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プロボノ導入ステップガイド:
3カ月で成果を出す越境体験プログラムの作り方

はじめに

 

前回の記事「プロボノ入門:企業価値を高める5つの理由」では、プロボノが企業にもたらす価値について、社会課題解決への貢献、人材育成と組織開発、社員エンゲージメントの向上、企業価値の向上、そして越境体験を通じた総合的成長という5つの観点からご紹介しました。

 

近年、このプロボノという越境体験に、様々な部門から関心が寄せられています。人材育成部門からは「実践的な育成の機会として活用できないか」、CSR部門からは「社会貢献と人材育成を効果的に両立させる方法は」、D&I推進部門からは「多様な価値観や経験を得られる機会として展開できないか」など、それぞれの視点から導入を検討する企業が増えています。

 

本記事では、プロボノ導入を具体的に進めるためのステップをご紹介します。全体は以下の6つのステップで構成されています。

 

1. プロボノ導入の全体像を理解する -プロボノ活動の価値を最大化する3カ月-
2. 準備段階:土台づくり
3. パイロット実施:実践と学習
4. 評価と改善:次のステップに向けて
5. 本格展開:定着と発展
6. さらなる価値向上に向けて

 

特に注目いただきたいのは、プロボノ活動の期間設定です。私たちサービスグラントではこれまでの経験から、企業プロボノにおいて3カ月という期間を推奨しています。これは支援先団体への確かな価値提供と、参加者自身の成長実感の両方を実現するために重要な期間となります。ただし、これはあくまでも目安であり、各企業の状況に応じて柔軟に調整することが可能です。
本記事を通じて、プロボノ導入の具体的なイメージと実践的なヒントを掴んでいただければ幸いです。

 

なお、本記事は認定NPO法人サービスグラントが作成しています。実際の協働企業の事例もご紹介しながら、プロボノの価値や可能性をより具体的にお伝えします。
また、サービスグラントでは、皆様の企業に最適なプロボノプログラムの設計から運営までトータルでサポートするとともに、導入企業同士の情報交換の機会も提供しています。

 

 

1. プロボノ導入の全体像を理解する
-プロボノ活動の価値を最大化する3カ月-

 

サービスグラントではこれまで、2000件を超えるプロジェクトと、様々な業種・分野の企業25社との協働を重ねてきました。そのなかで、企業プロボノにおいては「3カ月」という期間設定が一般的に取り組みやすく、効果的であることが見えてきました。この効果とは、支援先への確かな価値提供(社会貢献)と参加者自身の成長という、2つの価値の最大化です。

 

支援先への価値提供

支援先の課題に対して真に価値のある成果を提供するためには、適切な時間の確保が不可欠です。まず、支援先の課題を深く理解する時間が必要です。表面的な課題の背後にある本質的な課題を見出し、支援先との対話を通じて真のニーズを把握していきます。

 

参加者の成長実感

参加者にとって、3カ月という期間は自身の変化を実感できる重要な時間となります。通常業務とは異なる環境での経験を通じて、新しい知識やスキルを習得し、実践する機会を得ることができます。

特に、NPOという異なる組織文化との出会いは、多様な価値観への理解を深める貴重な機会となります。3カ月という期間は、これらの新しい経験を自分の中で咀嚼し、確かな学びとして定着させるために必要な時間でもあります。

 

 

導入プロセスの要素

 

プロボノ活動において3カ月という期間を効果的に活用するためには、導入プロセスにおける以下の要素が重要となります。

 

1. 段階的なアプローチ
まずは小規模なパイロットからスタートし、運営面での経験と学びを着実に蓄積します。得られた知見を基に徐々に規模と範囲を拡大していくことで、持続可能な活動として定着させることができます。

 

2. 柔軟な制度設計
3カ月間の活動を確実なものとするためには、適切な制度設計が重要です。業務時間内での実施や、ボランティア休暇制度の活用など、各企業の状況に応じた柔軟な対応が必要となります。また、プロボノでの経験を評価制度に組み込むことで、参加者のモチベーション向上にもつながります。

 

3. 継続的な改善
プログラムの価値を維持・向上させるためには、定期的な効果測定とフィードバックの収集が欠かせません。支援先からの評価、参加者の成長度合い、組織への影響など、多角的な視点での検証を行い、それらの結果を基にプログラムを改善していきます。

このように、プロボノの導入は計画的かつ段階的に進めることで、より確実な成果につながります。以降の章では、各ステップについて具体的な進め方を解説していきます。

 

 

2. 準備段階:土台づくり

 

前章で見てきたように、プロボノ活動の価値を最大化するためには、3カ月という期間を効果的に活用することが重要です。ここでは、成功に向けた土台づくりの具体的な進め方をご紹介します。

 

 

目的の明確化と期待する成果の設定

 

プロボノ導入の第一歩は、組織としての明確な目的設定です。人材育成なのか、社会貢献の深化なのか、あるいは組織活性化なのか。これらの目的に応じて、期待する成果や評価指標も変わってきます。
サービスグラントの協働先の一つである富国生命では、2023年から将来を担う若手社員向け研修プログラム「新経営塾」にプロボノを組み込むことで、人材育成施策としての明確な位置づけを実現しました。プロボノ活動を通じて、社員の自律性を促し、社会感度を高める機会として体系化することで、経営層からの継続的な支援も獲得しています。

 

★プロボノ導入の目的を設定する際の重要なポイント:

  • 既存の人材育成プログラムとの関連性の明確化
  • 参加者の具体的な成長目標の設定
  • 定量的・定性的な評価指標の設計
  • 部門を超えた育成効果の検証方法

 

経営層の理解と支援の獲得

 

プロボノの導入と継続的な実施には、経営層の理解と支援が不可欠です。特に業務時間内での実施や、部門を超えた参加者の募集には、トップのコミットメントが鍵となります。経営層への提案では、プロボノがもたらす具体的な価値と、実現可能な実施計画を示すことが重要です。

例えば、先ほどの富国生命では、プロボノ活動を通じた「社会課題への理解促進」と「実践的な課題解決力の養成」という明確な育成目標を示すことで、経営層の支持を得ることに成功しています。社員の成長と社会貢献を同時に実現する取り組みとして、その価値が高く評価されているのです。

 

 

実施形態の設計

 

プロボノ活動を効果的に展開するためには、適切な実施形態の設計が重要です。活動時間の確保方法、チーム編成の考え方、オンラインとオフラインの組み合わせなど、実践に向けた具体的な形を検討していきます。
2020年度より協働する住友商事では、年間100時間のボランティア休暇制度を設けることで、プロボノ活動への参加しやすい環境を整備しています。3カ月のプロジェクトであれば週4時間×12週の計48時間を、この制度を活用して確保することができます。また、オリエンテーションや報告会といった全体イベントは通常の勤務時間を活用し、プロジェクト活動時間のみをボランティア休暇から捻出するなど、限られた時間を効果的に活用する工夫も行っています。

このような実施形態を検討する際の重要なポイントは以下の通りです:

 

■ 活動時間の設計

  • 業務時間内での実施可能性の検討
  • ボランティア休暇制度の活用方法
  • 全体イベントの実施時間帯の設定

■ チーム構成の検討

  • 部門横断的な人選
  • 経験年数のバランス
  • 必要なスキルセットの確保

■ 活動形態の設計

  • オンラインとオフラインの効果的な組み合わせ
  • 定例ミーティングの設定
  • 支援先との接点の確保

 

実施体制の整備

 

プロボノ活動を円滑に進めるためには、適切な実施体制の構築が不可欠です。参加者のサポートから、支援先との調整、社内外への発信まで、多岐にわたる役割を担う体制を整えていきます。

 

■ 推進体制の構築

  • プログラム統括責任者の設置
  • 部門間連携の仕組み構築
  • モニタリング体制の確立

■ サポート体制の整備

  • 参加者への支援窓口の設置
  • 専門家によるアドバイス体制
  • 緊急時の対応フロー

■ 情報共有の仕組み

  • 定期的な報告体制
  • 社内外への情報発信方法
  • 経験・ノウハウの蓄積方法

 

このように、準備段階では目的の明確化から実施体制の整備まで、様々な要素を丁寧に検討していくことが重要です。富国生命の事例は、人材育成プログラムの一環としてプロボノを導入することで、明確な目的設定と継続的な運営を実現した好例であり、住友商事の事例は、制度設計の工夫により実践的な活動基盤を構築した例といえます。

 

こうした準備が、その後の展開をスムーズにする鍵となります。次章では、これらの準備を基にしたパイロットプログラムの実施について解説していきます。

 

 

3. パイロット実施:実践と学習

 

入念な準備を経て、いよいよプロボノ活動を実践するフェーズです。パイロット段階では、支援先への価値提供と参加者の学びの両方を確実なものとするため、まずは小規模でのスタートがおすすめです。

 

パイロット実施の目的
パイロット実施の主な目的は、本格導入に向けた実践的な学びを得ることです。支援先への価値提供はもちろんのこと、運営面での課題の発見や、組織への適合性の確認が重要となります。実際の活動を通じて、プログラムの改善点を見出し、次のステップに向けた示唆を得ていきます。

 

 

アプローチの選択

 

パイロット実施には、大きく2つのアプローチがあります。組織の状況や目的に応じて、適切なアプローチを選択することが重要です。

 

(1)小規模プロボノプロジェクト
複数名のチームを組み、支援先団体に対して具体的な成果物の提供に取り組む従来のプロボノプロジェクトを小規模化したアプローチです。支援先を1団体に絞り、4-5名の少人数チームで支援を行います。支援先の課題特定から解決策の検討、成果物の提供まで、プロボノ活動の一連のプロセスを経験できます。

★このアプローチの特徴:

  • プロボノ活動の全体像を把握できる
  • 運営面での課題を具体的に見出せる
  • 支援先との関係構築のノウハウが蓄積できる
  • 3カ月間の継続的な運営体制が必要

 

(2)スコーパソン(課題整理ワークショップ)
支援先団体の課題の棚卸と整理に特化した1日完結型のプログラムです。NPOが直面している社会課題やその背景、組織課題を深く理解し、実現可能な支援の範囲を明確にすることに焦点を当てます。
★このアプローチの特徴:

  • 短期間で社会課題に触れられる
  • 多くの社員が参加できる機会となる
  • 支援先の課題を体系的に整理できる
  • 具体的な支援に向けては追加のステップが必要

     

 

実施のポイント

 

パイロット実施を成功させるためには、以下の準備が重要となります。

 

1. 支援先の選定
支援先の選定は、パイロット実施の成否を左右する重要な要素です。自社の事業領域や関心テーマに関連する団体を選ぶことで、参加者の当事者意識が高まり、より深い支援が可能となります。
また、3カ月という期間で適切な支援が可能な規模の課題を持つ団体であることも重要です。プロボノによる支援の意義を理解し、協働に意欲的な団体との出会いは、互いに学び合える関係性を築く基盤となります。

 

2. チーム編成
効果的なチーム編成は、プロボノ活動の質を大きく左右します。部門横断的なメンバー構成とすることで、多様な視点とスキルを活かした支援が可能となります。
経験豊富なメンバーと若手メンバーを組み合わせることで、チーム内での学び合いも促進されます。特に、パイロット段階では参加意欲の高いメンバーを選定することが、円滑な活動の実現と有意義な気づきの獲得につながります。

 

3. プロジェクト設計
3カ月という限られた期間で具体的な成果を出すためのプロジェクト設計は、支援先との対話を通じて優先度の高い課題を特定し、実現可能な目標を設定することから始まります。月単位でのマイルストーンを設定し、定期的な進捗確認の機会を設けることで、着実な成果の創出を図ります。
また、予期せぬ事態への対応も含めた柔軟な計画策定が重要です。

 

 

期待される学び

 

パイロット実施からは、導入企業へ以下のような学びが期待されます。

 

1. 運営面での発見
実際の活動を通じて、運営面での具体的な課題が見えてきます。活動時間の確保方法や、オンライン・オフラインのバランス、進捗管理の実効性など、実践的な運営ノウハウが蓄積されます。特に、支援先とのコミュニケーション方法については、セクターを超えた協働ならではの発見が得られるはずです。
先述の2つのアプローチの内どちらを選択するかは、組織の状況や目的に応じて判断することが重要です。例えば、プロボノ活動の運営経験を積みたい場合は小規模プロボノプロジェクト、社員の理解促進を優先したい場合はスコーパソンが適しています。また、両方のアプローチを組み合わせることで、より効果的な導入も可能です。

 

2. 支援内容に関する学び
プロボノ活動を通じて、自社が提供できる支援の範囲と深さが明確になってきます。社員の持つスキルや経験が、どのように社会課題の解決に貢献できるのか、具体的な示唆が得られます。また、成果物の質を確保するために必要な体制や工夫も見えてきます。

 

3. 組織としての適合性
パイロット実施は、プロボノ活動と既存の業務をいかに両立させるか、という重要な示唆をもたらします。
必要なサポート体制の明確化や、社内制度との整合性の確認など、本格展開に向けた具体的な課題が浮かび上がってきます。これらの発見は、持続可能な活動基盤を構築する上で貴重な材料となります。

 

これらの学びは、次章で解説する評価と改善のプロセスを通じて、本格展開に向けた具体的な示唆へとつながっていきます。
特に重要なのは、パイロット実施を単なる試行として終わらせないことです。ここでの経験と学びを丁寧に分析し、組織に適したプロボノの形を見出していきます。目の前の支援を成功させることはもちろん重要ですが、そこから得られる示唆を次のステップに活かすという視点を常に持ち続けることが大切です。

 

 

4. 評価と改善:次のステップに向けて

 

パイロット実施を通じて得られた学びを、次のステップに活かしていくフェーズです。ここでの丁寧な評価と分析が、本格展開の成功につながります。

 

 

効果測定の実施

 

パイロットプログラムの効果を多角的に測定することが重要です。支援先への価値提供、参加者の成長実感、運営面での実効性という3つの観点から、プログラムの成果を評価していきます。

 

1. 支援先への価値提供
支援先団体への価値提供を評価する際には、成果物の有用性に加え、支援プロセス全体を振り返ることが重要です。提供した成果物が支援先のニーズに応えているか、支援プロセスは適切であったか、コミュニケーションは円滑に行われたかなど、多面的な評価を行います。これらの評価は、より効果的な支援方法を開発する上で重要な示唆となります。

 

2. 参加者の成長実感
参加者の成長という観点では、スキルや知識の向上に加え、より本質的な変化を評価することが重要です。社会課題への理解深化、多様な価値観への気づき、新しい視点の獲得など、プロボノ特有の学びを丁寧に拾い上げていきます。また、これらの学びが本業にどのように活かせるのか、という視点での評価も重要です。

 

3. 運営面での実効性
運営面の評価では、プログラムの実施プロセス全体を検証します。活動時間の確保は円滑にできたか、進捗管理の方法は適切だったか、サポート体制は十分に機能したかなど、運営上の課題を具体的に特定していきます。

 

 

課題の洗い出し

 

多角的な評価を通じて明らかになった課題を、以下の観点から整理していきます。

 

1. 実施プロセスにおける課題
実施プロセスでは、活動時間の確保や進捗管理の仕組み、支援先とのコミュニケーション方法など、実務的な課題が見えてきます。これらの課題に対しては、具体的な対応策を検討し、次の展開に向けた改善につなげていく必要があります。

 

2. 制度面での課題
制度面では、業務時間内での活動範囲や評価制度との連携、部門間連携の仕組みなど、組織としての体制整備に関わる課題が明らかになります。これらは、プログラムを持続可能な形で展開していく上で重要な要素となります。

 

3. 組織としての対応方針
より大きな観点では、プロボノ活動の組織内での位置づけや、展開の方向性に関する課題も見えてきます。経営層の関与度、社内外への発信方法、継続的な運営体制など、組織としての対応方針を検討する必要があります。

 

 

改善策の検討

 

課題分析を基に、具体的な改善策を検討していきます。ここでの検討が、本格展開の成功を左右する重要な要素となります。

 

1. 運営プロセスの効率化
運営プロセスの改善では、成果の質を保ちながら、より効率的な実施方法を模索します。標準的な進行テンプレートの整備、効果的なツールの活用、定例報告の仕組み化など、運営の効率化と質の向上を両立させる工夫も考えられます。

 

2. サポート体制の強化
参加者が安心して活動に取り組めるよう、サポート体制も重要です。メンター制度の導入や相談窓口の設置、専門家との連携体制の構築など、支援の充実を図ります。

 

3. 継続性を高めるための工夫
活動の継続性を高めるためには、成果発表の機会創出や参加者コミュニティの形成など、モチベーションを維持・向上させる仕組みづくりも効果的です。

 

 

本格展開に向けて

 

パイロット実施での評価と改善を踏まえ、本格展開に向けた具体的な提案をまとめていきます。

 

1. 段階的な展開計画
本格展開では、支援先団体数や参加者数を段階的に拡大していくプランを立てます。各段階での目標設定、必要なリソースの見積もり、実施体制の整備など、具体的な展開計画を策定します。

 

2. 実施体制の強化
プログラムの拡大に伴い、運営事務局の体制強化も必要となります。プログラム全体を統括する責任者の設置や、関連部門との連携体制の確立など、持続可能な運営基盤を構築します。

 

3. 評価の仕組みの確立
継続的な改善を可能とするため、定期的な効果測定と評価の仕組みを確立します。定量的・定性的な評価指標の設定、フィードバックの収集方法、改善プロセスの確立など、PDCAサイクルを回す基盤を整備します。

 

このように、評価と改善のフェーズでは、パイロット実施での経験を分析し、次のステップに向けた具体的な道筋を描いていくことが重要です。ここでの準備が、プロボノ活動の持続的な展開を支える基盤となります。

 

5. 本格展開:定着と発展

 

パイロット実施での学びを活かし、プロボノ活動を組織に定着させていくフェーズです。ここでは、持続可能な仕組みづくりと、活動の発展に向けた取り組みが重要となります。

 

持続可能な仕組みづくり

 

プロボノ活動を組織に定着させるためには、適切な制度設計と運営体制の確立が不可欠です。業務時間内での活動の範囲、活動時間の確保方法、評価制度との連携など、組織の実情に合わせた制度の整備が必要となります。特に、活動時間を確保するための制度設計は、継続的な実施の鍵となります。

 

例えば、業務時間の一定割合をプロボノ活動に充てることができる制度や、ボランティア休暇制度の活用など、各社の状況に応じた柔軟な対応が見られます。また、プロボノでの経験を人事評価に組み込むことで、参加者のモチベーション向上にもつながっています。

 

 

プログラムの拡充と展開

 

本格展開のフェーズでは、より多くの社員が参加できるよう、プログラムの多様化も検討要素となります。従来の3カ月間のプロジェクト型支援に加えて、1日完結型のワークショップや、オンラインでの短期支援など、様々な参加形態を用意することで、より多くの社員がプロボノを経験できる環境を整備することができます。

 

 

組織横断的な連携の促進

 

本格展開の段階では、組織を超えた連携も活動の発展に重要な役割を果たします。部門を超えた参加者の募集や、経験者をメンターとして活用するなど、組織全体での展開を促進する仕組みづくりが必要です。
特に、経験者の活用は重要な要素となります。プロジェクトの運営サポートや新規参加者へのアドバイスなど、経験者が活躍できる場を設けることで、組織全体としての実施能力を高めることができます。運営ノウハウの蓄積と共有は、プログラムの質を維持・向上させる上で重要な要素となります。

 

人材育成との戦略的統合

 

プロボノ活動を人材育成プログラムとして明確に位置づけることで、より戦略的な展開が可能となります。既存の研修プログラムとの連携を図り、実践的な学びの機会として体系化していくことで、継続的な実施基盤を強化することができます。

 

活動の質の向上と評価

 

本格展開においては、活動の質を継続的に高めていく取り組みも重要です。支援先団体からのフィードバック、参加者の成長度合い、組織への影響など、多角的な視点での評価を行い、プログラムの改善につなげていく必要があります。

 

具体的な評価指標の例:

  • 支援先の満足度と具体的な変化
  • 参加者の意識・行動変容
  • 本業への還元度
  • 組織全体への波及効果

 

定期的な振り返りと改善のサイクルを確立することで、活動の価値を持続的に高めることができます。
このように、本格展開の段階では制度設計から評価の仕組みまで、様々な実務的な取り組みが必要となります。これらの取り組みを進める際は、プロボノ支援の専門機関が持つ豊富な知見やノウハウを活用することで、より確実な実施が可能となります。

 

次章では、より長期的な視点から、プロボノ活動の価値向上の可能性について見ていきます。

 

 

6. さらなる価値向上に向けて

 

プロボノ活動は組織と個人の双方に大きな価値をもたらす可能性を秘めています。本章では、長期的な価値向上の可能性について、パナソニックの12年に渡る実践事例を通じて考察します。

 

価値創造の深化

 

プロボノ活動の価値をさらに高めていくためには、支援先への価値提供と参加者の成長という2つの側面において、より深い成果を追求していく必要があります。
パナソニック NPO/NGOサポートプロボノプログラムは、12年に渡る継続的な取り組みを通じて、プロボノの発展可能性を示す重要な示唆を提供しています。累計400名を超える参加実績のもと、同プログラムは震災復興支援、環境保全、子どもの貧困対策など、多様な社会課題に取り組むNPO/NGOの組織基盤強化に貢献してきました。
特に、支援先との継続的な関係構築により、一時的な支援を超えた本質的な課題解決が可能となっています。このような長期的なパートナーシップの構築は、より深い社会的インパクトを生み出す可能性を示しています。

 

組織変革への活用

 

プロボノ活動は、組織の変革を促進する触媒としての役割も期待されます。部門や階層を超えた協働の経験は、組織内のサイロ化を防ぎ、より柔軟でオープンな組織文化の醸成につながります。また、社会課題への直接的な関与は、組織の存在意義や社会的価値を再考する機会ともなります。
このような組織変革の視点から、プロボノ活動の戦略的な活用を検討することも有効です。例えば、新規事業の開発や組織改革のプロジェクトにプロボノの経験者を積極的に登用するなど、越境体験で培われた視点や能力を組織の革新に活かすことができます。

 

将来への展望

 

VUCA時代を迎え、プロボノ活動の可能性はさらに広がっています。パナソニックの事例は、その可能性を複数の側面で示しています。
社会的インパクトの側面では、支援先との継続的な関係構築により、一時的な支援を超えた本質的な課題解決が可能となっています。さらに、取り組む社会課題の幅を広げながら、より深い社会的インパクトを生み出しています。
人材育成の観点では、不確実な環境下での意思決定力や多様な価値観への理解力といった、現代のビジネスリーダーに求められる能力を育む機会となっていることが確認されています。プロボノ経験が、VUCA時代に求められる人材の育成に効果的であることが示されています。
プログラムの質的向上の面では、支援成果や参加者の成長を多面的に捉える評価手法の開発や、データに基づく改善サイクルの確立など、より精緻な運営モデルの構築が進められています。

 

プロボノ活動は、このように組織と社会の持続的な発展に貢献する重要な要素となる可能性を秘めています。その実現には、プロボノ支援の専門機関との継続的な連携も有効な選択肢となるでしょう。
パナソニックの12年に渡る実践が示すように、プロボノ活動の価値は、継続的な取り組みを通じてより深く、より広く展開していく可能性を持っています。その実現には、前章で見てきた実務的な基盤づくりと、本章で見てきた長期的な価値向上への視点の両方が重要となります。

 

プロボノという新しい越境体験の形を通じて、企業と社会がともに成長していく――そんな未来に向けた第一歩を、この導入ステップガイドが後押しできれば幸いです。

 


 

サービスグラントでは、皆様の企業に最適なプロボノプログラムの設計から運営までトータルでサポートするとともに、導入企業同士の情報交換の機会も提供しています。
また、プロボノ導入に関する疑問点については、FAQで詳しく解説していますので、ご活用ください。

 

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