プロボノを通じたスキルの“染み出し”でキャリアアップを実現
古川 園子さん(スタートアップ企業勤務)
参加プロジェクト/プロボノでの役割:
鞍居地区ふるさと村づくり協議会/テクニカルライター(2019年)、日本コンチネンス協会/コピーライター(2020年)、ラ・レーチェ・リーグ日本/コピーライター(2021年)
副業よりも気軽に、自分のスキルを試してみたかった
―現在のお仕事、ご経歴をお教えください
新卒で新聞社に入社し、記者職で取材・執筆の仕事をしていました。約10年勤めた後、スタートアップ企業に転職し、現在はそこでスタートアップ企業を支援するクラウドファンディングの募集ページの編集をしています。起業家に会社の特徴や目指している姿をヒアリングし、執筆・発信しています。
―プロボノに参加したきっかけを教えてください
前職で副業解禁論が出たときに、自分のスキルを仕事以外で試してみたいと思ったことがきっかけです。はじめは副業を探していましたが、いきなり副業を始めるのはハードルが高く感じたので、対象をボランティアに変えて調べている中でプロボノを知りました。
サービスグラントの説明会で、代表の嵯峨さんが「参加してくださるだけで素晴らしいことだ」とおっしゃっており、特別な専門的なスキルがどれくらいあるかよりも、気持ちを理解してくださるように感じたので、これなら参加して楽しそうと思い、参加しました。
仕事での経験・スキルを活かしながら新たなアウトプットに挑戦
―参加されたプロジェクトについて教えてください。
初めての参加は、 鞍居地区ふるさと村づくり協議会 さんの地元の名産品の販売に関わる顧客管理フローを整理するプロジェクトです。顧客管理のシステムフローをシステム設計担当のメンバーが作り、私はテクニカルライターとして、協議会のみなさんが誰でも操作できるようなマニュアルを作成しました。普段から新聞記者として文章を書く仕事をしていましたが、システムをどのように説明するかという観点でエンジニアの方と話すのも新鮮でしたし、アウトプットとしても記事コンテンツではなく手順書を作るのははじめてだったので、私にとっては新しいチャレンジでした。一方で、村の協議会の人たちはシステムにあまり慣れていない方々だったので、普段の仕事で意識している「どんな人にもわかるような表現づくり」の目線は応用できたと感じています。
そのほかにも、コピーライターとして二件のプロジェクトに参加しました。
一つは、日本コンチネンス協会さんのサイトリニューアルのプロジェクトです(成果物HPはこちら)。日本コンチネンス協会さんは、排泄に悩みを持つ方のためのノウハウを提供する団体です。もともとのサイトが一般の方に親しみづらかったので、視認性や操作性を改善するとともに、協会の名前も難しいので、何をしている団体なのかがうまく伝わるように意識して制作しました。
そもそもコンチネンスに関してどう理解してもらうべきなのか、誰に届けたいのか。サイトリニューアルがゴールではありますが、専門家だけでなく一般の方も見るサイトだったので、団体自体がどのように見られるべきか、どのような人に伝わるべきかから設計しました。コピーライターとしては、大まかなサイトの構成が決まった段階で、コンチネンスの説明や代表メッセージの整理など、サイト内の重要なメッセージのライティングに取り組みました。
ラ・レーチェ・リーグ日本さんのプロジェクトも同様にサイトリニューアルのプロジェクトで、コピーライターとして参加しました(成果物HPはこちら)。ラ・レーチェ・リーグ日本さんは授乳等に関する情報の発信や、妊娠中・授乳中の方の支援をされている団体です。プロジェクトでは、一般のママさんに何を伝えたいか、団体がどのような存在でいたいかの整理から始まり、カスタマージャーニーマップの整理、導線の設計や、大量に蓄積された授乳ノウハウのコンテンツの再整理などに取り組みました。コピーライターとしては、団体紹介ページでのボディコピーやトップページのキャッチコピー、タグラインの考案などに主に取り組みました。
―コピーライティングはプロボノで初めて取り組んだのでしょうか。
そうです。コピーライティングは初めてだったので、コピーライティングの本を買って、キャッチコピーの作り方を勉強しながら取り組みました。ただ、伝えたいと思っている本音をヒアリングで引き出し、言語化することは、新聞社でのインタビュー取材とも似ている部分があったので、テクニカルライターの時よりは仕事のスキルと親和性がありました。
トップページの「赤ちゃんに寄り添う あなたに寄り添う」というキャッチコピーも作成しました。思いついたときは我ながら「これめっちゃいいな」と思いましたが、新聞社の仕事では使わないような言葉だったので、チームのみんなに提案するときは少し恥ずかしく、どきどきしました。チームメンバーは意見を言いやすい雰囲気だったこともあり、どういう意図でこの言葉を編み出したのか、提案の主旨も一緒に伝えて案を出したところ、「いいじゃん!」と受け入れてくれて、初めてのコピーライティングでしたが楽しい経験でした。
年次を超えたチームでの協働の面白さを発見!
―普段のお仕事とプロボノで異なることはありましたか?
コピーライターやテクニカルライターとしての新しい挑戦がありましたし、チームワークで働くこと自体が初めての経験でした。新聞社ではチームで働くことがあまりなく、自分が気になったことを一人で取材して記事を作成し、完成物を上司にチェックしてもらう進め方だったので、みんなで議論しながら一つのものを作り上げることは、私としては初めての経験でした。バックグラウンドが全然違う人たちと、年齢に関係なく意見交換ができたことも新鮮でした。ツールや考え方、知識などをみんなで持ち寄りながら取り組むのが楽しく、私自身としても、仕事では当たり前になっている編集に対する考え方やヒアリングのコツなどを言語化するいい機会になりましたし、チームで働くということについて改めて面白いなと思うようになりました。
―プロボノでの経験をきっかけに、転職もされたそうですね。
副業のためと思って取り組んだ活動が転職につながるとは思ってもいませんでした。プロボノに参加してみて、年次に関係なくチームでまとまって取り組む面白さに気づきました。
また、報道の立場では第三者的に文章を書くことが多かったのですが、純粋に誰かのために自分の編集力を生かすということ、その人のために、その組織のために残るような文章を書く、そのような形で社会貢献することの面白さに気づき、直接的に誰かの役に立つ仕事をしたいと思うようにもなりました。
サイトのリニューアルに関わるだけでも、マーケティングの考え方やデザインの考え方など自分のやれること、考えないといけないことがすごく増えた経験から、編集がメインであることは変えずとも、プロジェクトやアウトプットを変えることでスキルの染み出しを狙ったキャリアアップを図りたいと思い、現在の企業に転職しました。プロボノで、新しい環境に入ってチャレンジすることへの耐性ができたこと、気軽に一歩踏み出せるようになったことも大きいと思います。
キャリアアップにもつながったプロボノ経験
―現在の仕事にプロボノでの経験は活きていますか。
表現に伸びしろがあるスタートアップ企業に対して、その組織の考えや取り組み、それらをどのように伝えたいかをよそ者の立場から改めて言語化して提案する、という核となる部分は、コピーライターとして携わった二件のプロジェクトと似ています。
転職活動では、プロボノ活動で参加した三件のプロジェクトについても職務履歴書に記載しました。作成したコピーなどの成果物も新聞記事とあわせてポートフォリオに掲載し、編集に対する自分の考え方を伝えたところ、面接で、関心の幅が広いことに高評価をいただくこともありました。
―プロボノを経験していない人にメッセージをお願いします。
私は、社会貢献というよりは、副業への挑戦やキャリアの見直しのためにプロボノに参加してみました。社会課題に一生懸命取り組んでいらっしゃるNPOの方々の活動を間近で見れたり、その中に一緒に入っていける経験はとても貴重だと思います。そして同じようにプロボノを志向する仲間はやはり話が合うので、プロジェクトが終わってもまだ連絡を取り続けているメンバーもいます。気軽な仲間探しや、私のようなキャリアアップなど、自分のためにプロボノ活動をするというのもアリだと思うので、迷っている人がいれば、やってみてはいかがでしょうか。
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