プロボノワーカー、NPO、企業。
それぞれの立場からホンネを語る!
〜 プロボノフォーラムTOKYO 2013 分科会レポート 〜
プロボノワーカー、NPO、企業。
それぞれの立場からホンネを語る!
〜 プロボノフォーラムTOKYO 2013 分科会レポート 〜
2013年10月23日(水)に開催された「プロボノフォーラムTOKYO 2013」では、第1部のプレゼンテーションに続き、第2部では「プロボノワーカー」「NPO」「企業」の三つのテーマに分かれた分科会が開かれました。分科会では、プロボノに関するさまざまな疑問・質問が相次ぎ、それに対して、プレゼンテーションに立った登壇者などから生の声を聞くことができました。以下に各分科会で出された質問と、それに対する回答をご紹介します。
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フォーラムにゲスト出演したgreenz編集長・兼松佳宏さんとサービスグラント代表・嵯峨が、フォーラム終了後に、今回のイベントについて、そして、8年以上にわたるサービスグラントの活動などを振り返りながら対談を行いました。
>>プロボノは社会への”贈り物”。サービスグラント嵯峨生馬さんと話す「日本におけるプロボノ、この8年の進化」<<
分科会1/プロボノワーカーのホンネに迫る!
【会場からの質問】
プロボノに参加しようと思ったのはなぜですか?
【プロボノワーカーの答え】
“自分が普段の仕事で持っているスキルを手段として使えたので。そこが一番の魅力でもあると思います。”
“震災以降ボランティアに参加したいと思っていて、身近にあったので参加しました。”
“人が好きで、色々な人と話したいと思ったのがきっかけのひとつです。”
“ポジションがしっかり決まっているなど、サービスグラントの仕組みがしっかりしていると思ったので参加しました。”
“子どもが生まれて社会貢献をしたいと思っていたときに、サービスグラントの記事を見ました。スキルを活かしつつも、色々な業界で仕事をもつ人たちと交流しながらチームでできる、というのが魅力でした。”
“社会を変えよう、NPOを支援したいというよりも、当初は他流試合をしたいと思ったからです。社内で何となく仕事ができてしまっている、社内でぬるま湯につかっているように感じて、社会で自分の力をためしたいと思いました。”
“自分が普段やっていることで、人の役に立てるというのが良かったです。”
【会場からの質問】
プロボノプロジェクトのマネジメント部分に関してですが、活動を進めるうえで、一番の危機は何でしたか?
【プロボノワーカーの答え】
“私はいま四つ目のプロボノプロジェクトに携わっていて、最初のプロジェクトではPMでした。ウェブサイトを作成するプロジェクトだったのですが、そこでの最初の危機は、マーケティングフェーズで、一人(マーケッター)が音信不通になったことです。ただ、ほかのメンバーは意欲的で、離脱者の分もみんなでカバーしてやっていこうという雰囲気でした。(通常はヒアリングを直接には担当しないポジションである)コーダーまでヒアリングに参加し、最終的になんとか提案をすることができました。他にも家庭の事情で離脱する人がいたりなど、さまざまな局面がありましたが、基本的には分担で対応できたと思っています。”
“「呑むこと」です(笑)。やっぱりコミュニケーションが大事だと思います。メールでのやり取りがうまくいかず、メンバーの1人が抜けたこともあります。Face to faceでのコミュニケーションをどう図るか、にかかっていますね。”
【会場からの質問】
自分でどういうスキルで貢献できるか、明確な状態で登録しましたか?
【事務局の答え】
“最初から自信を持ってエントリーした、という方は少数です。”
【プロボノワーカーの答え】
“登録時は不安だらけでしたね。自分の力が、どれくらい課題解決に役立つのか不安でした。実際にプロジェクトにアサインされたときに、本当に大丈夫かAD(アカウントディレクター)に相談して、「大丈夫です」と言ってもらって安心し、参加しました。他のメンバーには前向きな人がたくさんいるので、一歩踏み出してしまえば、前に進めるという感じがしました。”
“私も、まったく自信はなかったです。ADだけはやりたくないと思っていました。でもやれることをやればいい、というスタンスで参加しました。”
“私は、当初ウェブデザインや紙媒体のディレクションというスキルで登録しました。でも、年齢を重ねていくうちに企画書などを書くことになるし、マーケッターのポジションの方でも登録していたんです。参加したプロジェクトは「事業計画立案」だったので、普段とはちがう分野で戸惑いもありました。でも自分も30代後半になり、会社的にも色々なことを経験しておいた方がよいかと思い、事業計画立案のプロジェクトでマーケッターとして参加させてもらっています。
プロジェクトはまだ途中段階ですが、ヒアリングが大切だと感じています。普段のコミュニケーション能力や課題解決能力など、ビジネスの基本がやはり大切だとわかりました。自分の仕事以外の範囲を広げ、限界を広げるという意味では、私はいわゆる営業はできないし、普段は制作で地味な仕事ですが、今回はマーケッターとして役に立てていると実感できています。”
【会場からの質問】
週5時間以内・6ヵ月というプロボノの時間的な負担の感覚はどうですか?
【プロボノワーカーの答え】
“仕事との両立は可能だと思います。”
“正直にいいます。いまプロジェクトで担当している内容は普段の仕事と同じですが、NPOさんの「思い」がとても大きいこともあり、土日の時間を意外と使っていますね…。でも、無事にアウトプットができたら達成感に変わるのではと思っています。”
“時間的な負担には、担当する業務によって波がありますよね。私は担当していたのが後半の制作部分だったので、最後の方は大変でしたが…。5時間という数がひとり歩きしない方がいいですね。”
【会場からの質問】
プロボノをやってみて困ったことや、改善点はありますか?
【プロボノワーカーの答え】
“最初のスコープ設定(プロジェクトの成果物の種類や範囲を決めること)を広げ過ぎると大変になります。仕事ではないといっても、NPO側も本気で取り組んでいて、こっちも本気でやらなくてはいけないので。いい活動をするために、スコープを間違わないようにすることが大事です。”
“支援先団体の場所が遠かったので、コミュニケーションをとるのが大変でした。”
“NPOさんの受け入れ態勢も色々なので、共通言語をそろえるのが大変でした。”
“チームメンバーには恵まれていたと思いますが、チームビルディングという面でいうと、仕事のちょっとした進め方が会社や人によって違ってくるので、資料ひとつ作るにしても感覚や工程が違って難しいところもありました。
でもそれも、結局はコミュニケーションをどうとるかです。お互いに意見をぶつけたことが、いま振り返ると良かったなと思います。喧々諤々やりながら、最後にはいいチームができているというのが、プロボノのチーム、というものではないでしょうか。”
【会場からの質問】
プロボノに参加する適正年齢はありますか?
【事務局の答え】
“特に適正年齢というのはありませんが、アカウントディレクターを担当していただく方には、事前に対面やお電話でインタビューして、経験やスキル等を把握するようにしています。”
【プロボノワーカーの答え】
“適正年齢というよりは、その人の性格・キャラクターと能力だと思います。個人的には、最後のところでしっかりとまとめることのできる人がいいと思います。”
【会場からの質問】
NPOとの活動は初めてのことばかりだと思いますが、それに対してどういう不安がありましたか?
【プロボノワーカーの答え】
“私は、参加したプロジェクトのNPOが取り組んでいる分野にもともと興味はあったのですが、メンバーのなかには関心がない人もいて、「もっと勉強してよ」といったこともあります。そのプログラムに参加するなかで、感じることが大切ですね。それは自分の成長を助けることになるし、逆にいえばラッキーだと思います。そういう意味では恐れず「体験する機会ができる」と思って思い切りやればいいのではないでしょうか。”
“感覚が違っていても、対話を通じて色々やれることがあります。違いを楽しみながらやれるのも、プロボノに参加するメリットだと思います。”
【会場からの質問】
プロボノについて詳しく聞いたのは、今日が初めてです。半年ぐらいのスケジュールで中間提案や最終提案という決められた工程があるそうですが、自分たちのペースで進んでいけるものでしょうか?
【プロボノワーカーの答え】
“スケジュールは大まかにありましたが、仕事も忙しいしミーティングなどみんなで会う時間を合わせるのが難しく、くずれることもあります。1回のセッションで決まればいいですが、ブレストのように考えがかえって広がることもあり、最後どうまとめるか悩みました。
時間が限られているので、ある程度型を決めてそこに落とし込むということができるといいと思います。仕事だと残業をつけますが、プロボノはどこかで見切りをつけることが必要だと感じました。逆に普段の仕事にも、そこはフィードバックとして活かしたいです。”
“最終日の翌週から旅行の予定があったので、スケジュールを死守する意識が強かったです(笑)。”
分科会2/NPOにはどんな“覚悟”が必要ですか?
【会場からの質問】
プロボノのプロジェクトを実際にやってみて、大切だと思ったことは何ですか?
【NPOの答え】
“時間がかかってもいいので、やりきる、終わらせることです。なぜならこちらは、絶対に必要なものをお願いしているので。結果を出す、約束を守ることが大切だと思います。”
“プロボノのメンバーが集まることができるのは土日か、平日の夜7時以降が中心になります。相手はボランティアだから、お互いに助け合うという意識でやっています。とくに外部ヒアリングは関係者との日程調整が難しく、大変なこともあります。”
【会場からの質問】
実際のNPOの活動にプロボノメンバーが参加することで何か変化はありますか?
【NPOの答え】
“はい。活動の現場に参加することで、意識が変わる人は多いですね。”
“現場に来て見学してくれることで、プロボノの皆さんも勉強されているんだなぁと、味方を得た感覚を持てました。”
“私たちの団体も、プロボノのようなボランティアで成り立っている団体です。意識が変わる方もいれば、変わらない方もいて、合わないこともあります。でも、私たちの活動に対して少しでも興味がある、というスクリーニングを超えてきてくるのであれば、そこからどうしたら関心を深めてもらえるのか、そこに対してこちらも努力するべきだと思っています。”
【会場からの質問】
プロボノワーカーの考えが強すぎるということはありませんでしたか?
【NPOの答え】
“私たちの場合は、本当に企業に対して売れるものを考えてもらいました。中間提案までは斜めに考えられていたような部分がありましたが、その後、活動の中身をよく知ってもらってからは、アプローチや資料の作り方で工夫していただきました。”
【会場からの質問】
NPOの中で、ゴールがぶれたことはありませんでしたか?
【NPOの答え】
“NPO側としてはやむにやまれずお願いしているので、求めているゴールははっきりしていました。”
“サービスグラントのプロジェクトは、最初にNPO側から応募することで始まります。そこから審査を経てサービスグラントに選んでもらって、ボランティアのメンバーの皆さんとマッチングをしてもらいます。だからNPO自身も、確固たる思いがないとできない、ということはわかっておくべきだと思います。”
【会場からの質問】
プロボノワーカーに求めているものは何ですか?
【NPOの答え】
“プロジェクトを進める中で、活動内容をやっとわかってもらえたという部分と、まだわかってもらえていなかったという部分の両方があります。そこはお互いの握りが必要だと思います。”
“NPOは、その活動分野のことだったら任せて!という人は多いのですが、マネジメント能力がなかったり戦略を考えるノウハウが何もなかったりするので、そこは企業センスを持ったプロボノの皆さんに関わってもらいたいと思うところです。”
分科会3/プロボノは、企業経営に役立ちますか?
【会場からの質問】
企業内でプロボノを行う場合、プロボノの活動は会社の業務として認められているのですか?
【企業担当者の答え】
“あくまでボランティア活動なので、業務時間には含まれません。”
【会場からの質問】
会社がプロボノの活動をホームページ等で積極的に発信することは、参加することに不安感を持っている人にとって安心感になるのでは?
【企業担当者の答え】
“そうですね。実際にそれを見て、前のプロジェクト参加者と同じ部署の人が、次のプロボノプロジェクトにメンバーで入ってきてくれることがあります。”
【会場からの質問】
同じ企業内のメンバーで行われるプロボノプロジェクトと、そうでない(色々な人が参加する)プロジェクトとでは、プロボノの定義は違うのではないですか?
【企業担当者の答え】
“いま行われているプロジェクトで、プロボノではない、というものはありません。同じ企業内かどうかにかかわらず、基本的には皆さん無償で活動しているものなので同じボランティア活動です。サービスグラントでは「企業人、社会人として培ったスキルを提供する」というのがプロボノと定義しています。”
【会場からの質問】
企業内プロボノでは、メンバーはどのように決めていますか?
【企業担当者の答え】
“サービスグラントの仕組みを利用しています。”
【事務局の答え】
“サービスグラントでは、ボランティア登録者について詳細なプロフィールを作成しています。実際のプロジェクト後には、アカウントディレクターからチームメンバーの特徴や働き方についてのフィードバックを受け、さらにそれを次のプロジェクトのチーム編成に活かしています。企業用にも同じように、「○○会社さん用」というように、その企業専用のデータベースを作成します。”
【会場からの質問】
プロボノに参加したいけれど自分のスキルが何かわからない、という人はどうしたらよいですか?
【事務局の答え】
“「スキル」の定義は広いです。わからない、という方には説明会などでサービスグラントメンバーと話をするなかで、相談しながらスキル定義を行っていくこともできます。”
【企業担当者の答え】
“そうです。たとえば、普段の業務で外部とのインタビュー内容をコメントとしてまとめることをしている、というようなことだけでも十分にスキルだといえます。”
【会場からの質問】
プロボノを経験したことで刺激を受け、会社をやめて新しい活動をする人もいるのではないでしょうか?
【事務局の答え】
“確かに、そういうリスクはあるかもしれないですね。でも、そういう人をどう企業につなぎとめて戦力にしていくかは、企業の経営サイドの取り組みになると思います。”
【企業担当者の答え】
“世の中でいま動いているおもしろい活動に参加しよう、という社員が会社にいる、そういう企業風土をつくっていくことは企業として大事なことだと思います。プロボノに参加した人がプロボノにより視野を広げ、それが即仕事に役立たなくても、将来的な人間力アップは企業にとってもプラスになります。参加した人が自分の職場でその経験の話をすることで、トップダウンで何かが始まるのではなく、社員による自然な活動として広がっていくのがいいですね。”
【事務局の答え】
“プロジェクトが終わって打ち上げの際に、チームメンバー同士が「○○さんの□□□の部分がすごく良かったよね」とほめ合う、という場面がありました。
プロボノは、短期間に相手のいい部分を引き出せるというような効果があるようです。
仕事から得られる報酬には、お金だけでないリワードがあると思います。そうした「トータルリワード」の中の非金銭的報酬というものが間違いなく得られて、気持ちよさや昂揚感につながります。また、上司・部下の命令系統がないなど、普段の業務とはちがうプロボノならではの経験も魅力ではないかと思います。”
▼ご案内
フォーラムにゲスト出演したgreenz編集長・兼松佳宏さんとサービスグラント代表・嵯峨が、フォーラム終了後に、今回のイベントについて、そして、8年以上にわたるサービスグラントの活動などを振り返りながら対談を行いました。
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