自分の許容性や柔軟性を広げてくれる越境体験
竹内登桃子さん(コンサルタント)
参加プロジェクト:ワーカーズ・コレクティブちろりん村 印刷物
本インタビューでは、同企業の社員によるチームでプロボノプロジェクトに取り組む企業プロボノの体験を語っていただきました。
参加の動機は、社内の新しい人と出会い、スキルの幅を広げる機会
ERP(基幹システム)を中心とした基幹業務の企業向けビジネスソフトウェアを提供している会社の中で、デザイン思考を用いながらお客様向けのワークショップを開催するなど、お客様企業の新たなデジタル戦略を考え提案する業務を担当しています。プロボノプロジェクトへの参加は、社内のCSR活動の一環としてプロボノをやって見ませんか?という社内メールを見たことがきっかけでした。2021年の参加時はコロナ禍で、オンラインで全ての業務を遂行していて、社内での横のつながりや新しい出会いが減っていた時期でした。個人的にもう少しだけ自分のスキルを広げたいと思いつつ、転職をしたいわけでもなく副業という感じでもないなと考えていました。そのような折に「広報パンフレットを作成するプロボノプロジェクト」という明確なアウトプットが求められているのを拝見して、これであれば自分が普段やっていることとは少し違う経験もできるのでは、と興味を持って参加しました。社会貢献をしたい気持ちもありましたが、崇高なモチベーションがあったというよりは、気軽に社内の新しい人と出会い、やったことのないことを経験することでスキルの幅を広げる機会として参加しました。
子育て支援を担う団体の広報ツールを作成
私がプロボノで支援したちろりん村は、訪問型の子育て支援をメインにされている団体です。未就学児のお子さんがおられるか、妊娠中のお母さんのご家庭にボランティアが訪問して、子育てや産後うつや、ひとりでどうしていいかわからないお母さんを中心に声を聞いたり子育てのヒントを伝えたりされています。離乳食づくりのプロジェクトを開催したり、ボランティアの訪問を通じてお母さんの声を聞く活動をされています。
主にお二人だけで活動されており、継続的な事業資金、寄付金集めが必要なのですがそこまで手が回らないという課題を抱えていました。今回のプロボノの活動内容は、この団体とその活動内容を広く知ってもらうための広報ツールを作成するというものでした。
ちろりん村プロジェクト、打ち合わせの様子。
プロジェクト後に感じた新しい感覚
プロボノの活動を通じてまず驚いたことは、自分が業務で普段仕事してやっていること、当たり前にやっていることが意外にも役に立つのだということです。団体の女性お二人はものすごく熱心にパッションを持って活動をされていましたが、自分が通常業務で行っている効率性を目指した仕事のやり方やコミュニケーションのとり方とは随分違っていることに最初はすごく驚きました。普段私たちが当たり前にしている資料を作る、分かりやすくなるように定義し直すことが、とても役に立つのだ、ということが発見でした。自分の持っているスキルが社会に役に立つということが、そもそもの発見で、自分の新たな引き出しを増やしてもらった感覚があってとてもうれしかったです。自分にとって社会貢献は遠いというか崇高なもので自分とは関係ないものとどこかで思っていたのが、当たり前に隣にあるんだなと。説明の仕方、資料を作ることだけでも役に立てることでハードルがひとつ下がったというか、仕事をする、転職するはハードルが高いと思いがちですが、プロボノ活動は気軽にやっていいんだなという感覚を持てたのは新しい感覚でした。
当初は、普段お客様向けにやっているワークショップをプロボノで生かせるとは思っていなかったですし、それを狙って参加したわけでもありませんでした。プロボノの活動の過程で、ちろりん村がやりたいこと、目指したいことがわかりづらいとまず感じました。それで、わかりやすく効果的な広報ツールを作成するために、自分が業務で行っているワークショップの手法を活用してみたところ、とてもわかりやすかったと言っていただきました。業務ではないところで自分のスキルがこんなふうに使えるのだ、と自分では気づかない活用の機会を見出しました。広報ツールを作成するのは、デザイナーがやるものだと思っていたのですが、意外と自分のスキルが寄与するのだと、自分のスキルの活用機会を広げられる場所でもあったかなと思います。
自分が見えていない世界を知る、目からうろこの越境体験
企業に勤務していると、企業の生産性と利益を最大化することが重要で、自分もその実現を支援するという視点で業務をしていました。しかし、児童虐待や産後うつを無くすという社会課題の解決は、生産性や利益だけを追求するわけにはいかない、また活動の効果を定量的に計測するのが難しい領域です。それを行政と協力して、草の根活動を通じて課題の解決に尽力している方々の活動はまた別の視点からの考え方が必要だと実感しました。団体のメンバーの方々はパッションとビジョンが明確に頭の中にあって本当に情熱的でした。そのような活動に精進されている方々より大きな影響を受けました。利益を出すだけが正ではないし、自分が見えていない世界がこんなにあるんだということを間近で感じること、確かにそうだよね、という目からうろこの体験ができました。自分の許容性や柔軟性を広げてもらったと思います。こうあるべき、成果を出すために効率的にコミュニケーションをとって、的確に仕事をするべきということだけが正ではないことが、私にとっての越境体験でした。
※この記事は、2023年1月31日にサービスグラント主催のオンラインイベントの内容をもとに編集しています。
▼プロボノでのプロジェクト参加へご関心をお持ちになった方は、こちらのページも併せてご覧ください。
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