下村 修さん・津田 詩織さん [マーケッター]

サービスグラントにご自身のスキルを登録されているプロボノワーカーの職種は実に多種多様です。その中から、同じ業界で働くプロボノワーカーが語るプロボノとは?
第一回は、「人材開発」「人材育成」が共通のキーワードである下村さん、津田さんに人事の観点から見たプロボノについて語っていただきました。現在の人材育成のトレンドなどもあわせて興味深い内容となりました。

これまでの自分の経験をアウトプットする場

津田:大学卒業後、階層別研修や営業研修を提供している人事系の会社に入社しまして営業や講師などを担当しています。職場の上司の勧めで、営業資料を作ることであれば毎日の仕事の延長線なのでお手伝いできるかなと思ったのがきっかけで登録しました。

下村:僕は社会保険に関わる個人事務所で仕事をした後、企業の人事に転職しました。サービスグラントはウェブサイトでたまたま行き当たって知ったのですが、個人としてもっと生活の幅を広げたい、新しいことを知りたいという思いがあって自分でもNPOを探していたんだけど希望するところにはうまく入れなかったりして。NPO組織の中は常に動いているのでそこにボランティアでぽんっと入っていくのはなかなか難しいなという印象がありました。その点、サービスグラントの場合には予め決められた同じ時期から全員足並みをそろえて始められるからとても入りやすかったですね。

津田:登録当時は仕事をしながら講座に行ったり、勉強したりインプットは多かったのでそろそろ吸収したものをアウトプットもしたいと思っていたところでした。まわりに社会起業をテーマに活動をしている知り合いもいて私も何かやりたいなと。その一つとしてサービスグラントを活用したという感じです。

下村:プロジェクトへのお誘いがあった時、新しいことができる、いろいろな知り合いも作れるという思いもあったし、一方でどんな人が集まって来るのか分からない、津田さんもアウトプットをしたかったと仰っていたけれど、これまでの自分の仕事がどういう風に役に立つのかという期待もありました。

僕が担当することになったのはサポートハウスじょむさんという女性の労働問題とカウンセリングに強い団体でした。具体的には、「燃え尽きない働き方」とか、「ストレス発散や気分転換を行う方法」といったセミナーを開催しています。チームの中で、僕はヒアリングを担当したり、ウェブを作るためのアイディア出しを担当しました。メンバーには実際にウェブディレクターをされている方や、自分でビジネスをされている方、献身的で木目細かいお仕事をされる方に恵まれました。

津田:私はせきずい基金という脊髄損傷の患者さんに対して情報提供や、再生医療などへの研究費の助成を行う患者団体をマーケッターとしてお手伝いしました。基金という団体の性格上、最終的なアウトプットはお金を集めるための団体の紹介資料を作成することで、4人チームのうち、お一人は広告代理店、製薬会社のマーケティング担当されている女性の方と財団関係で資金を渡す側の方というメンバーでした。

津田:チーム内はどうでしたか?

下村:コミュニケーションは凄くよかったです。代表、理事、職員の方や、講座に参加された方、大学教授で女性問題を教えているとか実際にカウンセリングを受けている方などに対してみんなでヒアリングを実施し、情報共有を意識的に行っていました。全く環境やバックグラウンドの違う方々で一緒にプロジェクトを進めるといういい異文化理解ができたと思います。せきずい基金はどうでしたか?

津田:恙(つつが)なく納品は出来たのですが、一言で紹介資料といってもそれを使う側の立場で考えて、アタック先はどこなのか、シナリオをどう作って先方の上役のかたがたをどう説得するのかのシミュレーションなど、どこまで踏み込んでお手伝いするべきかが当初議論に上りました。

下村:なるほど。議論という意味では、今まで仕事のフィールドが違う人同士でも意見の出しあえるチームビルディングがとても重要ですよね。

津田:確かにチームの一体感をいかに最初のうちに作るのかということも大事ですし、プロボノの経験を振り返ると社会的な問題をいろいろな角度から見ることができたのは面白い経験だったなと思います。私の周りに車椅子で生活している方はいなかったのですが、お会いした皆さんは事故などで一日でガラッと生活が変わる苦労をされている。。。
インタビューを通じて、ご本人のみならず支援をされているお医者さんとか患者の家族の方や、同じような支援を行っているNPOそれぞれの方の苦労とか期待など、今まで扱ったことがない問題を多面的に見えたことで必要性や価値を感じられたと思います。
提案の後に、「うちの問題は全部この中にあるね。課題の棚卸をするにはちょうどよかったね」と仰っていただいて、その時は、あぁ、やっぱり良かったね、必要だったのだと嬉しかったです。

人事の立場からみえるプロボノ

下村:人事の立場で教育や人材開発に携わっている僕からサービスグラントを見て、パフォーマンスの高い人達が集まってものを作る凄い組織というか、新しい働き方だなと思いました。

例えば、採用という点では興味持つ人がどんどん来てくれるし、教育という点では、会社がマイルストーンを設定したり職域ごとの教育をしなくても自分で自主的に勉強して参加を望む人達が集まっている。

あとは、時間や場所の使い方ですよね。今までの会社は同じ時間、同じ場所で、労働基準法と照らし合わせて労務管理をするけれど、サービスグラントへの関わり方はそれとは異なりますよね。残る人事の仕事として重要なところは要員管理で、人の配置をどのように行うかがすごく重要になるんだろうなと思いました。ポジションを担う人が自主的に進めていくというやり方があって、またそれがきちんと動くのだということが分かっただけでも為になりました。

津田:自主的に動ける人が多いというのはいいポイントなのでしょうね。一人ひとりの能力は高く、かつ自立していて、いい意味で変わっていこうとする20代から40代までのいろいろな年代の方がいるコミュニティですよね。
人事研修の中にはいろいろな部署の人を横断的にチームにして何かをするという内容はあるけれど、違う会社の人とのプロジェクトという点が非常に面白いと思うんですよね。
そこは苦労でもあり、発見でもあると思うんですけど、同じ会社だと暗黙知というか言わなくても分かるところがあるけど、それだと幅が広がらない気もする。他社の方と協働することによってこんなツールがあるんだ、こんな考え方があるんだという視野が広がるというのは確実にありますよね。

下村:確かに会社で人を育てると言うと、暗黙知をできるだけ分かるようにするか、会社のカラーに沿った知識を得て、会社の中で成長していってもらいたいというのがありますよね。僕は異文化をはじめとして違うものにどんどんぶつかってもらって、視野を広げたり選択肢がこんなにあるんだと気付いたり、どんどん負荷をかけていくことはビジネスパーソンとして成長になると思います。サービスグラントの他社の方との協働プロジェクトで十分な貢献ができる人はどこにいっても柔軟な対応ができるのではないかという印象です。

津田:人を育てる、開発するという人事的な取り組みについてはいろいろな人がいろいろな定説を持っていますが、一つ、「ワークプレースラーニング」というキーワードが最近いわれています。働く現場における学習という意味なのですが、OFF-JTを、研修のその場だけでなくてそれをどうその後に実践させていくのか?!ということですね。

企業の人事は、今や研修をどうやるかではなくて、どう使わせるかについて注力されています。加えて、次世代リーダーの育成に向けて、選抜型研修の後に現場で何かプロジェクトをやらせたいとか、今関わっていることよりも少し上、先の視点を身に着けさせたいと言うニーズは確実に高まっているわけです。そこにプロボノというのは実践の場としてはいい機会になるんじゃないかと。

下村:実践の場、という意味ではまさしく!ですね。実際に経験をしてみて、サービスグラントの活動というのはこれまでの仕事の経験をそのままアウトプットすることだと実感しました。

津田:特に今のビジネスパーソンが置かれている環境という観点でいうと、グローバル化でいろいろな企業の連携が非常に増えていていろいろな観点の人と仕事をしていくダイバーシティーへの適応能力が必要とされています。人事の方も異業種交流させたい、他流試合させたいという要望を持っていて、そこにもプロボノは応えられる動きだと思います。

ASTDというアメリカの人材育成に関する学会のテーマには、「M(モバイル)ラーニング」でどう学習させるか、そして、「エンゲージメント(心からの関与)」というキーワードなどが挙げられていました。顧客満足度を高めるためには、まずは会社と社員の関係の強化を行わなければならないという指摘です。
また、学会では「さぁ、才能に目覚めよう」という本を書いたマーカス・バッキンガム氏が基調講演をされたのですが、イノベーションの原動力は人そのものであり、弱みの克服よりも強みの強化を目指そう、そして、それぞれの強みを活かして、イノベーションを起こしていこうという内容でした。強みを生かすという視点ではプロボノにも通じるところがあると思います。

下村:確かに、社員にとって周りの人の出入りというのは最もストレスに感じるところでもあるし、会社と社員の関係性を高めるエンゲージメントは非常に大きなポイントなのは間違いないです。

ただ企業の中で社員を育てる、個人の価値を上げる教育的な投資は、採用や売上といった短期的に追い求めるものに比べると遅効性のものといわれていて、さらに経済の下がり目に最もカットされるのは、教育費、広告費、交際費の3Kともいわれています。そんな情勢の中にあって、莫大なお金をかけずに自分を磨く、社員を育てられる挑戦という面では今後さらに広がってほしいと思っています。

登録を検討している人へのメッセージ

下村:プロボノは、今までの働き方が大きく変わり始めているこの過渡期に、新しい働き方を経験できる魅力ある場所だと思います。サポート体制は、チームメンバー、主催者側もしっかり整えてくれるはずなので、考え過ぎず登録・参加して欲しいなと思います。

津田:社会的な視野を広げるきっかけというか、仕事だけではなく世の中にはこういうNPOがあってこういう風に働いていて、問題意識をもっている人がいる知るきっかけとしては非常にいいのではないかと思います。その中で自分の力を試しながら自分の力で貢献していくことがリアルに分かるのが非常にいい。
短期間にいろいろな人とリアルな課題解決に取り組んでアウトプットを出すというのが自分を見直す、ネットワークづくりとかダイバーシティーを感じるところにも繋がっているなと思います。

今後プロボノの未来をイメージしたとき、弁護士業界として年に何時間はプロボノを行うことが推奨されているように、年間数%の就業時間はプロボノに関わって本業以外の視点も身につけたり、と人材教育の機会として定着していくといいですね。

下村:キーワードは「なんとかなる」。多人数でやっているメリットということだと思うのですが、頼ることも頼られることも覚えながら進めていければいいのだと思います。

津田:仕事は大丈夫だろうか、他の人はどんな人だろうか、時間はちゃんと作れるだろうかということで登録を踏み留まらせると思うのですが、共通する動機を持っている方ばかりなので、プロボノが初めての方でもやりやすい環境だと思います。皆様も是非、一度はご参加を!

参加プロジェクト

NPO法人サポートハウスじょむ・チーム 
下村 修さん
(ウェブサイト・サービスグラント/2010.07-2011.03)
役割:マーケッター

NPO法人せきずい基金・チーム 
津田 詩織さん
(営業資料サービスグラント/2010.07-2011.02)
役割:マーケッター

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その他のプロボノワーカーの声

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