験があったかなかったか、また、経験があった場合にはどう対処をしていましたか?
<ジョニーさんの回答>
「まさにそういった経験があります。だからこそ、前に進めるような、停滞しないようなことをきちんと行っていくことが大変重要になってくると思います。いかにチームのエネルギーレベルを高いところに保っていくのか、というのが非常に大変です。
対応方法としては色々あると思いますが、チームの一人ひとり、個人に対して話をし、情報を得ることによって、プロジェクトを通していい経験をしているのかどうか、困ったことがないか、嫌なことが起こっていないかどうかを確認していくようにしています。ボランティアを経験してよかったなという思いを持ってもらえるように気をつける、ということですね。」
<ブルースさんの回答>
「タップルートのアプローチは、通常ほとんどが6ヵ月以内に完了するプロジェクトです。フルタイムで他に仕事を持っている人がボランティアベースで時間を提供できる範囲を考えると半年を超えるというのはキャパを超えてしまうことになると思いますので。」
質問4 ボランティア同士での横のつながり、というのはあるのかどうか。例えば、ベストプラクティスを共有したり、トレーニングをするような機会があったりしますか?
<マンディさんの回答>
「いくつかコミュニケーションの方法があると思いますが、タップルートのホームページの中にもプロボノワーカーがログインして使えるコミュニティサイトがあり、2つの機能を持っています。
(1)Q&A機能というのは、プロジェクトに関わっているボランティアが質問を投げ込むと、全国(現在全米6都市)のプロボノワーカーがそれを見て回答をお互いに出し合ったり、似た様な問題に直面している別の参加者からフィードバックあったり、と意見交換ができる場を提供しています。
(2)意見箱は、プロセスの改良などプロジェクトの進行のしかたについての提案があれば掲載することができよるようになっています。
それから、ネットワーキング、仲間づくりについての質問もあったと思いますが、L.A.オフィスではネットワーキングのイベントがいくつかあってハッピーアワーなどが企画されています。その企画自体はタップルート側が主催するものではなく、ボランティアが独自に開催するもので、その中でプロジェクトに一緒になるメンバー以外の人とも交流ができるようにしています。」
<ウェンディーさんの回答>
「L.A.オフィスだけでなく、全米6都市のどのオフィスでも似たようなソーシャルイベント(交流会)が開かれています。
特にL.Aは頻度が高く3ヵ月に1回くらい色々なレストランにプロボノワーカーが集まって話をする機会があります。その時には、アカウントディレクターがやってきて、新しいチームメンバーを探して色々な話をしたりしています。
昨年は、プロジェクトが累積1,000件達成したお祝いのパーティーを事務所で開いた際にも、たくさんのプロボノワーカーが集まって交流をしました。」
質問5 タップルートが公にしているプロジェクトの経済的価値はどのように計算しているのですか。
<ラグナーさんの回答>
「これまでに、既に1,100件のプロジェクトが終了していますが、それを累計して金額に直すとおよそ5500万ドルの価値のある仕事を達成しています。
その計算の根拠ですが、一般に一件のプロジェクトの価値を金額に換算すると平均55,000ドルとなります。プロジェクトの種類によって40,000ドルから70,000ドルなど違いはあり、例えば、基礎的なWEBサイトの制作を例に取ると50,000ドルとみています。これは、米国で仮にプロフェッショナルにWEBサイトを依頼するとそれくらいの請求書が届くからです。我々の場合、もちろんボランティアが制作にあたっているわけですが、それぞれがプロフェッショナルであり、提供する成果物はビジネスの世界でも通用する品質の高いものです。よって、仮にプロフェッショナルが本業で同じようなことをやるといくらなのかを計算して出しているのです。
経営、戦略、人事戦略ではその価値は70,000ドル近くにまで高まります。これも同様に、プロフェッショナルの人材がこの仕事を行った場合どれくらいかかるのかということを基準に計算しています。」
質問6 二つ質問があります。
(1)四つのサービスカテゴリーで達成した1,100プロジェクトの内訳を教えてください。
(2)ボランティアを選ぶ基準は、これまでの実績やスキルの種類、経験年数、あるいは熱意などどのようなことが重視されますか?
<ラグナーさんの回答>
(1)四つのサービスカテゴリーで達成した1,100プロジェクトの内訳を教えてください。
「四つのカテゴリ全てが同時に始まったわけではなく、2001年発足当時はマーケティングのサービスのみを提供していました。その後、WEBサイトが始まり、2年前に経営戦略、1年前から人事戦略のサービスがプログラム化しました。よって、今まで達成した1,100のプロジェクトのうち、1,000くらいがマーケティングです。現在の提供種類の比率でいうと65%はがマーケティングとウェブサイトのプロジェクト。35%が他のプロジェクトになります。」
<マンディさんの回答>
(2)ボランティアを選ぶ基準は、これまでの実績やスキルの種類、経験年数、あるいは熱意などどのようなことが重視されますか?
「プロボノワーカーの中からどのようにチーム編成を行っているかについてですが、タップルートには5名のリクルートコーディネーターがおり、送られてきた履歴書を1件1件審査しています。
各役割に対してこれだけの経験が必要だという明確なガイドラインがあり、それと照らし合わせて適切な人材を選ぶようにしています。
例えば、グラフィックデザイナー、コピーライターに関しては、最低3年以上対価が発生する仕事としての業務経験があり、さらにポートフォリオが必要です。また、選ばれた方々に対してはプロボノのボランティアを行うにあたって導入の研修を受けていただくことになっています。
また、アカウントディレクター、プロジェクトマネジャーになると、NPOに提供する成果物に該当する分野に関するプロジェクトマネジメントの経験が15年以上あること、などさらに厳しい条件があります。「人事」や「財務解析」といった何か専門的な経験があって初めてアカウントディレクター、プロジェクトマネジャーができるわけです。また、申し込んできたプロボノワーカーに対して電話を通じて一人ひとりに面接も行っています。」
<ジョニーさんの回答>
「私がチーム編成をする場合、最初に履歴書(プロフィール)を見てその人が持つスキルとこれまでの経験を調べます。あわせて、その人がどんな分野に興味をもっているのか、どんなタイプのプロジェクトに対して興味があるのかを聞きます。また、グラフィックデザイナーの場合にはポートフォリオを見て、どのような仕事をやってこられたのか、どんな美的感覚を持っている方なのかも見ながら選びます。
それから、一人ひとりの候補の方に、どの程度の時間をプロジェクトに割けるかを予め確認するようにしています。プロジェクトの最初と最後でメンバーが異なるということを避けたいと思うからです。」
質問7 プロボノのプロジェクトの成功率はどれくらいなのでしょうか?
<ラグナーさんの回答>
「一般的に、プロボノのプロジェクトのうち、65%のプロジェクトは進行中にこれ以上の進行が危ぶまれるような大きな問題に直面するといわれています。そのため、タップルートファウンデーションでは、起こりうる問題への対策・解決のためのツール開発を行うといった対応を取っています。
また、米国全土におけるプロボノのプロジェクトの50%が失敗に終わっているという数字が出ていますが、タップルートではプロセス管理のためのさまざまなツールを提供していることでプロジェクトの99%が成功をおさめています。」
質問8 プロボノのプロジェクトの50%が失敗するといわれる中で、タップルートのプロボノプロジェクトが成功する理由をそれぞれの立場から教えて下さい。
<マンディさんの回答>
「成功する理由の一つはトレーニングに力を入れていることだと思います。
タップルートでは、プロボノワーカーに対してオリエンテーションを行っており、その中で一貫して、どんなことがプロジェクトに期待されているのか、プロボノワーカーに何が期待されているのかを伝えることにしています。
また、受け手であるNPOに対してもトレーニングを行い、どこまでがプロジェクトに期待できることで、どこからが期待できないことなのかを明確に示し理解してもらうようにしています。」
<ウェンディさんの回答>
「私は、プロジェクト運営の観点から二つ重要な理由あると思います。
一つは、プロジェクトマネジメントです。タップルートのロサンゼルス地域では、1時期に約50のプロジェクトが同時に進んでおり、そのすべてを徹底して管理していることが成功の要因だと思います。色々なことが時間通りに進むように常に働きかけていますし、スムーズな進行に必要なトレーニングを施していることが功を奏していると思います。
また、もう一つ重要なのは、プロボノワーカーの皆さんご自身が素晴らしいということです。献身的で、熱意があり、高いコミットメントを持った方々が協力して下さることが成功の要因だと思います。勿論、タップルートとして、チームに対してツールを提供したり、トレーニングを行ったり、最適な方を集めることにも力を入れていますが、一番最後に大切なのは、プロボノワーカーの方々だと思います。皆さんがきちんとした成果を出して下さっているからこそ、タップルートもよく見えるのです。最終的には熱意とコミットメント、これがすべての成功要因になると思います。」
<ラグナーさんの回答>
「成功する要因について、私からは二つあります。
一つめは、スコープ=業務範囲を明確にしていることです。プロジェクトに関係する全ての人が、何が今回のプロジェクトの業務範囲内で、何が範囲外であるかを明確に理解していることが大切です。また、これは言葉を変えていえば、始めの時点で既にプロジェクトの範囲はきちんと決まっているので、プロジェクトの途中になって、これはスコープに入っているかいないかという交渉をする必要がないということがメリットです。もともと設定しているスコープにみんなが納得しているからこそプロジェクトが始められるわけで、もし、誰かが決められた業務範囲に対して疑問があればそのプロジェクトを始めないほうがよいということです。
二つめは、先ほどから進行ガイドなどツールの話も出ていましたが、やはり「人材」が成功の重要なファクターだと思います。タップルートでは通常五人でチームを組むことが多いのですが、チームの内二人がマネジメント側、三人が実務を行うというような棲み分けを行っています。マネジメント側の二人は、実務を担う三人がよい成果を出すか、時間通りに仕事を進めるかを管理し、プロジェクトを滞りなく進行させることに責任を持っているわけです。
タップルート以外のプロボノのプロジェクトの場合には、役割の棲み分けをせずに一人で全部抱え込んでしまう例が多いのではないかと思いますが、やはりプロジェクトのマネジメントを行うためには時間も労力も必要であり、それを認めて役割を分けることは重要だと思います。」
<ジョニーさんの回答>
「私から特に強調したいことはコミットメントのレベルだと思います。タップルートのボランティアは強いコミットメントレベルを持っており、それがとても素晴らしいと思います。なぜそのようないい人が集められたのかというのは、リクルーティングの審査を厳格に行っている事にポイントがあると思います。やはり、どのボランティアの人もプロとしての意識が非常に高い!
求められていること、期待されていることを必ず提供するのだ、という強い意志で、プロ意識で仕事をしているということが成功の要因だと思います。」
<ブルースさんの回答>
「私はプロジェクトマネジャーの経験から成功する要因は三つあると思います。一つは、システムです。よく考えられ、練り上げられたシステムがあり、そのシステムを機能させるための体制・必要な書類・文書などがそろっていることが挙げられます。
また二つ目は、人間だと思います。いかにシステムがよくてもそれをやはり実践していく人間がよくなければならない。これは受け手であるNPOの皆様も然りで、プロジェクトを行える体制が整えられる方たちと仕事をすることも重要だと思います。そして三つ目は熱意です。然るべき目標に向かって仕事を進めていくのだ!という情熱を注ぎ続けられるという熱意が必要ですね。
以上のように、システム/人/熱意が揃って初めてよいプロジェクトができると思います。」
全員で do it pro bono!
白熱したQ&Aセッションも、Time up! 最後の記念に、写真撮影を行いました。
会場提供協力:日本財団